ひとなつの

2014

『ひとなつの』は2014年にWIN用として、ハイクオソフトから発売されました。

何だか懐かしい雰囲気の作品であり、バスの中の描写が良かったですね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
ギリギリの点数で編入試験に合格し故郷の鎌鞍学園にて学園生活最後の夏を始めた須藤衛。
転校初日から、幼馴染である有栖川巴梨(通称ありす)や桃谷賢(通称モモ)たちはおろか初対面の人々にまで幅広くその性格を利用され様々な面倒事を背負うことに。
極め付けは、夜の体育祭実行委員就任。
母親を楽させるための大事な受験を控えた3年の夏なのに昔からの顔なじみでもあった小野寺先生の綺麗な困り顔に負け、難役をあっさりと引き受けてしまった。
幼馴染からの非難ごうごうには「俺に任せな」と、崇拝しているHEROの決め台詞真似事。
とはいえ、自らに向けた親指は大きく震えている。
過去、HEROが実現し、街中に苦い思い出を残した「夜の体育祭」
「体育祭は昼です。夜の体育祭は、たった1度きり。黒歴史との事です」
放送部の看板娘で同じ実行委員の志水亜子ですら、敵か味方かあやふやだ。
そんな中、幼なじみの妹である桃谷千春だけが、積極的な賛同をしてくれる。
幼い頃は泣いてばかりいた彼女を思うと、その頼もしさにただただ頭が下がる。
目線だけは高くなり、景色も、周りも、季節が巡る毎に変化していった。
ただ、あの夏に見た光景だけは、きっと変わらない。
この街には、HEROがいる。

<感想>

ハイクオソフト、5年ぶりの新作です。
長いよ、待たされたよ。
『さくらさくら』はストーリーは並なのに、総合では傑作扱いしたノベルゲーという、自分の中でもかなりレアケースな作品でした。
本作は、先に結論を書いてしまうと、従来のハイクオソフトの良い点も悪い点も受け継ぎつつ、『さくらさくら』より地味にこぢんまりとなった感じでして。
だから過去作が合わなかった人は本作も合わないだろうし、過去作が好きな人でも『さくらさくら』程では~となってしまいがちなので、どうしても印象の薄い作品になってしまうのでしょうね。

さて、具体的中身に関してですが、ハイクオソフトの弱い部分として、ストーリーそのものは今回も特に良くはありません。
今作も中途半端な感じで、あまり語ることもないのかなと。
それでも過去作はテキストが良かったり、キャラの魅力による勢いで楽しめてしまったりするのですが、今作は全体的におとなしめなので、勢いで楽しめるってこともないわけでして。

もっとも、派手さや勢いがないってだけで、逆に落ち着いて楽しみたい人なら合うかもしれません。
特に本作は、舞台が10年以上前のような感じであり、秀逸なサウンドと相まって、どこか懐かしいような雰囲気を有していまして。
だからこの作品を10代や20代前半の若い人がプレイしても、おそらくあまり楽しめないのだろうなと思う一方で、オッサンが昔を懐かしみながらプレイする分には良いように思うわけでして。
仮に作品の一部だけが古臭いと、全体でもチグハグに感じてしまいがちです。
しかし、本作は全体がそういう風に作られていますので、古臭いというのは、むしろ一つの褒め言葉でもあり、これが一つの味として作られているということでもありますので、雰囲気ゲーとしては悪くないんですよね。

<グラフィック>

ハイクオソフトの強い点はグラフィック・演出です。
原画は、今回はちょっと癖がある感じですけどね。

立ち絵での目パチ口パクはもちろんのこと、2009年の『さくらさくら』の時点で一枚絵の目パチ口パクがあり、個人的には凄く好きだったんですね。
本作でも、その点は継承しており、立ち絵・一枚絵に目パチ口パクがあります。
本作は更にテキストウインドウに表示される顔にも目パチ・口パクがあり、立ち絵・一枚絵だけでは不十分だと感じている人がいたとしても、これなら文句はないでしょう。

ただ、ブランドの良かった点を継承しているのは嬉しいのですが、未だにワイド化していないこともあって、新作としての成長分を感じることはできなかったので、あまり大きなプラスポイントにはならないんですけどね。

むしろ本作で一番良かったのは、バスの中の描写でしょうか。
最初は少なかったバスの中ですが、ストーリーが進み人間関係が進展するに伴い、少しずつキャラが増えていきます。
こういう視覚的にも表現するのは、ストーリーとグラフィックの連動を感じられて好きですね。

それと、これはゲームデザインとも関連するのですが、通常のノベルゲーでは途中で選択肢が登場します。
本作でも選択肢が登場するのだけれど、バスの中ではどこの場所を選ぶのか、つまりヒロインの傍に立つのか、離れて座るのかという形での選択になり、これが主人公とヒロインとの関係性・距離感をも表現するわけです。
単に突然テキストによる選択肢が出てくるのではなく、主人公の行動に即して選択肢を作り上げ、それを視覚面で連動させるというわけで、些細なことなのだけれど、個人的には凄く好印象でした。

それにしても、本作の原画って、きみづか葵さんで、ゼロ年代前半は人気のあった原画家さんなんですよね。
その原画で、ハイクオの新作となれば、もっと注目されて良さそうなものですが、本作はどうしても地味な印象を受けます。
ユーザー層の変化により、人気の出る原画もかわったということですかね。
時代の流れには驚かされたりもしますが、ただ、やはり力のある原画家さんであることに間違いはないわけでして。
きちんとシーンを描けているCGが多く、一枚絵のクオリティは高いと思いますね。

<評価>

一見すると地味な作品ですし、発売当時の流行路線の作品でないことは間違いないでしょう。
だから、流行路線の作風や、萌えなんかを求める人には、まったく刺さらない可能性が高いです。

他方、上記のように昔を懐かしむ雰囲気ゲーとしては、とても良い感じなのかなと。
今回はサウンドも良いので、雰囲気に浸れるんですよね。
だったら古いゲームをやれば良いのではと思う人もいるかもだけど、懐かしい雰囲気を今の新しい技術で楽しめることが大事なわけですよ。
特に本作の場合、グラフィックや演出が非常に優れている作品だけに、昔の古いゲームをやるのとは違った良さがあるのです。
どう考えても売れ線の作品とは思わないけれど、オッサン向けとしては楽しめるし、細部にこだわりのみられる通好みな良質な作品だと思いますね。

結局のところ、ストーリー以外は高品質な作品であることから、総合では良作ってところでしょうか。
『さくらさくら』が良すぎたので、本作のプレイ当初は辛口にみてしまったのですが、本作は他の作品が手を抜きそうなところまで丁寧に作られており、通好みな作品だと思います。
フルプライスの恋愛ゲーでは何も得るものがないケースも増えている中で、本作のバスの描写はとても印象的でしたしね。
そうした得るものがあっただけでも、個人的にはプレイして良かった作品ですね。

ランク:B(良作)


ひとなつの
DVDソフトひとなつの

Last Updated on 2025-03-24 by katan

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