『クリスタルリナール 逢魔の迷宮』は1994年にPC98用として、D.O.(ディーオー)から発売されました。
D.O.初の3DタイプのRPGとして話題になりましたが、主人公の成長を正面から捉えた、D.O.にしては珍しく前向きな作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはRPGになります。
主人公の陽平と幼馴染でヒロインの真尋は、ごくごく普通の高校生です。
ところがある日、2人は異世界に飛ばされてしまいます。
これは、迷宮の主ゼトが、自分の力の源にするために真尋を召喚し、陽平はそれの巻き添えをくった形になります。
異世界から元の世界に戻るために、最初は2人で行動するのですが、途中で真尋を奪われてしまい、そこから真尋の救出が陽平の目的となります。
<感想>
そういうわけで、陽平は真尋を救うべく、ダンジョンで敵を倒しながら探索をすることになるのですが、陽平は英雄でも何でもありません。
一介のごくごく普通の平凡な高校生でしかないわけで、肉体的にも精神的にも弱々しい存在です。
武器だって持ってないから、素手で敵に襲い掛かるくらいですしね。
そんな陽平なのですが、ここがこのゲームの良いところでもあるのですが、周りに魅力的なキャラが多くてね。
特に自分が少年だったら憧れてしまうような、大人のお兄さんお姉さんが主人公をいろんな意味で導いてくれるのです。
私がSFC時代とかそれ以後のRPGで凄くひっかかっていたことに、主人公である子供と、周りのありえないくらいバカな大人たちという構図があります。
家庭用ゲーム機のRPGは、小中学生等、子供がプレイすることが多いです。
そのプレイヤーとの格差を減らすためか、主人公の低年齢化が進みましたが、その勇者様を引きたてるために、周りの大人がバカになっていったんです。
プレイヤーも子供だったならば、あまり気にならないのかもしれないけれど、周りの大人のバカさ加減に私は、とても違和感を覚えてしまったんですね。
『クリスタルリナール』はその逆です。
主人公はバカではないけれど、年相応の未熟さの残る少年なんです。
そこに経験を積んだ魅力的な大人が出てくるのです。
この流れはとても自然に思えましたし、あぁこういう少年時代をすごしてみたかったなと思わされます。
多くの魅力的なキャラ・個性的なキャラたちと出会い、時には辛いイベントを経ながらも、普通の少年は少しずつ逞しくなっていきます。
それは肉体的な面だけでなく、精神的な面も含めて。
ここら辺の成長を感じさせるイベントはいくつも用意されていますし、とても良かったですね。
ディーオーのゲームは鬱になったり暗くなったりするゲームも多く、またそれが魅力で好きだったりもするんですけどね。
本作は珍しくその逆だったわけで、心身ともに成長したくましくなった陽平が現実世界にやってくるという前向きな姿は感動しましたし、いつもと違う路線も良いものだなと思わされたものです。
かようにいつもと違う魅力も良かったのですが、いつものディーオーらしい魅力も当然有していました。
WIN時代から入った人は知らないかもしれませんが、98時代のディーオーは触手に強いブランドとしても有名でした。
まぁ、触手自体が人を選びますからね。
高い水準を有していながらディーオーが御三家の仲間に入らなかったのも、これが原因とも思えますし。
でも、好きな人にはたまらないわけで、本作でも触手は一杯出てきますし、従来のファンでも満足できる内容だったかと思います。
そういうわけでストーリー・キャラは優れていたし、いつもながらに広崎さんの絵は素晴らしいし、サウンドとかも良かったんですけどね。
致命的な欠点があるとすれば、それはゲーム部分にあるかと思います。
基本システムは3DダンジョンタイプのRPGで、2人ないし1人で戦うことになります。
戦闘も普通のコマンドタイプで凄くシンプルなのですが、成長はもっとシンプルでHPとMPしか上昇しません。
能力値を上げたりスキルを覚えたりというような、一般的なRPGの楽しみ方がまるでできないんですね。
拾った武器をアイテムとして使用することはできますが、基本的には常に素手での戦いとなりますし、マッピングも自動でなされないのでそれが苦痛になる人もいるでしょう。
RPGとしてゲーム部分だけを期待すると、まるで楽しめないわけで、戦闘もあるADVの延長上と捉えた方が良いくらいです。
もともと、本作はADVとして企画されたみたいで、物語の内容とマッチさせるためにRPGに変更されたそうです。
確かに、物語とシステムのマッチという観点からは、RPGの方が向いているように思います。
でも、こういう中途半端な形になるのであれば、それこそダンジョン探索とトラップ解除に特化した移動式ADVにしても、それはそれで良かったのではないかと思ったりするわけです。
まぁ、今なら、バトルがあっても何であってもノベルで出されちゃうので、それよりはマシかもしれないですけどね。
やっぱり勿体無さは感じてしまいますよね。
<評価>
総合では、ゲーム部分の難があるので、点があまり伸びなかった面もありますが、それを差し引いても他に様々な魅力があるので、文句なしに名作と言えるでしょう。
同時に、これは98時代の成長物語の代表作とも言える作品でしょうね。
そういや94年には『逆玉王』とか『闘神都市2』とかもありますし、成長物語の優れたゲームが多かった年かもしれませんね。
最後に、私は大抵のリメイク作品は好きになれないのですが、ディーオーのWINDOWS移行期のリメイク作品は、下手なアレンジを加えずに、画質の向上や音声の追加などにとどめています。
その音声が普通のアニメに出ているような有名声優も多かったわけで、今だと考えられないくらいに豪華だったりします。
そのため、WIN版は、見つけるのは難しいものの、あればオススメと言えると思いますね。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-10-06 by katan
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