『僕が天使になった理由(わけ)』は、2013年にWIN用として、OVERDRIVEから発売されました。
ボーカル曲が9曲あるだけでも凄いですが、一枚絵の質やストーリーなど、見どころの多い作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・山と海に囲まれた異国情緒豊かな港町、伊乃郷市。
山頂の教会が見守るこの街で、少年と少女は出会った。
少年の名は桐ノ小島巴。恋も幸せも信じず、孤独を貫く少年。
少女の名はアイネ。愛を唄い、幸せをもたらす為に生れた……天使。
桐ノ小島巴の人生は、他人の目にはおそらくとてもつまらないものに見えていただろう。
友達は作らない、彼女なんてもちろんいない。趣味らしい趣味もない。
寝て起きて登校して帰って寝る。ただただ平凡なルーチンを繰り返すだけの日々。
そんな彼の平穏な生活は天使の登場によって終りを告げた。
「天使」。人々の恋の護り手。「赤い糸」を紡ぎ、奏でる者。
目の前を通り過ぎていく「恋」という現象に込められた様々な思い、そして様々な幸せの形。
それは、幸せというものの本当の意味を探す旅。
そしてその果てに、彼は歩み続けた理由を見つけ出す。
<グラフィック・サウンド>
今回は、ゲームのメインではない部分から入りますが、まず本作には、ボーカル曲が9曲あります。
このブランドらしいといえばらしいのですが、数の多さは業界の中でもトップクラスでしょうね。
この点だけで高評価ってなる人は稀でしょうけれど、キャラごとに合った歌が流れると、感動等もより一層増してきますからね。
本作が好きな人には、更なる加点要素にはなるでしょう。
主題歌の数という情報は事前に得ていたので、特に驚きでもなかったのですが、プレイし始めて良い意味で裏切られたのがグラフィックでした。
本作は、立ち絵は普通なんですよね。
しかし、本作の場合は、一枚絵が非常に良かったのです。
きちんとシーンの大事な場面を切り取り、描けているんですよね。
ワイド画面が標準化されて以降、私は特に一枚絵の質に不満を持つようになりました。
ここ最近はマシなものが増え始めてきましたが、本作発売時は酷いものが多かったです。
そういう相対的なものも含めると、本作のグラフィックは更に好印象となります。
余談ですが、本作は背景も綺麗なのですが、その背景が長崎の街並みをモデルにしていまして。
長崎に詳しい人、長崎に思い入れのある人ほど、おぉ~あの景色だよと、楽しめるのではないでしょうか。
私自身、短期間ではありますが長崎にいたこともあるものですから、何だかとても懐かしくなってきました。
<感想>
さて、本作では、主人公の下にある日、天使のアイネがやってきます。
主人公はすぐに帰ってもらいたかったのですが、アイネは持っていたギターの弦が切れてしまい、帰るに帰れない状況になってしまいます。
その弦は縁を結ぶ赤い糸でできており、他人の恋愛を成就させると糸が復活するとのこと。
主人公はアイネに早く出て行ってもらうために、恋愛成就を手伝う羽目になります。
そのため本作では、他のカップルのシナリオが一話完結方式で6本ほどあり、その後に各ヒロインのルートがあります。
本作は、おそらく発売当時の一般的な評価では、あまり高得点にはなりにくいタイプなのでしょう。
というのも、本作には、様々な要素が含まれているからです。
本作は、基本的には鬱ゲーに属するような、鬱な展開や重い展開が多いです。
また、上記のように、本作には複数のカップルが登場するところ、その中には男性同士、つまりはBLな内容もありますし、カップルの女性の中には、陵辱されてしまう子もいる、つまり不意打ちNTRもあるのです。
一つ一つの要素は、それほど濃いというわけでもないと思います。
しかし、人によっては含まれているだけで地雷となりそうな、好き嫌いの分かれそうな要素が幅広く含まれていますので、これは全然平気だけれど、あれはダメというように、何かしらで引っかかってしまう人は、現在のエロゲのユーザー層から考えると、それなりに出てくると思います。
もちろん、私のような雑食性で、何でも大丈夫というのであれば、逆にプラス要因にもなりうるのですけどね。
PC98時代の作品が好きな人や、98時代のユーザーなんかも基本的に雑食性でしょうから、本作を問題なく楽しめるのではないでしょうか。
さらには、エンディングもしっかりと筋が通っているので、ストーリーとしては良い終わり方なのですが、いわゆるハッピーエンドとも違うわけでして。
ご都合主義でも良いから、幸せなハッピーをと考える人には、この作品は合わないのでしょう。
というわけで、何だかずいぶん人を選ぶようにも思いますが、恋愛というテーマのもと、各カップルのストーリーが一話完結方式で描かれるので、読んでいてメリハリがありますし、最後までだれずに読むことができました。
最初は主人公とは直接関係のない、他人の恋愛ばかりが描かれるわけですが、それが次第に、他人に関心を持たない主人公に影響を与えていき、最後はしっかりと主人公自身の物語として終わるわけでして。
そして最後まで全て読み終えたときに、本作のタイトルの意味が分かると。
いかにもなハッピーエンドでないので、終わった後に爽快感とかはないかもしれないけれど、タイトルを見て、なるほどねとしっかり納得できるように、上手くまとめてきたって感じですね。
合わない人はいるだろうなと思いつつも、私はこれはこれで十分にありな終わり方だと思います。
それから、キャラクターも好きなキャラが多かったですね。
そして大きかったのは、主人公の存在だと思います。
主人公は人付き合いが苦手で無気力な青年で、エロゲでこの手の主人公だと、本当にただウザいだけとなりかねないのですが、本作の主人公には好感が持てました。
他人とのかかわりを極力避ける点も含めて、その言動には意味があり、一貫性があることから、終始ストーリーに安定感が生まれたのでしょうね。
主人公がぶれないから、ラストも納得できるわけで、この主人公でなければ、本作に対する印象も大きく変わっていたかもしれません。
<評価>
総合では文句なしに名作といえるでしょう。
ストーリー、グラフィック、サウンドと、ノベルゲーの核となる要素がすべて優れた作品は、本当に久しぶりなように思います。
まぁ、上記のとおり、人を選ぶ作品ではありますので、好き嫌いの多い人に本作を薦める気は全くありません。
しかし、もし、ストーリー重視の作品が好きな人でありつつ、だからといって文章だけにこだわるのではなく、総合的に判断する人で、なおかつ雑食性で何でもいけるという人には、ぜひともプレイしてほしい作品ですね。
ランク:AA-(傑作)
OP
Last Updated on 2024-11-10 by katan
コメント