『Piaキャロットへようこそ!! ~We’ve been Waiting for you~』は、1996年にPC98用として、カクテルソフトから発売されました。
メイド喫茶など、オタク文化に与えた影響を考えると、非常に意義のある作品でしたね。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルは簡易SLG的な要素も含んだ、ノベル系ADVになります。
本作のシステムにはパラメーターがありますので、人によってはSLGに分類することもあるようです。
まぁ純粋なノベルゲーではないから、ADVファン的にはそう言いたくなる気持ちも否定できないのですが、パラメーターはイベント進行における目安みたいなものにすぎません。
本作は数値の変動を楽しむものではないので、いわゆるSLG的な楽しみ方はできず、SLG好きが求めるものはないと言えるでしょう。
そもそもADVだって数字で表現されないだけで、好感度を溜めていくタイプがありますよね。
本作はその蓄積型の内部パラメーターを見える形にしたってだけなので、本質的にはADVと捉えた方が良いのでしょう。
いずれにしろ本作ではシステムに大した比重はないでしょうが、SLGと言い出す人がいるくらいには馴染みのないタイプでしたので、そういう意味では、ほとんどの人が比較的新鮮な感覚でプレイできたはずです。
ところで、本作のようなシステムは、当時のエルフの複雑なゲームを好むような層には、ゲーム性の薄い、もの足りない作品に見えたでしょう。
逆に最近の読むだけのノベルゲーが大好きという層には、面倒に見えてしまうと思います。
だからこういう作品は何年も経つと、過少に低く見られる傾向があるように思われます。
しかし、アダルトゲームにおけるジャンルというものは、何かが流行することで一気に変化するものでもなく、少しずつ変化していったんですよね。
当時のアイデスは、エルフなどの他社が作った斬新なシステムの作品を、その魅力だけ残して簡易化させることに長けていたブランドでして。
当時流行っていた恋愛系の育成SLGの良さを残しつつ、ADVとして簡易化させたのが本作なのでしょう。
高難度から低難度、SLGからADVへの変化など、アダルトゲームの主流の変遷を辿ってみると、その中でアイデス作品の果たした役割は非常に大きいのであり、恋愛SLGの時代から恋愛ノベルゲーの時代への橋渡しを担った本作は、その点でも意義があるように思うのです。
<メイド喫茶>
まぁ、細かい理屈はどうあれ、アイデス作品のやっていたことは、斬新なシステムで楽しませるというのではなく、システムを簡易化し誰でも楽しめるようにしつつ、キャラの可愛さなど内容面でライト層を取り込むことだったのでしょう。
本作がヒットしたのも、その内容面が理由なのであり、具体的にはファミレス系作品の先駆け的ポジションにあったからなのです。
本作では最初に、制服を3種類の中から選べます。
個人的には制服属性はない方ですので、正直なところ有難味もあまりなかったかもしれません。
しかし、可愛いデザインが複数用意されていることは、好きな人にはたまらなかったでしょうね。
属性による好き嫌いを別にしても、ファミレスといえば制服なわけで、作品的に重要な要素だからこそこだわるという姿勢は、高く評価されて然るべきだと思います。
それと、上記のように私自身は制服に特にこだわりがないので、それで最初は知らなかったのですけどね。
今ではすっかり定着したメイド喫茶も、そのキッカケは本作の存在なんですよね。
本作があったからこそメイド喫茶が生まれ、アキバに定着していったと。
したがって、本作がオタク文化や秋葉原の街に与えた影響は非常に大きいのであり、アダルトゲームの枠内に囚われるのではなく、広くオタク文化や街づくりという視点も考慮するのであれば、本作の価値も飛躍的に増していくのでしょう。
私は単独でプレイするので、制服を3つ用意されても自分の気に入ったものを選んでプレイするだけです。
しかし、アダルトゲームについて他の人と語り合うような人だと、そこで自分と違う意見も出てくるでしょう。
制服が3種類あることで議論のネタを提供したということも、オタク文化の観点からは大きかったのだろうなと、今になって思いますね。
<感想>
ストーリーは、ファミレスを主な舞台とした恋愛ものになります。
今では店を舞台にした恋愛ゲーも多いですよね。
WINDOWSでアダルトゲームを始めた人も多いので、そういう人にはまだ恋愛ゲーに馴染みのない時期だったかもしれません。
しかし95年を恋愛ゲー元年と評した人がいたように、翌96年にはPC98で飛躍的に恋愛ゲームが増えました。
雑誌のコラムなんかでも、96年の時点で恋愛ゲーのシチュは出尽くしたと言った人もいるくらいですし。
出尽くしたか否かは意見が分かれるとしても、各社がいろいろ差別化を図ろうとしていたわけで、その一例として本作ではファミレスを題材にしたのでしょう。
これは当時では珍しかったわけで、システムなどと相まって全体として新鮮な感じで楽しめました。
まぁストーリー自体は手堅く楽しめつつも、それだけで名作と呼べるほどでもなかったかもしれませんが、扱った題材などから総合的に楽しめた感じですね。
また、キャラも非常に可愛かったですね。
個人的には、ここのポイントが大きいです。
それと、カクテルソフトは悪癖があって、キャラが可愛いほどエロが薄い傾向もありました。
それで残念に思うことも多々あったのですが、この作品に関しては可愛さとエロさを両立していたと思います。
続編のPIA2なんかはキャラは無茶苦茶可愛かったのですが、エロさが格段に落ちました。
あれはガッカリしましたね・・・
それ以降のF&C作品も、可愛いキャラの恋愛ものほど、エロが薄かったですし。
エロゲにはエロは要らんって人もいますが、アダルトゲームなんだからエロいにこしたことはないですし、他ジャンルならともかく、恋愛ゲーは濃いエロがあっても良いでしょう。
PIA2をやった後に本作をやると、しみじみと本作の素晴らしさが伝わってきます。
<評価>
総合的には、キャラやグラフィックの良さが、まずは1番の大きなポイントになるのでしょう。
それ以外にもシステム面などでちょっとずつ手が加えられており、ほぼ全ての面で高水準な作品でした。
PC98時代のカクテルソフトの集大成的作品でもあるでしょうし、とても印象に残った作品でしたね。
そこにオタク文化や秋葉原への影響という点も考慮すれば、更に意義の大きくなる作品でもあり、ある意味、アダルトゲーム史においても最大級に重要な作品でした。
ランク:A(名作)
Last Updated on 2024-11-11 by katan
コメント