BETA-SIXDOUZE - ADVGAMER

『BETA-SIXDOUZE』は2020年にWIN用として、Liar-softから発売されました。

シリーズ2作目にして完結編であり、完成度の高い素晴らしい作品でしたね。

＜概要＞

ゲームジャンルはノベル系ＡＤＶになります。

あらすじ・・・
地球から300，000Km離れた宇宙に咲く美しい薔薇。
人々はその薔薇を《コンスエロ》と呼んだ。
主人公・箱根羊介はSTX軍に所属する《戦う操縦士》――
ある日、羊介は不思議な少女《ハナコ》と出会い、精鋭操縦士として彼女とバディを組むことになる。
そして星外除花機動スーツ、通称《バトルシープ》に乗り込み、人類の脅威である《コンスエロ》に立ち向かう。
ハナコは精神年齢が幼く、社交辞令や言葉のオブラートが理解できない純真無垢な存在だ。
羊介はハナコと心を交わすことで、それまで曖昧だった自分自身の《行動原理》と向き合うことになる。
ハナコは何者――人類の敵か、それとも味方か？
人類は脅威の侵略に抗うことができるのだろうか？
これは、かつて少年少女だった大人たちに贈る、星に輝く冒険譚。
目にはみえない大切なものを自覚する、人間たちの物語である。

＜感想＞

本作は、2019年に発売された『ALPHA-NIGHTHAWK』の続編であり、シリーズ完結編になります。
『ALPHA-NIGHTHAWK』と主人公は違うのですが、世界観は一緒ですし、『ALPHA-NIGHTHAWK』で残された謎がこの作品で明らかになりますので、未プレイの方は、『ALPHA-NIGHTHAWK』からプレイしてください。

さて、たとえばグループアイドルの誰かが卒業をする場合、その後、女優になることもあれば、バラエティに特化する場合もあれば、中には全然違う分野に進むこともあるでしょう。
エロゲクリエイターも同様で、ＰＣ９８時代の場合、漫画家になる人が少なからずいました。
漫画家になるような人は、絵も描けるしシナリオも書けることから、ゲーム制作においても、原画とシナリオを兼任することもありました。
しかし、今は、そういう人や作品が少ないように思います。
今だと、シナリオライターは原画とは別の人で、将来はラノベ作家というケースが多いですしね。
ゼロ年代以降、そのような傾向になってきたでしょうか。
もちろん、原画とシナリオが絶対一緒の人である必要はないのですが、原画とシナリオが別の場合、きちんと監督する人がいないと、グラフィックとテキストが合っていなかったり、盛り上がる場面とか欲しいところにCGがなかったりしていて、作品の魅力を引き出しきれていないケースが多々あります。

余談になりますが、そういう意味では、エロゲ業界に必要なのは、将来小説家として活躍できそうな人ではなく、将来漫画家として活躍できそうな人の方だと思います。

さて、ノベルゲームはテキストやグラフィックが組み合わさり、物語をより効果的にみせるものだとは言われますが、近年の作品を見ていると、果たしてそうなのだろうかと、作品全体のボリュームが増えるにつれ、グラフィックや文テキストやサウンド等が、きちんと噛み合っていない作品が増えていっているように思うのです。
グラフィックの質が上がっていき、テキストの質が上がっていき、それらを単純に足した、総合力が高い作品は存在します。
しかし、きちんと噛み合っていない場合には、完成度が高いとは言えないと思います。
気付いた人がいるかは分かりませんが、そんなわけで、ここ数年、私は、総合力と完成度という言葉を、あえて使い分けています。

前置きが長くなりましたが、本作は宇宙を舞台にした作品であり、ジャンルとしては、スペースオペラになるのでしょう。
ＰＣ９８時代はわりと多かったジャンルですが、恋愛ゲーばかりになった近年では、こうした作品自体珍しくなっています。
基本的には王道路線の内容だとは思いますが、前作の時から、キャラが魅力的でとても楽しい作品でした。
ただ、前作の時は、明かされない謎が残っていたりして、クリア直後から続編が待ち遠しい状況でもありました。
それをうけての本作。
主人公らは変更となったものの、登場するキャラたちは相変わらず皆良いですし、前作で明かされなかった部分も描かれ、同年に発売されたエロゲの中では、ストーリーも一番楽しめました。

以上のように、ストーリーもキャラもグラフィックも良い本作ですが、一番の魅力は、その完成度の高さにあるのだと思います。
本作は、原画もシナリオも、七星電灯さんが担当しています。
だからなのか、テキストとグラフィックが、とてもマッチしているのです。
年々、この部分に疑問を感じる作品が増えているだけに、余計にも本作の良さが際立ちます。
プレイしながら、これだよこれと、何度思ったことでしょう。
プレイをして本当に良かったと思える作品でした。

＜評価＞

グラフィックやキャラ等、個々でも良い要素がありますし、何より完成度の高さから、総合では、十分に名作と言えるでしょう。

それにしても、本作を最初にプレイするのはライアーファンでしょうが、古参のライアーファン的には、本作はどう見えたんですかね。
というのも、ライアーソフトの作品って、個性はピカ一だけれども、完成度なんて言葉からは一番かけ離れたブランドだったと思います。
すなわち、ライアーのデビューは１９９９年で、注目されだしたのは２０００年の『行殺☆新選組』でした。
私も、『行殺☆新選組』っていう面白い作品があるらしいとの噂を聞き、それでプレイし始めましたしね。
そしてデビューから数年くらいは、バグや初期不良が初回特典と揶揄されるほどで、無事起動できればもうけものって感じでした。
内容にしてもそうで、作品としては未完成な部分もいろいろあるけれど、看過できないような他にはない唯一無二の個性や魅力があることから、根強いファンもいるブランドでした。
本作は、一般的には高い評価を得ているように思いますが、上記のとおり、題材的にはむしろ王道路線の作品であり、そのかわりに完成度が非常に高い内容となっています。
つまり、古参のライアーファンが求めるものとは、むしろ正反対の作品だと思うのです。
そうなると、最初にプレイする層には評価されにくい路線かなと、個人的には思うのです。
そうであるならば、本作は過小評価されやすい作品かもしれませんね。

最後に、本作は、女性キャラの一人が主人公以外のキャラとくっつく等、人によっては寝取られみたいに感じてしまうかもしれない要素もあります。
もっとも、本作には一本の軸となるストーリーがあって、登場するキャラたちがそれぞれ自分の信念に従い動いており、その観点からは、何ら不自然ではないので、個人的にはまったく問題と思いませんでした。
このような構造の本作をプレイしていると、ＰＣ９８時代の作品のような印象を受けましたね。
近年の恋愛ゲーよりも、昔のＳＦゲーとかの方が好きだった、最近はそういう作品がなくて寂しいと思っている人がいれば、このシリーズはぜひともプレイしてみてもらいたいものです。

ランク：Ａ（名作）

駿河屋