『あゆ』は1996年にWIN用として、BELL-DAから発売されました。
影崎夕那さんのグラフィックと、脳内を洗脳されてしまいそうなボイスが特徴の作品でした。
<ゲームデザイン>
いつの時代もクソゲーメーカーというものはあるのだけれど、90年代後半で私が真っ先に酷いブランドとして思い浮かべるのがBELL-DAでした。
とにかく毎回、中身がなかったものですから。
本作は、画面上に部屋とその中にいる女の子が表示されます。
その女の子や周りのオブジェをクリックすると、アイテムが出てきたりグラフィックが表示されたりと、いろいろ反応があります。
画面をクリックすることで進行しますので、ジャンルとしては一応ポイント&クリック式のADVとも言えるのでしょうが、ゲーム性は極めて弱いですからね。
他方で絵や音を重視し特徴のあった作品でもありますし、当時の言い方的にはインタラクティブムービーが適しているのでしょうか。
ジャンル自体は私の好きなジャンルではあるものの、当然このジャンルだってピンからキリまであります。
本作は80年代末のこのジャンルが登場した時よりも劣るような密度であり、内容がスカスカだったのです。
だから何も知らないで本作を今プレイしたとすれば、ほぼ全員がクソゲーと感じてしまうのではないでしょうか。
本作は96年としては珍しいWIN用のアダルトゲームです。
家庭用ゲーム機でもハードの出始めはゲームのクオリティが下がるものですが、同じことはPCゲーにだって当てはまります。
WIN95の登場でPCゲーに手を出す人は増えたのだけれど、初期のWIN用のゲームは同時期のPC98末期のゲームと比べて、色数以外は劣るものが多かったですからね。
本作のような作品が増えることで、アダルトゲームの質が一時的に下がったように感じたものです。
<グラフィック・サウンド>
ただ、本作をプレイした直後こそ買って失敗したと思ったものの、今はそれほどには失敗とも後悔したとも思っていないのですよ。
私はトータルでのプレイ本数は多いかもしれませんが、1年辺りの本数はそれほど多くない方だと思っています。
クソゲマニアでもないので、年間で遊んでみたいと思う作品も限られていますから。
じゃあ何でBELL-DAの作品を何本も買っていたかと言うと、当然何かしら欲しくなる要因があるからであり、具体的には単純にグラフィックに惹かれたからなんですね。
本作の原画は影崎夕那さんで、当時かなり人気のある方でした。
その原画の魅力もそうなのですが、96年という、まだPC98の16色の作品が多かった時期だけに、256色の塗りが堪能できるという本作の特徴は大きな魅力になりえたのですよ。
また中毒性のある音声も、PC98では実現しにくいものでもありましたしね。
つまりストーリーやゲーム性やボリュームなど、作品の中枢を担う根幹部分はことごとく駄目なのですが、高画質のグラフィックに音声という、それ以外の部分では、これまでの98ゲーにない魅力があったのも確かなのです。
したがって、一方で買って失敗したなと思う部分がありつつも、他方で、これはこれで得がたい経験もできていたわけです。
だから、それほど後悔もしていないんですよね。
<評価>
ゲームの中枢部分だけなら確実に駄作かそれ以下のレベルなのですが、絵や音が良かったので凡作としておきます。
上記のように、主観だけで判断するならば、今は佳作でも良いのかもと思ったりも。
酷い作品ではあったけれど、決して嫌いにはならない作品。
それは、本作にしかない魅力がきちんと備わっていたからなのでしょう。
エロゲの平均レベルは上がっているのだか下がっているのだか、それ自体はどっちでも構わないのですが、平均レベルのストーリーに平均レベルのグラフィックに、平均レベルのボリュームでは、そもそも何を作りたいのかも伝わってこないし、数年経てばプレイしたことすらも忘れかねません。
私が一番嫌いなのは、そういう全てが平均レベルの作品なのです。
本作は作りこみこそ酷かったものの、他所より優れたセールスポイントだけはハッキリしていたので、何だかんだで印象深くもあるんですよね。
ランク:D(凡作)
Last Updated on 2024-11-21 by katan
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