『春ゆきてレトロチカ』は2022年に各機種用として、スクウェア・エニックスから発売されました。
スクエニから実写ゲーが発売されるということで、発表当初から注目していた作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはフルモーションビデオ(FMV)系のADVになります。
あらすじ・・・令和4(2022)年、春。
ミステリ小説家の河々見はるかは、科学者の四十間永司の依頼を受け、編集者の山瀬明里とともに、富士山麓にある永司の実家、四十間邸を訪れる。
永司の依頼は、桜の下で見つかった白骨死体の正体究明と、四十間邸に眠ると言われる“不老の果実”の捜索。
大真面目に語る永司と、半信半疑のはるか。
そんなはるかに明里が一冊の古書を差し出す。
そこに掲載されていたのは永司の先祖、四十間佳乃が書いた“不老の果実”をめぐる、百年前のある物語。
それは小説の体裁をとった、実際に起こった殺人事件だという。
古書を読み終え、事件の謎を解き明かしたのも束の間。
はるかの目の前で四十間家を揺るがす殺人事件が起きた。
<感想>
私の過去の記事を読んでいる人であれば知っているかもしれませんが、私は大の実写ゲー好きです。
作品の絶対数が少ないことから、ここで扱う数も少なくなるのですが、世の中に実写ゲーが溢れかえっていたら、ここを実写ゲー専門サイトにしていたかもしれません。
そんな私なので、本作については、発売前から非常に期待していました。
実際、何時間にも及ぶ実写動画を見ているだけで満足できました。
主演の桜庭ななみさんが好きという個人的事情を差し引いたとしても、日本らしさを感じさせてくれる映像は日本でしか作れないと思わせてくれますし、その点だけでも海外のFMV系とは一線を画しているといえるのでしょう。
ただ、作品全体としては、いろいろ思うところのある作品でもありました。
まず、個人的に一番ガッカリしたのは、実写ゲーとしての進化を何も感じさせないところです。
『悪逆の季節』(94年)や『RAMPO』(95年)などは、ゲームシステムにおいても、実写動画であることを存分に活かしており、実写(動画)ゲーの可能性を感じさせてくれたものです。
しかし本作は、単に動画を垂れ流しているだけであり、実写ゲーの可能性や新鮮さを何も示せていません。
画面の解像度を除けば、本作程度のシステムは30年前でも作れたでしょう。
他方、実写ゲーとしての新たな可能性を示せないまでも、最低限、単純に実写動画の魅力を活かしてくれるだけでも良いのです。
例えば、最近では『Late Shift』とかがそうですが、あれもシステム的には何も新しいことはしていません。
しかし、常に動き続ける動画と選択次第で目まぐるしく変わる展開とがマッチし、実写動画ゲーとしての面白さを十分に感じさせてくれました。
それに対し、本作は、選択により大きく展開が変わるわけでもなく、単に動画を見ているだけという域から脱しておりません。
しかも、推理パートでは静止画ばかりであるため、それまでの映画を見ているような感覚も寸断されています。
つまり、ゲームとしては、実写動画であることを何ら活かせていません。
結局のところ本作は、謎解き重視のノベルゲーと構造的にかわらないのであり、読むだけになりがちな導入部分と結末部分を動画にしたにすぎないのです。
では、謎解き重視の作品として、推理パートの出来はどうなのかとなりますが、こちらも問題が山積しています。
そもそも推理というより、単にパネルを入れていくだけのパズルであり、作業感が非常に強くなっています。
また、これは誰しも感じると思いますが、UIが不便であり、とても操作性が悪く、作業のストレスを更に増しています。
実写動画系の作品は、最近でこそFMVという表現が浸透してきていますが、90年代前半には、インタラクティブムービーと呼ばれていました。
インタラクティブムービーのゲームシステムの多くは、他のジャンルと比べても極めてシンプルでした。
操作自体は凄く単純なのに、面白さが十分伝わってくるジャンルだったので、私は好きだったんですよね。
そうしたインタラクティブムービー時代の良さや特徴も、本作では失われてしまった形になります。
本作を作った人たちは、過去のインタラクティブムービー作品をプレイしたことがあるのかと、どうしても疑問に思ってしまいます。
また、操作性だけでなく、中身も問題だと言えるでしょう。
本作では仮説をいろいろたてるのですが、どうにも子供だましというか、単に時間稼ぎだけのような仮説も多く、操作性の悪さと相まって、プレイ中に感じる煩わしさに拍車をかけています。
まだそれだけなら、私の主観的な感想にすぎないとも言えるでしょう。
しかし、本作は、公式で下記のとおり、フェアなミステリとうたっています。
「殺人事件の犯人はひとりであり、共犯者はいません。
超能力や超常現象のたぐいは事件に関与しません。
犯行理由のなさそうな人物も動機を隠し持っているかもしれません。」
でもね、これ、ほとんど嘘です。
私は本格ミステリに期待をしていたわけではないので、正直なところ、あまりこの部分は気にしていません。
しかし、本作を真剣にミステリとして考え、そこに期待をする人ほど、本作をプレイして騙された気持ちになるでしょう。
これはちょっと擁護できないです。
推理パートは全般的に、だまし討ちできればOKみたいな姿勢がうかがえ、ちょっとそれはどうなんだろうって思ってしまいます。
ストーリーについては、導入部分については引き込まれるところはありますし、キャラの掛け合いも良かったと思いますし、和の雰囲気を感じさせてくれた点も良かったです。
もっとも、肝心の解決方法については強引なところも多く、ミステリとしては期待しない方が良いでしょう。
それから、絶対に注意してほしいことがあるのですが、本作は6章まで終わった段階でEDとなります。
気早な方は、これで終わったと思ってしまうかもしれません。
しかし、クリア後にタイトルから終章に入れますので、終章もプレイするようにしてください。
なお、終章では真相が明らかにされるのですが、この手のトリックは、このトリックが使われたというだけで絶賛する人がいるわけでして(こう書くと、本作をプレイしていない人でも、私の過去の記事をよく読んでいる人であれば、何のトリックかわかるかもしれませんね。)。
本作に関していうならば、本作で用いられたトリックを小説でやるなら一応ありだと思うのですが、実写動画でやるのは、アンフェアに見えます。
それもあり、私自身は、真相に驚くというよりも、むしろ白ける方向に傾いてしまいました。
おそらく終章に関しては、ミステリに疎い人ほど驚き、詳しい人ほど白けてしまうのではないでしょうか。
まぁ、良くも悪くも2時間ドラマを見るくらいの感覚で、軽い気持ちでプレイするのが、ちょうど良いのかもしれません。
<評価>
結局のところ、本作は、ノベルゲーの一部を動画に置き換えただけであり、残念ながらインタラクティブムービーやFMVの面白さを追求した作品ではありませんでした。
その辺が理解できていないのであれば、本作の製作陣は、もう実写動画ゲーは作らない方が良いでしょうね。
私の評価が伸び悩む最大のポイントも、そこにあります。
本作自体は欠点の多い作品なので、書き出すと不満ばかりのようになってしまいます。
もっとも、上記のとおり、久しぶりに日本を感じられる実写ゲーがプレイできて、甘いかもしれませんが、個人的にはそれだけでも満足だったわけでして。
その点を考慮し、総合では佳作とします。
ランク:C(佳作)
駿河屋
Last Updated on 2024-04-20 by katan


コメント
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私の感想と評価もkatanさんとほとんど同じ感じです。
例のトリックに関しては、「新本格」と謳っているので、もしかして?と思ったら、あぁやっぱりねという感じでした。
まあ私の購入動機の半分以上は、もちょ(麻倉もも)を見るためだったので、実はゲーム部分やミステリー部分には最初からあまり期待してなかったり…。
あと5月発売作品では『fault – StP – LIGHTKRAVTE』も個人的にイマイチでした。
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>yukimuraさん
トリックについては、もっと違うタイプでやってほしかったですね。
国産の実写系の良い点は、好きな役者とかが出ると嬉しいってのもありますね。
『fault – StP – LIGHTKRAVTE』はイマイチでしたか。
私はまだプレイしていないので、そろそろプレイしたいと思っています。
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インタラクティブムービーというより、推理ゲーム「トリックロジック」の系譜じゃないですかね。
システムはトリックロジックがもとになっている、とディレクターが明言しています。
映像ではなくて文章だったり、「謎」は文中のキーワードを選択して組み合わせて自分で作らないといけないとか違いはありますが、
問題編が提示されて、プレイヤーが仮説を作り、解答編で答えていくというところは共通です。
しかし、レトロチカは全体的にアンフェアなんですか…。
トリックロジックは、本格派の推理作家が起用され、ロジック重視、動機も気にしなくていいとか、ゲーム作品としてはフェアな部類でした。
なので、読者への挑戦状にデジタルの解答機能を付けるならこうなるのかなということで煩わしさも割り切れましたが、
推理したのにちゃぶ台返しされるとがっかりしてしまうタイプの私には今作は合わなそうですね。
体験版までやって気になっていた作品ではあったんですが。
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すみません、訂正です。体験版まで「見て」です。体験版が見当たらないのでYoutubeで見たのです。
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> SunBinさん
例えば、3D・RPGは、見た目に着目した分類になりますよね。
3D風であるとか、ポリゴンで立体表示にしたRPGの総称であり、その中には様々なゲームシステムの作品があります。
インタラクティブムービーも同様で、見た目に着目した分類になります。
したがって、過去のインタラクティブムービーの中にも様々なゲームシステムの作品が存在しています。
見た目での分類とゲームシステムでの分類は異なりますので、両者は決して択一的な関係ではなく、両立しうる関係にあります。
例えば、3D・RPGだからターン制RPGではないとか言い出す人はいないと思いますが、ターン制というシステムで3D風の見た目の場合は、3D・RPGであり、かつターン制RPGでもあるわけです。
本作の場合も同様で、インタラクティブムービーであり、かつゲームシステム的にはトリックロジック系(こう表現して良いかは一旦置いておくとして。)の作品ということになるのでしょう。
本作は、一般的な二次元の絵ではなく、わざわざインタラクティブムービーを選んだわけですが、ゲームとしてその意味を全然発揮することができていなかったといえることから、記事内の表現となったわけです。
もちろん、インタラクティブムービーとしての意義は全然見いだせていなかったとしても、トリックロジック系作品として優秀ということはありえるのでしょう。
例えば、『キャプテン・ラヴ』は音声を入れた意味は全くなく、むしろマイナスでしかなかったですが、ゲームとしては秀逸だったように。
では、本作がトリックロジック系作品として優秀かとなると、ロジックなんてものよりも、単にライターのやりそうなことを当てるだけのように見えます。
子供だましな仮説も多いですし、真相についても、考えうる中で一番荒唐無稽なものだったりとか、本気で謎解きをさせようとしているとは到底思えません。
もしかしたら、ライターは、実写になるからユーザーはリアリティ重視と皆考えるかもしれない、だからその裏をかこうなんて思ったのかもしれませんが、本気でそう思ったのならば、センスがなさすぎるとしか言えません。
SunBinさんが本作に対し、何を一番求めているかにもより、本作を楽しめるかは変わってくるのでしょう。
私は日本を感じさせる長時間の実写動画があれば最低限OKと思っていたので、本作を楽しむことができましたし、プレイして良かったと思っています。
そのため、その点を求めている人には、プレイする価値あるよとおすすめします。
しかし、ミステリーとして、特に謎解きだけに着目しているという人には、本作を薦める気にはなれないですね。