『モンキーアイランド』は1992年にFM-TOWNS用として、ビクター音楽産業から発売されました。
ADV史上に欠かすことのできない、最も偉大なゲームとも呼ばれうる作品ですね。
<概要>
ゲームジャンルはポイント&クリック(P&C)式ADVになります。
オリジナルは1990年に発売された『THE SECRET OF MONKEY ISLAND』で、本作はその日本語移植版となります。
80年代の日本のADV史をリードしてきたのがエニックスであるならば、世界をリードしてきたのがルーカスアーツになります。
そのルーカスアーツの一番の看板シリーズが、このモンキーアイランドシリーズでした。
たまにネットとかのADV関連で「猿島」とかって表現があったら、このシリーズを指すことが多いです。
本作はそのシリーズの第1弾というわけですね。
<感想>
ルーカスアーツのADVは、SCUMMシステムを導入しています。
これはScript Creation Utility for Maniac Mansionの略で、ほぼ全ての操作をマウスで行えるという、80年代のADVにとっては非常に画期的なシステムでした。
これが発展して海外のADVの標準システムとなり、今ではP&C(ポイント&クリック)式ADVと呼ばれるわけですね。
もっとも、この一言で済ますということには、知らない人に誤解を与える危険性も多く有しているわけでして。
例えば、同じノベルゲームという表現であっても、細かなシステム周りは、90年代半ばと今とでは比較にならないほど進化しています。
一昔前に主流だったコマンド選択式ADVにしても、中には総当りと揶揄されるようなものもあり、また後期の有名作ほどかえってそんなゲームも増えたりもしましたが、総当りできないのも一杯あり実は多種多様でした。
(練られてあるものほどマイナーだったりするあたりが、日本のADV市場の寂しいところだったりもしますけどね。)
同じことはP&C式ADVにも言えるわけで、このシステム自体は80年代半ばに登場しているものの、それから20年以上の歴史があるわけで、その間に多くの変遷や進化を遂げているわけです。
だから自分のたまたま触れたゲームだけを参考に、選択式だからイコール総当りだとか、P&C式はイコール画面クリックだけとかと決め付けるのは危険なんですよね。
このモンキーアイランドにしても、従前の作品からは改良が施されています。
従来のSCUMMシステムは、国産ADVでいうアイコン方式に近いものでした。
ファミコンやディスクのADVにはアイコン方式が幾つかありましたが、あれってカーソルのいったりきたりが結構面倒なんですよね。
コマンド選択式より、自由度やゲーム性を増やすことも可能になりましたが、一概により優れたシステムとは言えないものでした。
モンキーアイランドにおける進化は、右クリックで実行できることにしたことで、その煩わしさを取り除いたものだったんですね。
ちょっとしたことですが、これにより遊びやすさは格段に増したと思います。
本作では、あちこちクリックするだけでなく、様々なアイテムを組み合わせたり使用したりする必要もあり、とても総当りみたいな手法は取れません。
また、世界中で絶賛されるだけあって、その謎解きやバランスも絶妙だったんですよね。
ルーカスアーツが市場をリードしてきた背景には、こういうシステム面の改良があり続けたこと、及び謎解きの充実といったゲーム性の高さがあることは間違いないでしょう。
もちろん、もっと端的にユーザーを惹きつける面でも優れていたわけで、その1つがグラフィックやサウンドの演出面でした。
ルーカスアーツというと馴染みのない人も増えているかもしれませんが、これは映画監督のジョージ・ルーカスの作った会社なんですね。
映像制作会社として作ったのがルーカスフィルムで、ゲーム制作会社として作ったのがルーカスアーツというわけです。
映画で作りそこなったインディ・ジョーンズの新作を、ルーカスアーツでゲーム化したなんてケースもありますし、それだけ密接な関係だったわけです。
まぁそういう背景があるだけに、グラフィック面も世界屈指だったわけで、細かなキャラや画面の動きを見ているだけでも楽しめちゃうわけです。
好みが分かれるとすれば、それは間違いなくストーリーなのでしょう。
主人公のガイブラシは海賊に憧れていて、本作では海賊になるための試練を受けることになります。
海賊というところでピンとくる人もいるかもしれませんが、『ワンピース』の作者がこれを好きだったという話を、昔何かで聞いたことがあります。
真偽は確認できていないので間違っていたら申し訳ないのですが、本当だとしても何となく納得できる感じですよね。
そういうわけでモンキーアイランドは海賊ものとなるのですが、基本的にコメディー系の作品なのですよ。
英語のゲームをやっていると、自分の英語力が足りなくて楽しめないのかなって思うことも多々あります。
でも、決してそればかりでもないんですよね。
日本語化されたゲームでもよくわからない部分もありますので。
まぁ日本語化されたらされたで、翻訳の出来不出来の問題も出てくるでしょうが、一番の問題は、笑いに対するあちらとこちらの感性の違いにあるのでしょう。
そのため、向こうでは大絶賛された本作ですが、私はその海外の評価ほどには楽しめなかったように思います。
<評価>
ゲーム部分の作り込みや画面の動きには圧倒されました。
これぞADVであり、ADVの教科書的な存在なのだと思います。
ただ、上記のようにストーリー面で格別楽しいとまでは、私には感じられなかったわけで、それが名作としなかった最大の要因になりますね。
まぁ、どうしても文化の違いがありますから、コメディ系の作品は難しい面が出てしまいますよね。
当時ファンタジー小説ではハヤカワFTとかもよく読んでいましたが、シリアスな作品には面白いのが多いのです。
でも、コメディ系はいまいちよく分からなかったわけで、ラノベで『スレイヤーズ』とかが出てきてどっぷりはまり、やっぱりコメディ系は自国のものに限るよなと思ったものです。
個人的な感想はそんなところですが、世界中では最も有名かもしれないADVですし、最高傑作と評する人も多い作品ですからね。
ADVが好きという人ならば、少なくとも名前くらいは知っておいて損はないゲームだと思いますね。
ランク:B(良作)

Last Updated on 2024-08-25 by katan
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