ゆみみみっくす

1993

『ゆみみみっくす』は1993年にメガCD用として、ゲームアーツから発売されました。

竹本泉さんの魅力が一杯籠められた作品でしたね。

<概要>

SFCは16ビット。
でも、ロムカセットで容量が少なく、アニメーションや音声に向いていない。
その点、PCエンジンはCD‐ROMを採用して大容量で作れるので、アニメーションや音声を入れることも可能なのだけれど、基本的にPCエンジンは8ビットでしかないので、処理能力に限界が生じてしまうと。

そう考えると、16ビットのメガドラにCD‐ROMを採用したメガCDは、最強の機体になれる可能性はあったんですよね。
実際、スペック的には、94年以降の次世代機が登場するまでは最高でしたし。

だからもっと普及しても不思議ではなかったのかもしれませんが、揃えるのにお金がかかるのもそうだけど、『惑星ウッドストック』とか、見事なまでに糞ゲーと呼べる作品が多かったですからね。
だから駄目だったんですかね、メガCDは・・・

まぁ、日本は不思議なもので、その時期その時期で最も優れたハードが一番浸透するケースは少ないので、メガCDも当然予想された結果だったのかもしれませんけれど。

とはいえ、ハードの普及と個々のゲームの良し悪しは別であり、メガCDに名作がないわけではありません。
特にADVではハードの恩恵は大きく、メガCDでしかなしえない、メガCDならではっていう作品は幾つかありますしね。
そしてその中の1本が、『ゆみみみっくす』なのです。

<ゲームデザイン>

順序が逆になるけど、本作は、後にやるドラで有名になった、『ダブルキャスト』とかと同じシステムでした。
つまり、フルボイス・フルアニメーションを採用し、途中に出てくる選択肢を選ぶことで展開が変わってくる、マルチエンドのADVなのです。
したがって、元祖やるドラとも言えるのでしょう。
まぁ、『ダブルキャスト』ほどの分岐はないんですけどね。

本作を初めてプレイした時には、ノベルゲーの将来の姿はこれだと思ったのですが、フルボイス・フルアニメーションで選択肢で分岐する作品って、今でも中々増えないですよね。
個人的には不思議に思えて仕方ないのだけれど、世間ではグラフィックにおける動きの進化よりも、一定量のテキストボリュームを求める人の方が多いってことなんですかね。
自分が少数派であるならば、目立って増えないのも仕方ないですが、個人的にはもう少し、こういう系統の作品が増えて欲しいものです。

<グラフィック>

今となってはPSのやるドラ等より画質は劣りますが、この当時としては高品質のフルボイス・フルアニメーションってことで、グラフィック・サウンド共に非常に良好でした。

余談ですが、本作の主人公もダブルキャストのヒロインも、どちらも平松晶子さんなんですよね。
マルチメディアの実写ゲーというと小川範子さんが有名ですが、フルボイス・フルアニメーション作品なら、平松晶子さんってところでしょうか。

また、本作は漫画家の竹本泉さんが脚本・設定・絵コンテ・レイアウト・タイトルを担当しています。
漫画家がここまで全面的に開発に加わり、その個性を存分に発揮したソフトっていうのも、他にはなかったです。
まぁPCゲーならあるのですが、CSのADVでは皆無でしょうね。
そういう意味でも、非常に価値のあるソフトだったのではないでしょうか。
他業種のクリエイターが積極的に関わっていくということで、マルチメディア時代の象徴的作品でもあり、それが本作の一番の意義なのでしょうね。

<感想>

ある日、主人公の吉沢弓美は登校途中に、
学校の体育館から出現した謎の光る物体に遭遇します。
他方で、体育館にはお化けが出現するという噂が流れており、
松崎真一はそのお化けが出現したという噂を取材することになります。
弓美が見たユニコーンの夢の謎も絡みつつ、
弓美たちは学校で起こった事件の収拾に立ち上がることになるのです。

ストーリーは主人公・吉沢弓美が体験する不思議な物語って内容であり、
少女漫画+SFって雰囲気の、
ありそうでない独特の雰囲気を持った作品でした。
特にゲームのストーリーとしては、異彩を放っていましたね。
『ゆみみみっくす』をやったことで、
この独特の竹本ワールドに、はまった人も多いのではないでしょうか。
何か妙に惹きつけられるんですよね~、あの雰囲気には。

<評価>

総合でも名作といえるでしょう。

本作は一応、サターンやWIN版も発売されているので、今更メガCDはハードルが高いって人でも遊ぶ手段は残されています。
移植版だと何故か興が削がれるというか、いまいち私は楽しみきれない傾向があるのですが、私だけかもしれないのでね。
普通の人は、本作は入手しやすいので構わないのかなと思います。

動画の画質等は今ではキツイものもあるかもしれませんが、竹本ワールドの雰囲気が存分に味わえる作品であり、ゲームでは他にない雰囲気の作品でもありますので、竹本ファンはもちろんのこと、そうでない人にも薦めたい一本ですね。

ランク:A-(名作)


ゆみみみっくす
ゆみみみっくす リミックス

Last Updated on 2024-09-19 by katan

コメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    2000年代以降、国産ADVはインタラクティブムービーが定着せずにガラパゴス化していきましたね。
    個人的には、常に立ち絵がプレイヤー側を向いているという設計から見直した方がいいと思うんですけどね。
    遠近法や動きに関しては少しずつ改善されてきていますが、どうも一人称視点から抜け出せていないような。アニメのバンクのように、横向き立ち絵みたいなのはもっと増えていいと思います。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > NNN臨時速報さん
    やるドラとか好きだったのですが、なくなっていきましたね。
    お金がないと、やっぱり難しいのかなぁ。
    ノベルゲーで、パッと思いついたのが『や・く・そ・く』(1997年)なのですが、横向きやら遠近感の表現やら、工夫している作品も探せばあるんですよね。
    『ORATORIO ~海より青い夏の彼方で~』(2004年)なんかも、凄いことやっていると思いますし。
    でも、ユーザーがそれに気が付いて評価してあげないと、手法として定着しないんですよね。
    だから私は、別にマイナーゲーが好きなわけでもないのですが、そんなの関係なしに、有名無名問わず、トータル的なゲームデザインを意識した作品は、評価して紹介したくなるんですよね。

  3. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >katanさん
    お金がないというのは、技術が乏しく機材の高かった昔なら通じますが、今ではただの言い訳だと思います。
    Youtubeでは小規模会社のWebアニメが流行していますし、電子書籍業界ではモーションコミックなるものも出てきていますから。
    プレイヤーと主人公の視点を完全に切り離し、各キャラの立ち絵(前・後ろ、前斜め横・横・後ろ斜め横とその左右反転)に表情差分、目パチ口パク髪靡き姿勢の動きなどを加えるだけでも大分違います。
    また、新たなポーズも左右反転や影の塗り直し、表情を変える程度でバンクを使い回すことも可能です。
    あとはスクロールやズームイン/アウト、背景、オブジェクト、エフェクト、細かいモーション、漫符(これは賛否両論ありますが)などを上手く使いこなせば、多少作画の粗いアニメであれば1~2クール分なんて余裕で作れますよ。
    これからは3DCGの時代だ!ってみんな言いますけど、ぶっちゃけ3Dじゃ海外のグラフィックには到底及びませんし、現時点ではコスト的にも現実的ではありません。それなら、日本の得意分野である2Dを洗練させていくという方向も全然アリだと思います。

  4. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > NNN臨時速報さん
    まぁ、主人公がプレイヤーの分身でないノベルゲーが登場してからも、かなり経ちますからね。
    さっさと視点を切り離せとは思いますよね。
    あとは、私はゲーム業界の人間ではないですから、できることと言えば、そういう部分をしっかりと作ってくれた作品を評価し、紹介することくらいですかね。

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