『XENON ~夢幻の肢体~』は1994年にPC-98用として、シーズウェアから発売されました。
『DESIRE』『EVE』『YU-NO』でお馴染みの、剣乃ゆきひろさんの作品ですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
商品説明・・・
前代未聞のパラレルサイコアドベンチャー!
このゲームには、全く異なる世界、異なる時代、異なる人物の物語が入っています。
しかしこれは凡庸なオムニバスでは有り得ません。
プレイする度に、異なったストーリーがあなたの前に現れてきます。
2つの世界が巧みに融合し、サウンドノベライズとマルチストーリーの楽しみも十分味わえるのです。
このサイコワールドへ、あなたはきっと誘い来まれてしまうでしょう。
上記のとおり、本作にはシナリオが複数用意されていて、それぞれシリアス・コメディ・エロと異なる内容でした。
<感想>
本作の特徴として挙げられるのは、異なるシナリオによって、登場人物が役割を替えながら出てくることですね。
剣乃さんという人は、複数のストーリーの見せ方について、いろいろ模索していたように思われます。
『DESIRE』ではマルチサイトにより、複数の視点から1つの物語を見ることで、多角的に物語を構築しようとしました。
『EVE』では、『DESIRE』でオマケだった切り替えるというザッピング要素を、もっとゲーム内に取り込んできました。
これによって複数のストーリーの関連性を更に強めつつ、ゲーム性を高めてきたわけです。
本作は、『DESIRE』と『EVE』の間に発売された作品です。
『DESIRE』は1つの物語を複数の人物でって感じでしたが、本作は複数の物語を同一人物でって感じで、逆の方向性を進んだ作品といえるのでしょう。
エンディングがマルチエンディングなのも、『DESIRE』と対照的でした。
すなわち、『EVE』が『DESIRE』の理念を継承した作品だとすれば、『XENON』は枝分かれし、『DESIRE』とは異なる可能性を求めた作品と言えるでしょう。
ちなみに、『YU-NO』は1人の視点で結末も1つだけど、その経過が複数に渡っていました。
すなわち、『DESIRE』や『EVE』の派生版的側面を有していて、同時にライターの主張が弱くなるというマルチEDに対する、アンチテーゼ的作品だったのです。
もっともその『YU-NO』にしても、ある意味『XENON』と対照的な方向を選んだ作品とも言えるわけです。
PC98時代の剣乃作品というと上記の3本の名前ばかりが有名ですが、一連の剣乃さんの試みという観点からは、本作もはずすことは出来ないんですよね。
ファンならぜひやってみるべき作品だと思います。
とはいえ、じゃあ本作も上記3作に並ぶ傑作かと言うと、必ずしもそうでもないのでしょう。
代表作3本より知名度が劣るのも、当然ながら理由があるってことです。
本作は最初のシリアスなルートは面白かったのですが、それ以外のパートはイマイチだったわけでして。
エロいパートなんてオマケみたいなもんですしね。
また、面白かったルートにしても、他のルートの影響でボリュームに欠けていました。
どうしても全体的にこじんまりした印象が強かったんです。
<評価>
上記のとおり、全体の評価は代表作3本より劣るのも、仕方ないっちゃぁ仕方ないですね。
しかし、もともとの比較対象が大傑作ですので、数ランク下がるとはいっても、本作自体も十分に名作といえるように思います。
まぁ、今やってもあまり面白く感じられないかもしれませんが、ファンの人は比較するという観点から、今からやってみても良いかと思いますね。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-10-05 by katan
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