『ベイグラントストーリー』は2000年にPS用として、スクウェアから発売されました。
今振り返ってみると、松野泰己さんに最も期待を持てたのが、この時だったように思いますね。
<グラフィック>
コンピューターゲームの歴史というのは、ある面ではグラフィックの進化の歴史でもありました。
PS時代に入りCDが媒体として標準的に使われるようになり、多くのムービーが用いられるようになりました。
演出面を大幅に強化したこの傾向には、「映画的表現」という表現が用いられることもしばしありましたよね。
もっとも、この表現には2通りの意味合いがあったと思います。
1つは単純に、素晴らしい映像・演出が可能になったことへの賛辞。
もう1つは逆に、所詮は映画の猿真似じゃねっていう嘲笑。
私は、CGムービー大好き人間ではありますが、確かに質の悪いCGムービーだらけだったら、批判もやむなしかなとも思ったりもします。
でも、その点はまだ構わないのでしょう。
それ以上に気になっていたのは、仮に映画的表現自体は良いのだとしても、その表現方法がCGムービーしかないのかということでした。
私は天邪鬼で、1つに偏ることが嫌いでしたから。
そのもやもやを一気に解消してくれたのが、この『ベイグラントストーリー』でした。
『ベイグラントストーリー』は緻密なフルポリゴンで描かれており、そこに効果的なカメラワークが存分に用いられていました。
青は藍より出でて~ではないですが、映画を超えた映画的表現とでも言いましょうか。
正直、今更ここまでグラフィックに驚かされるとは思いませんでしたよ。
ゲームを起動した途端、ぐいぐいとゲームに引き込まれたものです。
さて、このゲームのグラフィックにはもう1つの側面があると思います。
そもそも、各ハードには、そのハードの性能を活かしきった作品があります。
そのゲームをやると、あぁこの機種はこういうのだったな~って、すぐに思いだせるようなやつですね。
そして『ベイグラントストーリー』もまた、PSが持つポリゴン性能を最大限まで活かしきったゲームだったと思うのです。
その意味でも、PSを代表する1本だったといえるでしょう。
ちなみに、この年にはPS2も発売されておりまして。
PS2でPSのゲームをやると、一部のゲームは綺麗に映ったんですよ。
PS2の方がポリゴン性能ははるかに上ですから、そういうことも生じるみたいです。
そしてフルポリゴンの本作も、PS2でプレイすると、PSでやるよりもはるかに綺麗に映りました。
PSの魅力を最大限に引き出し、同時に限界も突きつけた一方で、PS2の持つ潜在能力の高さも証明して見せた。
PSとPS2をつなぐ時代の架け橋となったという意味においても、本作の持つ意味合いは大きかったのではないでしょうか。
<感想>
本作のストーリーを手がけるのは『タクティクスオウガ』(TO)や、『ファイナルファンタジータクティクス』(FFT)で有名な松野泰己さんでした。
本作も雰囲気の良さは相変わらず抜群ですが、TOやFFTと違って短めの小粒なストーリーになっております。
そのためTOやFFTのような重厚長大な物語を期待していた人には、本作は少し物足りなかったかもしれません。
私自身もその一人で、ある程度予測はしていたけれど、やっぱりかと思ったものでした。
ただ、TOやFFTもだれる一面もありましたし、後のFF12の惨状を見てるとね。。。
松野さんは、本質的には長編製作に向いていないのかなとも思ったり。
このくらいの規模の作品で、キラリとセンスの良さを匂わせて、もっと堪能させてくれよってユーザーを焦らせるくらいが、一番合っているのかもしれませんね。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルはリアルタイムRPGとなるでしょうか。
画面を見るとバイオとかみたいなアクションADVっぽいのですが、私がクリアできたくらいですし、アクション部分に関して、特に指先のテクニックは要しないと言えるでしょう。
したがって、あくまでもリアルタイムのゲームと認識した方が良いでしょうね。
また、本作には成長要素もありますので、やっぱりRPGの表現が合うと思います。
RPGのパーティ戦闘しか知らないと違和感があるかもですが、むしろダンマスとかの昔のRPGを髣髴させる感じでしたね。
このゲーム、とにかく難しいって言われます。
確かに難しいです。
戦闘も難しいし、途中のパズル要素も慣れない人には難しいでしょう。
ただ、パズルには理不尽な面はなかったし、MYST系ADVに比べれば易しいですしね。
どう感じるかはその人のゲーム経験次第な気もします。
戦闘に関しても、レベルさえ上げれば万事OKな作りではないので、そういうのに慣れきっちゃうと辛いでしょう。
でも、敵の弱点をつくことを心がければ、案外すんなりいけます。
このゲームはリアルタイムゲームですからね。
私のようなアクション下手は頭を使って、SLGを攻略するような感覚で、敵の弱点をついていけばクリアできます。
逆に考えるのは苦手だけど指先の技術には自信があるぜって人は、リアルタイムであることを存分に活かしてテクニックで敵を翻弄するって方法も出来るでしょう。
もちろん頭と指先の両方をフルに活動させて、敵を翻弄しながら弱点をつければ、よりクリアは楽になるでしょうし。
一見難しいと思われている本作ですが、プレイする人の得意とする手段によって様々な攻略方法が考えられるのです。
こうした点は高く評価されて然るべきでしょう。
<評価>
大作を期待してたプレイ当初は小粒感が気にもなりましたが、松野さんの持つセンスの良さのみが凝縮されたという点では、実はこの作品こそが一番だったのかもしれませんね。
総合でも文句なしに名作といえるでしょう。
小さな舞台で奮闘している人を見ると、もっと大きな舞台で活躍するところを見てみたい、もっと大きな武器を与えればどれだけ活躍するのだろうかと期待してしまいます。
クエストからスクウェアという大きな会社に移籍した松野さんは、この『ベイグラントストーリー』で大きな可能性を見せつけました。
ベイグラのクリア時には、このセンスと技術でFFのような大作を作ったら、一体どれだけの大傑作が生まれるのかと非常に期待したものですが、中々上手くいかないものですね。。。
まぁ後の話はともかくとして、本作自体は非常に優れた作品でした。
ランク:AA-(傑作)

Last Updated on 2025-01-22 by katan



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