『追跡者 ~ストーカー~』は1997年にWIN用として、にくきゅうから発売されました。
移動式のADVをアダルトゲームらしくアレンジした、にくきゅうらしい作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはマップ上を移動させるタイプのADVになります。
あらすじ・・・
主人公・シンヤは穂坂恵にひとめ惚れするが、内気な彼は告白できず恵のストーカーと化す。
その行為を恵の親友に咎められた時、彼の別人格であるタクヤとトウヤが出現。
彼らは恵を守ろうとする女の子たちを次々と襲っていく…。
<感想>
90年代後半、時代が次第にノベルゲームへと移行していく中で、新規ブランドであるにもかかわらず、時代に逆行するかのようにゲーム性にこだわったブランドがありました。
それが「にくきゅう」でした。
ゲーム性にこだわったといっても、それだけであれば、そのような新規のブランドは今日でも幾つかあります。
でも、コンシューマーのゲームにエロをつけただけのような、容易に両者を切り離せてしまうしまうものは、何か違うよなって思ってしまうわけでして。
それでも、ノベル全盛時代にあっては貴重なのでしょうが、やっぱりアダルトゲームならではのゲーム性ってのもあるでしょうし、できればそういうのを追求してもらいたいなって思うのです。
この頃のアリスソフトは、それが出来ている稀有な例だったのですが、そういうブランドは、他にももっともっと増えて欲しいですよね。
そして、にくきゅうというのは、新ブランドでありつつも、アダルトゲームらしいゲーム性を追求したブランドだったのです。
さて、本作はタイトル通りストーカーを扱った作品です。
ちょうど時代的にも、ストーカーが注目されだした頃でしたし、タイムリーな題材でしたね。
本作は、基本的に、同級生タイプのように、マップ上で主人公を直接行動させることになります。
もちろん主人公はストーカーということで、マップ上に表示されたヒロインを追い掛け回すことになります。
時間の概念もありましたし、あちこちでアイテムを取得することで新たな展開にもなりました。
パラメーターで進行度も把握できましたし、ストーカー行為によりヒロインを追い詰めていく過程が、ゲーム性に上手くマッチしていたように思います。
そもそも、このシステム自体も、恋愛ゲームよりもストーカーゲーの方に向いていそうですし、システムとシナリオの融合の観点からも良好と言えますしね。
これこそが「アダルト」な「ゲーム」だと言えるでしょう。
他のメディアでは表現できない内容であり、高く評価されて然るべきだと思います。
他に似たようなプレイ感覚のゲームがない点も好みだったのですが、必ずしも全てが上手くいったわけでもありませんでした。
例えばゲーム部分についても、フラグが厳しすぎて自力コンプがかなり困難な作りでした。
アイデアは良かったのですが、作りこみに問題があったわけですね。
ストーリー的にも、相手を追い詰めていくゲームのわりに、妙に馬鹿ゲーっぽくもあり緊張感に欠けていましたし。
このゲームの評価が世間一般であまり伸びなかったのも、そうした部分に問題があったからなのでしょう。
<評価>
オリジナリティは良いけれどクオリティが伴わなかったということで、総合ではギリギリ良作としておきます。
にくきゅうは、このゲームで有名になったように記憶していますが、後の作品も長所短所が似たような傾向にあります。
つまり、他にはないような作品でアイデアは良いけれど、作り込みがちょっと甘いみたいな感じですね。
そういう点も含めて、本作は、一番にくきゅうらしい、にくきゅうの象徴とも言える作品だったと言えるかもしれません。
決して欠点のない作品ではなかったですが、それでも、こういうゲーム作りの姿勢はとても好ましかったわけでして。
いつかは化けてくれるんじゃないかと期待したくなったブランドだけに、ブランドがなくなってしまったのが非常に惜しく感じたものです。
Last Updated on 2024-05-18 by katan
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