『スカイコード』は2024年にWIN用として、MELLOWから発売されました。
死生観、具体的には希死念慮をテーマとした作品で、演出にも光るところのある作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・”希死念慮”――。
「この世界から、僕の存在が消えてなくなればいいのに」
都内に住む男子学生・『宵宮梯子≪よみやはしご≫』は、学校の花壇に横たわり青空を仰ぎながら、そう願った。
耳に突き刺さる蝉の声も、身を焦がす熱い陽射しも。学生たちの喧噪さえ、遠く聞こえた。
青く、蒼く、碧≪あお≫に惹かれる――静かな、時間だった。
それから1年が経ち、以来不登校になっていた梯子は思い立って家出を決行する。
あの日失った、自分の中の何かを取り戻したくて。
辿り着いたのは、都内に佇≪たたず≫む巨大な廃墟群。
誰にも知られず、縛られず、後も先も考えずにただ毎日を過ごそうと思っていた――のだが。
屋上から見る夜空。月に掛けた梯≪はしご≫のように伸びた鉄塔に、一人の少女が座っていた。
『天使』――そう名乗った彼女の背中には、やせ細った翼が生えていた。半分だけの、翼。
「手伝ってほしいの。私の失くした、羽根探し」
星に願うように、月に愛を誓うように。彼女は、祈るように天≪そら≫に手を伸ばす。
人を救うはずの天使を、救う手伝いをすることになった梯子。
そのために渡された1枚の羽根は、彼に特別な力を与えた。
浮足立って一歩踏み外さなければ出逢わなかった相手と、不思議な羽根を探すことになるとは思いもしなかった。
なんて、物語≪フィクション≫じみた物語≪エピソード≫。
2人の奇妙な共同生活≪はねさがし≫は、宵の訪れと共に始まった。
<感想>
死生観を正面から扱った作品の感想なんてものは、内容に踏み込めば踏み込むほど、ポエムにしかならないように思うわけで。
別に私はポエムを書くつもりもないのですが、ふと思ったことは、このライターは、今までどういう気持ちで作品を作り続けているのだろうなということでした。
エロゲには、様々なジャンルの物語や属性が存在します。
グロやリョナやスカトロ、獣姦等、人によっては吐き気を催すような作品もありますが、でもそれらは、結局のところ性癖でしかありません。
人には理解してもらいにくくても、単なる性癖なので、作っている方は楽しんで作っているのだろうなと思います。
他方で、本作のライターの場合、いつも重いストーリー重視作品を生み出しているわけでして。
もちろん、楽しんで作っているのなら良いのですが、そういう作品ばかり作ってメンタルを削られないのかなと、ふと気になってしまいます。
本作は、作品をプレイした方もメンタルを削られるタイプの作品ですが、作っている方も削られてそうに思ってしまうんですよね。
これが苦にならず楽しめているのであれば、本質的には純文学作家に近いところがあるのかもしれませんね。
さて、余談から入ってしまいましたが、本作は死生観、特に希死念慮という観点から描いた作品になります。
こういう作品ってね、刺さる人には刺さる、刺さらない人には刺さらないという感じで、好き嫌いがはっきり分かれやすいと思います。
同人ゲーとかでも、システム周りは最悪、グラフィックも貧相、演出なにそれってな作品なのに、そのメッセージ性の強さから、そこに魅了されたユーザーが信者になっていくケースは少なからず存在します。
そういったメッセージ性の強い作品を、商業作品のレベルで作り込んだらどうなるでしょうか。
おそらく刺さる人には、より一層刺さるのでしょうし、刺さらない人には、何の影響もないままなのでしょう。
本作は、そんな作品、つまり同人ゲーにありそうな、死生観をテーマにしたメッセージ性の強い作品を優れた商業作品レベルで作ってしまったというものなのです。
グラフィックについては、正直なところ、一枚絵の塗りとかは昔のMORE時代の作品の方が良かったと思いますし、キャラデザも平均的で特別良いとは思いません。
この辺りは、ブランドの前身を知る人ほど、物足りなく感じてしまうでしょう。
また、立ち絵の動きも特に優れているわけではありません。
ただ、それ以外の演出が良かったんですよね。
本作は、随所で実写を用いたり、文字を演出として画面中央に表示させたりすることが多いのが、1つの特徴といえるでしょう。
全体として、技術の押し売りのようなワンパターン演出ではなく、その場面に応じて適切な魅せ方を模索している様子が窺われ、個人的には好印象です。
下の画像のシーンのように、必ずしも技術的には決して難しいことではないかもですが、プレイしていて、思わず唸らされるシーンがいくつかありました。
サウンドについても、本作にはボーカル曲が4曲あります。
本作がいわゆるフルプライス作品より少し安めの価格設定であることもふまえると、これは凄いことですよね。
ヒロインごと、シーンごとにボーカル曲が異なって、相応しい曲が流れた方が、プレイヤーに与えるインパクトが大きいのは当然です。
本作は、要所要所で良い演出がなされつつ、その場面だけのボーカル曲が流れたりするので、刺さる人には奥深くまで刺さっていくわけで、本作が大好きという人の心境も良く分かる作品でしたね。
ちなみに、私個人は、本作がどうのというのではなく、この手のストーリーの作品は刺さらない方ですので、本作をプレイしていて特に何か響いたとか、そういうことはありませんでした。
また、本作については、要所要所での演出等は良いのですが、通常時のグラフィック等は、平均的です。
ストーリー進行が平坦ということもあり、人によっては、途中はだれてくることもあるでしょう。
そしてストーリーの結末にしても、胸糞悪いキャラがいることから、どうにも、もやもやしたものが残ったというプレイヤーも少なからずいると思います。
そうなると、それなりの割合で、本作が好きでないという人が出てきてもおかしくないと思うわけでして。
そのため、どうしても好き嫌い分かれると言わざるをえないように思いますね。
<評価>
上記のとおり、賛否分かれるタイプの作品ですので、合わない人は合いません。
しかし、刺さる人には深く深く刺さるタイプの作品であり、それはテキストがどうのというだけの話でおさまるものではなく、演出等によりメッセージ性が膨れ上がった結果といえるのでしょう。
個人的には、本作のストーリー自体は特に好きでもないのですが、刺さる人には刺さることは理解できますし、そのためにクリエイターが工夫を凝らしたことも理解できますので、これはこれで一つの方向性として良かったということから、総合でも良作とします。
ランク:B-(良作)
DL版
Last Updated on 2024-11-20 by katan
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