書淫、或いは失われた夢の物語。

2000

『書淫、或いは失われた夢の物語。』は2000年にWIN用として、FORCEから発売されました。

何とも素敵なタイトルですよね。
今ではプレミアソフトの代名詞的作品ですが、それに見合った尖り具合の作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

商品紹介・・・ホラー、恋愛、推理、陵辱・・・ ホテルの中で繰り広げられる、幾重の物語。
それらは蜘蛛の糸の様に絡み合い、リンクし、補完しあっています。
一見無関係に見えるこの物語は、《結末を迎えると増える選択肢》から次第にリンクを広めていきます。
やがて二つの物語を進めた時に迎える結末とは――?

『年齢制限ゲーム』でないと、伝えられない言葉があります。
画像だけでは、文章だけでは書ききれない夢と渇望をページに挟んだ、密室型ノベルタイプマルチエンディング・マルチストーリーADV。
それが《書淫、或いは失われた夢の物語。》です。

あらすじ・・・本作は、陵辱の「書淫」と純愛の「失われた夢の物語」の、二つの物語からなる作品です。
「書淫」・・・
連続婦女暴行魔Xが組織からの依頼を受け三人の女性を襲おうとする物語。
しかし組織の介入や不可思議な現象などで、物語はXの考えもしなかった方向に傾いていく……
「失われた夢の物語」・・・
「冬になったら迎えに来ます」の言葉を残してホテルに孤立させられた男女四人の物語。
近づいたり、遠ざかったりする人間関係。
重く冷たい鉄扉が開くとき彼等は何処にいくのだろう……

<ストーリー>

さて、タイトルが良いのは好印象だとしても、肝心なのは当然ながら中身になります。
そして本作における最大の魅力は、ストーリー以外には考えられないでしょう。
むしろ唯一無二の魅力かも・・・

一言で表現するならば、構成の妙となるでしょうか。
叙述トリックを用いたゲームとしては、同じ年に『贖罪の教室』があります。
本作は叙述トリックとはまた違うのでしょうが、全てがつながった時のインパクトというか、衝撃なんかが似ているのですよ。

途中までは全然つながっていなかったのに、最後の最後で分かる人には全部繋がってくる。
それまで、もやがかかっていたような感じだったのに、それが一瞬で消え去ってしまう。
つながりが無かったかに見える断片的な情報が、ある瞬間突然「自分の中」で繋がってくるわけでして。
あの時の瞬間は、今でも忘れられません。
あの快感は、後にも先にも本作でしか味わったことがないです。
そんな、他の作品では絶対味わえないような一瞬の快感、本作はその一点のみの一瞬のキレで勝負する作品と言えるでしょう。

まぁ、何とも説明しにくいところがある作品であり、だからこそ構成の妙という説明になってしまうのかなと。
もう少し噛み砕いて言うならば、とにかくゲームという媒体の中で、ストーリー構成が抜群だったのでしょうね。

小説ではできない、ゲームならではのストーリー構成。
そういう表現があてはまるゲームは、後にも先にもこのゲームだけかもしれません。
まぁ、若干過大表現かもしれませんが、それだけ秀逸だったってことです。

物語の表現方法にはいろんな方法があるでしょう。
小説、漫画、映画、ゲーム・・・
どんな媒体でも表現できる物語もありますが、中にはこの媒体でしかありえないって作品もあります。
ストーリー重視のADVに手を出す人の多くは、ゲームという表現方法に何かしらの可能性を見出してプレイしているはず。
その答えの1つが、ここにあるのではないでしょうか。
ゲームにおけるストーリーの存在意義とか考えちゃう人には、本作は一生物の作品になりうるかもしれないですね。

<感想>

したがって、ある一面ではノベルゲー史上最高とも言える作品なのですが、ゲームってストーリーの構成だけが全てではないですからね。

本作は、ゲームシステムは標準的なノベルゲームで、ストーリーはサスペンス物になります。

ノベルゲームとしては細かいシステム周りは不十分だったし、テキストもそれほど上手いって程でもないでしょう。

また、先ほど構成の妙とは言いましたが、真相がハッキリとテキスト内で明言されるわけではないので、若干分かりにくいことも確かであり、プレイしても伝わらない人には伝わらなかったりします。
誰がプレイしても同じような感動を味わえるわけではないということですね。
実際、私の周りでも良さが全く分らないという人もいましたから。

キャラデザは私の好みではあったのですが、塗りとかも総合的に見てみると、おそらく一般的にはかなり物足りない部類に属するでしょうし。
ぶっちゃけ、何か同人臭が漂ってましたから・・・

また、音声もありません。
まぁ、2000年の作品は音声がないのも多いので、ここはマイナスにはならないですけどね。

結局のところ本作は、ストーリー構成の巧みさというただ1点だけを除いては、並か並以下の出来なんですよね。
終盤に至る前のプレイ中は、平凡な作品にしか思えないですし。

<評価>

だからこそ、評価もスパッと分かれると思います。
文章できちんと説明されるわけではないので、自分の中で全てがつながった人には最高にもなりうるのだけれど、その感覚が来なかった人には、平凡な同人ゲー程度にしか感じられませんから。
私自身は、本作には短所も多数あるけれど、あの自分の中で全部つながった時の快感は何物にも代えられず、その長所が他の短所を少し上回っているなと思ったので、総合でも名作としています。
でも、私と同じ意見を皆が持てるというのではなく、ストーリーの全貌が見えてこなかった人には、良さが理解できないと思います。

このゲームは当初ワゴン行きで安くなってましたが、その後高騰しプレミア状態が続いています。
私なんか、2500円で買って、その後500円で売ってしまったのに、ホント嘘みたいですよね。
その価格の変動状況が、端的にゲーム内容をも示してる気がしますね。
合う人は何万円支払っても惜しくないでしょうし、逆に合わない人は二束三文でもいらないかと思います。
本作は、そういう作品なのです。
だから購入に際しては、もちろんどのゲームについても言える事ではあるのですが、本作は特に自分に合いそうなのかを検討すべきでしょうね。
特にここでの合う合わないというのは、読解力が普通以上であることに加え、集中してプレイできる時間を確保できるかが大きいように思います。

ランク:A-(名作)


書淫、或いは失われた夢の物語
CDソフト書淫、或いは失われた夢の物語。

Last Updated on 2025-01-21 by katan

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