『死体置場で夕食を』は1989年にPC88用として、テクノポリスソフトから発売されました。
赤川次郎原作の同名の小説をゲーム化したものになります。
<概要>
本作は、赤川次郎原作の同名の小説をそのままゲーム化したものなので、小説版のあらすじを掲載させてもらいます。
・・・紺野洋一と芳子の車は新婚旅行の三日目、雪道に迷う。
夜になって突然ロッジが現れ、救われた思いで飛.込んだ二人だったが、それが怪事件に巻込まれる発端だった。
和気藹々の先客六人、好人物そうな主人夫婦、だが……。
奇妙な一夜が明け、誰もいなくなっていたロッジの地下室から絞殺体が発見された。
さらに事件は一つまた一つ死体の数を増しながら進展してゆく!
<感想>
あらすじを見ると、ゲーマー的には、『かまいたちの夜』にそっくりじゃんって感じでしょうか。
もっとも、『かまいたちの夜』が94年の発売で本作が89年ですので、本作の方がずっと早いのですけどね。
まぁ、閉鎖された場所に行き、そこで殺人事件に巻き込まれるのは、ミステリーの一つのパターンですからね。
そういう路線の作品と考えれば良いのでしょう。
ストーリーに関しては原作に準拠していますので、一般的には品質は保証できるのかな・・・?
赤川次郎は当時出せばベストセラーの超人気作家でしたから、ファンも非常に多かったです。
ただ、若干食わず嫌いなところもあったのですが、私はあまり赤川次郎の作品を読まなかったわけでして。
あまり合わなかったんでしょうね。
そのため、本作のストーリーの感想についても普通って印象なのだけれど、ファンだったらまた違った印象になるのかもしれません。
<ゲームデザイン>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
グラフィックは一枚絵の上に、必要に応じてカットインが入るタイプでした。
本作に特色があるとすれば、ゲーム部分になるのでしょう。
本作は章仕立てになっているのですが、『死体置場で夕食を』というタイトルに合わせて、章も「食前酒」とか「オードブル」とか「スープ」という表現になっています。
本作には時間の概念があり、これは行動により時間が経過するタイプでした。
各章に入る際に難易度を選択し、その難易度ごとに決められた設定時間を超えるとゲームオーバーになります。
また、次の章に進むためには、章内でフラグを立てるだけでなく、章の最後にあるチェックで質問に答える必要がありました。
時間制限によりコマンドの総当たりを防ぎ、チェックによりプレイヤーにきちんと考えてもらおうという意図なのでしょう。
加えて、本作には無駄な汎用コマンドがありません。
例えば普通のコマンド選択式に多い、「みる」「きく」「はなす」というようなものはなく、会話はずっとクリックだけで進めることができます。
例えば、「はなす」を3回とか、セリフが変わらなくなるまで何度も試すとか、ハッキリ言って無駄じゃないですか。
用があるなら一度のコマンドで済ませろよと私は思ってしまうのですが。
また、何度も同じコマンドを繰り返すことは、読むことも分断されますしね。
本作も一言で書くと「コマンド選択式」となるのだけれど、コマンド選択式も多様であり、本作はコマンド選択式ADVにありがちな不満に対処していることから、ストレスなくプレイできました。
これら一連の設計の一つ一つから意図が伝わってきますし、ゲームデザインという面からは優秀な作品だと思います。
余談ですが、ゲームジャンルは常に進化するとは限らないのですよ。
特にADVなんてのは、80年代は一般大手ブランドも作っていて、様々に凝った仕様の物もあったのだけれど、90年代以降規模の小さくアダルトゲームが主になって、ゲームの構造的にもシンプルな方に進みますからね。
コマンド選択式にしても、ゲームとして出来が良いのは80年代の方が多いです。
まぁ、有りえないほど出来の悪いのもあったので、玉石混交だったんですけどね。
ただ、マクロな観点でのゲームデザインは良いのだけれど、ミクロな観点からの狭義のゲーム性が、わりと大味だったのかなと。
時間制限とかチェックとか、十分に活かせているとは言えなかったですから。
そのために、せっかくの工夫がこちらに伝わりにくいんですよね。
その辺が、当時のADVの最大手だったENIXとかとの違いなのでしょう。
<評価>
どうにも大味な印象で、ストーリーも含めて、プレイ中には印象の薄い作品でもありました。
でも、よくよく見てみると部分的には凄く考えられてあると思うし、見所もある作品なんですよね。
ランクは佳作としとおきますが、私の場合原作準拠の作品は、原作を知っていると物語を楽しめないということで、1ランク低く考えるものですから。
これが完全オリジナルであれば、良作にしていたかもしれません。
もちろん、原作付でも他の部分が秀でていれば名作足りえるし、実際、本作も少し調整すれば凄く化ける可能性もあったと思うだけに、何だか勿体ない作品でしたね。
ランク:C(佳作)

Last Updated on 2025-05-17 by katan
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