真説・神谷右京 ~象牙の塔~

1997

『真説・神谷右京 ~象牙の塔~』は1997年にWIN用として、ALTACIAから発売されました。

藤堂信昭氏によるセミフィクションシリーズ、真説神谷右京シリーズの4作目になります。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
昭和58年11月1日、貸金業の規制等に関する法律、いわゆるサラ金規制法が施工された。
そして、同法施工に伴うかのように、他殺とも自殺ともつかない形で、債務者が死亡する事件が多発した。
欲望渦巻く都会の闇に消された女。
彼女の無念に突き動かされるかのように右京のたった一人の捜査が始まる。
右京の導こうとした結末、そして右京の選んだ決着のつけ方とは?
そこには、法による断罪の前に、人の心による贖罪があった。

題材事件はシリーズ第2弾『真説 神谷右京2』と同一ですが、内容は全くの別物です。
題材事件の真相をほぼ完全に明らかにし、その解明過程をも余すところ無く描写したのが、この『真説 神谷右京 ~象牙の塔~』です。
・・・・・・今、すべての真実が明かされます。

<感想>

神谷右京シリーズをご存知でしょうか?
TAKERU版時代を含めるとPC98の中期からWIN時代の初期にかけて発売されていたシリーズです。原作者である藤堂信昭さんが弁護士として自分が実際に扱った事件を元に、関係者の了解も得た上でそれをゲーム化したシリーズであります。

ゲーム化ということでフィクション部分もありますが、根本的な部分はノンフィクション、実際にあった話です。
というか、98版は半分がフィクションで、WIN版はほとんどをノンフィクションにしたものになります。
フィクションとノンフィクションの間ということで、セミフィクションって言われてましたっけ。
詳細は過去作の記事で何度も書いてありますので、そちらを読んでください。

本作は、WIN用としては2作目になります。
真説シリーズとしては4作目なのですが、上記のとおり、98時代とWIN時代とでは、事実部分の割合が異なってきます。
そのため、WIN用になった3作目からは、「真・真説」とも呼ばれておりました。
そういう意味では、本作は、真・真説シリーズの2作目になります。

ノンフィクションとしての傾向が強くなったことで、より一層、地味になったとも言えます。
題材が題材だけに、法や正義とは何かという点も当然絡んできます。
最近の泣きゲーのようにあざとく泣きを誘う劇的な展開はありません。
しかし、一つ一つの言葉を噛み締めるほどに、じわじわと心を締め付けられる気がします。
実際にあった事件に対し関与した本人が語るのですから、その説得力も重みもまるで違います。

ちなみに、法律用語とか専門的な話が一杯出てきますからね、馴染みのない人にはテキストが結構難しかったりします。
そう言われると、専門用語についていけるか不安という方もいるかもしれませんが、本作では、親切な試みもなされていまして、右クリックをすると関連情報を見ることができました。
(まぁ、法律用語は解説があってもまだ難しいとの意見もありましたけど。)

グラフィックは実写取り込みの背景に、2Dのキャラが使われていました。
これはこれで上手くマッチしていたとも思いますが、地味さに拍車をかけていたかもしれませんね。

<評価>

総合では良作とします。
題材が真説2と同じであることから、ある意味リメイク的作品であること、真・真説時代になると、ゲームとしての面白さ自体は削がれていること等から、真説2よりは下がるなという判断になります。

とはいえ、地味ではあるけど、本当に素晴らしい作品でした。
大げさな展開や設定のいい加減なゲームが絶賛される今だからこそ、こういう地に足が着いた本物の作品が市場には必要なのだと思います。

しかし、現実には新作は途絶えたまま。
これには萌え路線が主流になるにつれ需要が減っていった事も、きっと大きく影響しているのでしょう。

私自身も派手なストーリーや可愛いキャラ、斬新なシステムを高く評価しがちです。
特にこの当時は流行路線の作品も大好きでしたからね。
そのため、こういう地味だけど本物の作品を評価することも、普及に貢献することもあまりできませんでした。

でも例え少数でも、こういう作品が市場にずっと残っていて欲しかった。
私のような人間が今更そう願うのは身勝手なのかもしれません。
でも何と言われようとも、その気持ちもまた確かなのでして。
予定のままで終わってしまった『象牙の塔』のリメイク。
いつの日か発売されることを待ちたいものですね。

ランク:B(良作)


象牙の塔

Last Updated on 2024-12-08 by katan

コメント

タイトルとURLをコピーしました