MOON.

1997

『MOON.』は1997年にWIN用として、Tactics(タクティクス)から発売されました。

keyのメンバーがTacticsに在籍していた頃に制作した作品であり、原点とも言える作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系のADVになります。
なお、移動は簡易マップから移動させるタイプになります。

あらすじ・・・
長い間、傍に居なかった母が帰ってきた。
宗教集団FARGOの隔離施設へ行ったきり、永らく逢う事が無かった母が帰ってきた。
母との幸せな生活がおくれると思った矢先、母が謎の死を遂げる。
何故母は死んだのか。
彼女が最後にいた宗団の施設で、いったい何が行われていたのか。
母の怪死の理由を突き止めるべく、天沢郁未は単身、FARGOの隔離施設へと向かう。
そして、その中で出会う2人の仲間。
固い信念を持ち、義兄を連れ戻しに施設に入った少女、巳間晴香。
無邪気な笑顔の裏に陰惨な過去を秘めていた少女、名倉由依。
徐々に真実に近づくにつれて、明らかになる『不可視の力』の存在。
繰り返される悲劇。過酷な現実。
その先にある「真実」とは、果たして何か。
そして、彼女達の運命は・・・?

<感想>

後のkeyメンバーによる、Tactics時代の作品になります。
麻枝さんの作品の中でも本作を最も高く評価する人も結構いた一方で、本作のようなダーク路線は売れ筋とは異なっていたこともあり、この頃はまだ、知る人ぞ知る名作といった扱いだったでしょうか。
時系列的には次の『ONE』が口コミで人気が高まっていき、『Kanon』で一気にブレイクしたという感じでしたから。

さて、ダークな雰囲気をまとった本作は、一見すると後のkey作品と方向性が異なるように見えます。
しかし、切り口が異なるだけとも言え、家族愛を扱っている点などを見ると、後のkey作品に通じるものがあります。

また、本作は狂気も扱っているのですが、これも後のkey作品にときおり見られる異質な世界観を、更に尖らせたものと捉えることが出来ます。

つまり後のkey作品のエッセンスの多くは、ここに詰まっているんですね。
まさにkeyの原典はここにありって感じでしょうか。
まぁ、厳密に言えば麻枝さんの色が強いってことなんですけどね。
そういう意味ではkeyファンや麻枝さんのファンならば、ぜひともやってみて欲しい作品とも言えます。

ただ、こういうのは難しい面もあるんですよね。
というのも、keyは少しずつ魅せ方を変えてきてはいるものの、結局同じようなことを延々とやっているわけです。
昔は好きだったのに今のkey作品はそれ程でもないとか、『MOON.』こそ最高っていう人は、大体が同じことの繰り返しに飽きてしまっているわけです。
だから、新作をやってもあまり楽しめなくなってきていると。

しかし、これを逆の方向から見てみると、つまり最近のkey作品でファンになった人が本作をプレイした場合、同じような題材であるがゆえに新鮮さはあまり感じられないでしょう。
(こっちが先なので本当は本末転倒なのですが・・・)
また、古い分だけ荒削りなために、劣って見えてしまうのではないでしょうか。
そのため、基本的にkeyファンにオススメではあるものの、ゲームの評価を今の基準から今やって楽しいかで判断する人は、手を出さない方が賢明なのかもしれません。
まぁ、私はゲームは発売時の基準で判断すべきと考えますから、本作は例えばリトバスよりも高く評価していますけどね。

<グラフィック>

さて、本作をプレイしていると他にも見えてきます。
家族愛や狂気とかに目を奪われがちですが、実は結構エロかったです。
グラフィックもテキストもね。
テキストに関しては『CLANNAD』でも片鱗は見せていますけど、本作を見てみると、CGだって馬鹿にしたもんじゃないのです。

『ONE』以降はエロさが薄くなってしまい、中にはkeyの作品にエロは不要だと言う人もいます。
でも、keyもやろうと思えばエロく出来るんですよね。
本作にある物の中で、後のkey作品で最も失われた部分でもありますので、そういう意味でも意義が大きいように思います。

<ゲームデザイン>

また、ストーリーが施設に潜入するということもあって、システム的にはRPGのダンジョンのように、自分で移動させるタイプのADVになります。

後のkey作品でも、ちょっとしたゲーム要素を入れたり、分岐にこだわった作品があったりしますよね。
keyって、ノベルゲーで有名になったのは確かなのだけれど、単に読むだけのノベルありきなのではなく、ゲームとしての何かを加えようとする姿勢も結構見られるんですよね。
その片鱗も、この時点で既に見受けられます。

ただ、ゲームとしての工夫も盛り込もうという姿勢は好きなのですが、練り込みは甘かったですね。
このストーリーにこのシステムは相性は良いと思うので、目の付け所は良かったと思います。
ここに例えば『慟哭』並のトラップでも用意されていたら、きっと大化けしたでしょうね。
それがないものだから、人によってはただ面倒に見えてしまうのでしょう。
姿勢は応援したいだけに、勿体無かったですね。

<評価>

かように、いろんな要素が詰め込まれている本作。
中にはこれこそがkey関連の作品の最高傑作だと言う人がいますが、それも十分に分かるような気がします。
もっとも、いろいろ詰め込まれているわりにはボリュームはさほどでなく、必然的に荒削りな作品にもなっています。
私も名作だとは思うものの、傑作には至らないと考えたのも、その辺りが理由になります。

当時はダーク系と分類されたジャンルをベースに、そこにプラスアルファとして、キャラの心象風景であるとか、深層心理の掘り下げを加え、結果として麻枝さんの魅力が存分に込められた本作。
最高傑作と考えるかどうかは別として、keyの原典であることは間違いないのでしょう。
そのため、ファンであるならば、ぜひともおさえておきたい作品といえるでしょうね。

ランク:A(名作)

MOON. For Windows XP/Vista/7

Last Updated on 2025-01-15 by katan

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