学園ハーレム!!

1998

『学園ハーレム!!』は1998年にWIN用として、エムズから発売されました。

恋愛とは異なる純愛としての方向性の模索となるのでしょうか。
タイトルの反対のような作品でした。

<概要>

高校卒業を目前に控えていた主人公は、理事長である父親が急死したことから、学校経営も含め莫大な財産を相続することになります。

そこで玉の輿を狙う女生徒たちが続出し、相思相愛の彼女がいる主人公は女生徒達の魔の手から逃れるべく、学園内を逃げ回ることになります。

このような設定もあり、ジャンルも移動場所を選択するタイプのADVになります。

<感想>

言葉の使い分けは難しいもので、私も定義が定まっているようなものならきちんと使うようにしたいと思うものの、人によって内容が異なるものに関しては、わりとアバウトだったりします。
口説いてHして終わりのナンパゲーと、一人の女性への想いを貫く純愛ゲーとでは区別も容易かもしれませんが、中間的な恋愛ゲーなどもありますし、完全に区別できる人はいないのでしょう。

ナンパゲーも純愛ゲーも恋愛ゲーも80年代から存在はするのですが、数の多さという意味での主流に関しては、ナンパゲーから次第に恋愛要素も含んだ恋愛ゲーへと変遷してきたのでしょう。
先ほど純愛ゲーは80年代からあったと書きましたが、それは一人の女性への愛が試されるという内容を伴った作品があったということであり、当時から名付けられていたわけではありません。
言葉として純愛ゲーという表現を聞く頻度が高まりだしたのは、大体98年辺りなのかなと思います。

恋愛ゲーが多数普及することで、ユーザーはとっかえひっかえヒロインを攻略するようになりました。
ナンパゲーの場合には口説いてHするのが目的ですから、いろんなヒロインに手を出すことに疑問を抱く人は少なかったでしょう。
しかし、ヒロインに個性が生まれストーリー性が高まり恋愛としての色が強くなると、いろんなヒロインに次々と手を出すことに疑問も出てきます。
95年頃から急激に恋愛ゲーが増えることで、そのような疑問を抱く人も増えたのではないでしょうか。
当然その意識は作り手側にも生まれるものであり、恋愛ゲーの新しい方向性として、特定のヒロインへの愛を貫く純愛ゲーと呼ぶのに相応しいゲームが、98年には幾つか生まれてきます。
『With You』は10人以上のヒロインがいる作品も多かったこの時代にあって、あえてヒロインを2人だけにし、どちらとの愛を貫くかを選択させられました。
一人への愛という点では『デアボリカ』もそうだし、『My Girl』や『WHITE ALBUM』では最初から彼女が存在しました。
歪んだ形であるものの『SSD』も鬼畜路線にもかかわらず純愛ゲーと言われました。
『Natural』なんかもそうですし、アプローチの形は違えど、一人の女性に対する愛の貫き方という側面に注目が寄せられたのが、98年だったように思います。
そういう意味では、実に98年らしい作品が本作だったのでしょう。

ナンパゲーは、振り向いてくれない女性を自分の方に向かせるものです。
昔は異常に難易度の高いゲームもありましたし、攻略できればラッキー、できないのも普通という感じでもありました。
そのような時代ならば、ナンパが成功すればラッキーというのも、それはそれでマッチしていたのだと思います。

しかし、攻略するノウハウの蓄積や、情報を共有する環境が整い始めることで、ヒロインは攻略されて当たり前という存在になりました。
当初は主人公がヒロインに猛烈にアタックをし、玉砕と成功を繰り返していたものの、それがアタックして成功することが当然のように思われだしたわけですね。

今までと同じ路線では通用しなくなりだした場合にどうすべきなのか。
1つはアタックによる成功することを前提に、その成功する過程に描かれる「物語そのもの」を楽しませようという方法があるでしょう。
いわゆるシナリオ重視で、98年では『ONE』などが挙げられるでしょうか。

他方で、主人公が追いかけヒロインに跳ね返される従来の構図を、逆にひっくり返してしまえというのもあるのでしょう。
かつて難攻不落であったヒロインは、決して難攻不落ではなくなった。
ヒロインの側に壁を作れないのなら、主人公の側に壁を作れば良いと。
本作はそのような作品であり、主人公には想う相手がいてその想いを貫きたいという壁があるのだけれど、女生徒たちの甘い魔の手により攻略されてしまう可能性があると。

学園ハーレムとはハーレムを目指す作品なのではなく、ハーレムのような攻略可能な女性たちに囲まれた状況の中から、意中の一人への想いを貫く純愛ゲーなのです。

<ゲームデザイン>

このような内容ということで、ジャンルは移動場所を選択するタイプのADVです。
あちこち移動して、女性陣の甘い誘惑から逃げ回るわけですね。
女性は全部で10人で、組み合わせの関係でENDは11個あります。
何度も会っていると襲われたり関係を持ってしまうので、意中のヒロイン以外からは逃げ回るという、いわば逃走ゲーになります。

これが基本で、逃げ回るだけでENDを迎えられるヒロインもいます。
また本作は誰かとのハッピーエンドを迎えると、システムレベルが上がり期間が伸びます。
期間が伸びることでクリアできるようになるヒロインもいます。

人の遊び方はそれぞれですから、期間が伸びることで途中までなら同時進行も可能だとは思います。
ただ難易度はかなり高いので、やっぱり1人に絞った方が良いのでしょうけれど。

また、全員をクリアすると、オマケでハーレムルートが登場します。
オマケなので本編ではないのですが、ハーレムゲーと思ったら違ってた~って批判回避にはなりますし、散々逃げ回った後なので、これはこれで気分転換に良かったのかなと。

もう1つ加えるならば、90年代半ばのいわゆる同級生系の作品たちは、プレイヤーが自由に主人公を移動させるものでした。
当初は自由度が特徴でもあったのですが、次第にストーリー性が高まりフラグ管理が厳しくなることにより、自由は建前上のものでしかなくなり、段々と意中のヒロインのストーカーになるようなシステムに近づいていきました。
まぁそのシステム的特徴を利用し、97年には『追跡者 ~ストーカー~』なんて作品も出てきたのですけれど。
本作はそういう部分も逆手に取ったと言えるのかもしれませんね。
これまではストーキングし追いかける立場だったのだけれど、今度は追いかけられる立場だということで。

<評価>

恋愛ゲーの在り方や移動式ゲーの在り方につき分岐点が来ていた時期だけに、こういう発想は十分にありだったように思います。
その点には非常に共感できたのですが、肝心な作り込みはイマイチだったのかなと。
ストーリーは平凡だし、難易度の高さも時代遅れになりつつありましたし。

世間一般の認識的なものから考えますと、PCの普及率が上がっていった時期だけにいろいろややこしいわけでして。
古い雑誌なんか読んでいますと、96年の時点で恋愛ゲーのパターンは出尽くした、今後は新しい方向を開拓しなければ先がないみたいに書いてあるわけでして。
私はそこまで先が暗いとは思わなかったのですが、95・96と急激に増えた恋愛ゲーを散々やっていると、そういう風に感じてしまうこともあるかなと、理解はできます。
他方で97年の某ゲームから恋愛ゲームが始まったみたいに言い出す輩もいて、ネットの未発達などもあり各々が自分中心に語ってしまっていたわけですね。
行き詰った恋愛ゲーの次の段階を模索していた人には、本作のような作品は何かしらのきっかけにはなりえたのでしょう。
しかし新規に入ってきて始めたばかり故に売れ筋の恋愛ゲーが楽しく、行き詰まりも何も考えていなかったよという人の方が、PCの普及していった時期だけに数的にも多かったように思うわけで、それで注目されにくいってのもあったかもしれませんね。
かように時期的に早く注目されにくくもあり、本作自身も意欲は評価できても完成度が伴いきれていないことから、方向性としては芽の段階でしかなかったのかもしれません。

そしてコンシューマーはPCより1~2年くらい遅れていたりしたものですが、後に本作のような発想・路線を上手く昇華させた名作が、翌99年に発売された、知る人ぞ知るPSの『キャプテン・ラヴ』なのでしょう。
『キャプテン・ラヴ』をプレイして不満を言う人はほとんど見たことないですが(ヒロインの声には不満しか聞いたことがないですがw)、プレイした人の絶賛ぶりとは反対に、ゲーム自体はマイナーでしたからね。
こちらは独自性だけでなく完成度を伴ったから長く名が残ったし、純愛ゲーとは何ぞやと先端を進んでいた人のアンテナにはひっかかったのでしょう。
でも売れ筋の恋愛ゲーが楽しいって新規層にはまだ注目されにくいままだったので、マイナーであることまでは解消されなかったと。

というわけで、時代背景を基に深く考え出せばいろいろ出てきそうですが、細かい操作性なども含めますと本作自体はそれほど面白いものでもないのでね、出来自体なら佳作ぐらいなのかなと。
でも、評価はともかくとして、こういう作品は主観的には好きですけどね。

特定の作品の説明の中に他の作品の名を挙げると、どうしても不快に感じてしまう人が出てきますので、その点は少し反省しています。
ただ、物事はいろいろつながっているわけでして。
だから私は発売された年とかが気になりやすいのですけどね。
今回扱ったような方向性から語るのを最近はあまり見かけなくなったように思うし、時間がないので私はやりませんが、誰かが上手く流れをまとめてくれると良いのですけどね。

ランク:C(佳作)


学園ハーレム

Last Updated on 2024-12-28 by katan

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