『螺旋回廊』は2000年にWIN用として、rufから発売されました。
この年の鬼畜系を代表する作品として有名な作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・佐伯祐司は、大学で助教授として教鞭を振るっている。
最近、教え子の一人、水代葵の強い勧めでパソコンを買ったものの、うまく使いこなせず、ことにインターネットに関しては素人同然だ。
ある日、教えてもらった葵のHPを見ようとインターネットに接続すると、たどり着いたのはEDENと名乗るHPだった。
そこは、女性を拉致監禁、強姦をなんとも思わない、そしてなんの罪悪感もない者達の『楽園』だったのである。
そして、彼らはユカリと名乗る者の依頼によって、恐ろしい『遊び』を始めようとしていた…。
顔も名前も知らない相手とのコミュニケーション。
一方的に垂流される情報。ネット上で、当たり前の様に見られる、そんな奇妙な人間関係。
もしも、そんなネット上に、あなたや、あなたの身近な女性達の情報が、他人の手によって公開されていたら、あなたはどう感じますか?
そして、さらに姿の分からない凌辱者達の脅威が、大切な人達の背後に忍び寄っているとしたら……。
<感想>
ゲームにおける物語のジャンルとして、いわゆる「鬼畜系」があります。
鬼畜系のゼロ年代前半の代表作を何本か挙げろと言われた場合、多くの人がこの作品の名前を挙げるのではないでしょうか。
本作は、20年以上前の作品ですので、今はもう知らない人も増えているかもしれません。
ただ、鬼畜ゲームが脚光を浴びだした2000年頃では、おそらく一番知名度があった作品だったかと思います。
鬼畜ゲーというジャンルを代表する1本として有名な作品ですので、鬼畜系が好きだけどまだ未プレイという人は、今でも検討する価値のある作品といえるでしょう。
ただ、世間一般の評価はそれはそれで良いとしても、個人的に本作が名作かと聞かれると、少し首を傾げたくなるわけでして。
というのも、物語の展開というか雰囲気というかが、こちらに安易に伝わっちゃうのですよ。
ゲームを購入するとき、当然裏パッケージも見るはずです。
鬼畜系なので、そこに掲載されているCGだけで、引く人は引くかと思います。
逆に私のように、これは期待できるかもと思って購入する人もいるでしょうが、その際の、こんな感じかなというイメージそのまんまなんですよね。
つまり、意外性がないというか、予想の範囲内で全てが進行していくのです。
だから、良くは出来ているのかもしれませんが、イマイチ熱中しきれなかったのです。
本作はネット社会に潜む闇の部分や怖さをテーマにしています。
そのため、鬼畜の方向性としては、肉体に対する鬼畜な行為を描くよりも、精神的怖さや痛さを追求した方が効果的といえるでしょう。
しかし、問題はその描写で、ライターが、おそらく健全な精神の持ち主なのでしょうね。
まぁ、それは人としては良いことなのですが、作品としては常人が背伸びして書いたようで、精神面に対する描写がぬるく、少なくとも私には物足りませんでした。
CGで肉体的な鬼畜描写があるので、それで誤魔化された感じなんですよね。
しかも、そのCGにしても予想の範疇でおさまってしまいますし。
また、鬼畜系というと、ついエロさもあるように思ってしまうかもしれません。
しかし、両者は本来、別物です。
鬼畜ゲーと抜きゲーって、基本的に方向性が異なるのです。
本作は、確かに鬼畜ゲーではあるけれど、決してエロの濃いゲームではありません。
したがって、エロさを期待して購入してしまうと、期待はずれに終わる可能性も大きいでしょう。
それでも、ここまでなら良作相当の内容はあるのでしょう。
今ではすっかり身近で当り前な存在になったネットも、本作発売時にはまだアングラっぽさや怖さも漂わせており、その点をアダルトゲームの題材にしたこと自体は良かったと思いますし。
本作の場合、むしろもう一つの問題点の方が、私には大きかったです。
具体的に言いますと、多くのアダルトゲームの主人公が高校生なのに対して、本作の主人公は大学の助教授(今でいう准教授)という設定です。
つまり、大人であり社会人なのです。
たとえば、主人公が何かしらの行動するとして、時にはおかしな行動もあるでしょう。
とはいえ、それが高校生のとった行動ならば、未成年の頃の若者であるがゆえの青臭い行動と考えることもできます。
自分が高校生の頃を思い出してみると、ほんとに大したことは出来ないと思いますからね。
ただ、これが社会人となると話は別です。
同じ場面に境遇したとしても、高校生と社会人が同じ行動をとったり、同じような思考に陥ってはリアリティが欠けてしまいます。
社会人なら社会人として、それなりに経験を積んでいるはずですからね。
その微妙な違いを上手く表現できて初めて、リアリティも生まれてくると思います。
本作の場合も、仮に主人公が高校生だったなば、私はおそらく何も気にしなかったでしょう。
しかし、本作の主人公は大学の助教授です。
私には、彼の行動が、あたかも未成年者の行動のようにみえ、あまりにも稚拙に思えました。
確かに今と違って、まだネットが普及しきってはいない時代です。
ネットへの免疫は現在ほどではなく、その分は差し引いて考える必要はあるでしょう。
(余談ですが、その意味で本作はこの時代を知らないと理解し難い作品で、ネットが当たり前の世代には、良さが伝わりにくいのではないかと思います。)
でも、それを考慮したとしても、やはりどうにもその部分が引っかかってしまったのです。
それ故、本作にリアリティを感じられず、ストーリーそのものが滑稽に見えてしまいました。
この手の鬼畜さや怖さを扱ったゲームで物語が滑稽に思えてしまったら、もうその時点で作品としては終わっているようなものでしょう。
これはプレイをした年代にもよるかもしれませんね。
一応アダルトゲームである以上、18歳以上でなければプレイできません。
となると、大学生に相当する年齢以上なのが通常でしょう。
もっとも、当然ではありますが、大学に入ったからといって急に変わるわけではありません。
仮に私が大学1年とかの頃にプレイしていたならば、何の違和感も感じずに絶賛していたかもしれません。
その頃は、まだ感覚的には高校生の延長でしたからね。
ただ、本作の主人公の言動は、プレイする側が年を経るにつれ違和感が大きくなるのです。
そして、私は違和感を覚えてしまった。
そのため、どうしてもその部分を看過できないのです。
古い作品を美化する思い出補正という言葉がありますが、この手の作品はむしろ逆ですね。
年がたつごとに、評価が低くなっていく類の作品だと思います。
<評価>
総合では佳作とします。
まぁ、鬼畜系のノベルゲーって、最近は抜きゲーばかりになってしまい、ストーリーでも楽しめるものって、ほとんどなくなりました。
本作のように鬼畜系でストーリーもそれなりに楽しめて、なおかつCGもちゃんとあるのって、かなり少ないですからね。
最近の作品は、どんどんストーリーが弱くなっていってますし、そういうのを求めるならこの当時の方が良いのがあったりもします。
そう考えると、本作は普通に楽しめる貴重な1本ではあるのでしょう。
あくまでも、期待しすぎるなってことですね。
そのため、冒頭の話に戻ってしまいますが、鬼畜系が好きならば、やっぱり試す価値のある1本とは言えるのでしょう。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2024-07-18 by katan
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