『ランス3 -リーザス陥落-』は1991年にPC98用として、アリスソフトから発売されました。
今ではアリスの看板タイトルとなったランスシリーズ。
その基礎を築いたのが本作といえるのでしょう。
<概要>
ゲームジャンルはタクティカルコンバットタイプのRPGになります
あらすじ・・・
勝てば官軍、負ければ賊軍、笑う門には鬼畜あり!!
2度あることは、3度ある。
世間の非難を受け鬼畜戦士ランスがまたやってきた。
今回の目的は、ヘルマン軍に占領されたリーザス王国を助ける事です。
正義とHの為なら手段を選ばないランス君と助手のシイルちゃんの大冒険。
ちなみに、本作は91年にオリジナル版が発売され、その後『アリスの館4・5・6』に付属という形でWIN用に移植されましたが、現在はフリーで遊べるようです。
<ゲームデザイン>
さて、本作はフィールドタイプのRPGとされてはいるものの、マップ自体は簡易移動式なので、どちらかというとダンジョンRPGに近いイメージでしょうか。
戦闘はタクティカルコンバットシステムになります。
移動していって戦うタイプで、イメージ的にはS・RPGに近いタイプですね。
ただ、見た目が似てるだけであって、RPGということもあり戦闘の難易度はかなり低めでした。
戦闘の出来自体は水準を保っているとは思うものの、これだけなら名作とまでは言えないだろうなって水準でしょう。
まぁ、ゲームは戦闘が全てではありません。
育成や進行におけるバランスなど、様々な要素が含まれます。
総合的にみれば、良い作品と言えるように思います。
<感想>
もっとも、本作の本質はそんなゲーム部分にあるわけではありません。
ストーリー及びキャラこそが、この作品の生命線と言えるでしょう。
まずはキャラですね。
ランスシリーズといえば数多くの個性的なキャラたちの存在が挙げられますが、特にレギュラークラスの志津香やマリアらは2からの登場になります。
しかし、2では倒すべき敵としての登場だったわけでして。
そのため、彼女らが味方として、その個性を発揮しだすのは本作からです。
このシリーズは、この作品で一気に化けたというか、本作になってから、主要キャラ皆が輝きだしたんですよね。
今では志津香オンリーな私ですが、当時は志津香とかなみが双璧の存在でしたっけ。
かなみの不幸っぷりは当時は非常に珍しく、とても新鮮でした。
そしてストーリーですね。
今回は国家間の争いが舞台となりました。
当時のRPG事情を振り返ってみても、個人の勇者が世界を救うストーリーはいくらでも転がっていますが、国家規模の争いを舞台にした作品は珍しかったかもしれません。
それでいて、ランスらしい破天荒さは全く損なわれていないわけですからね。
大規模な争いを楽しく笑いながら楽しめました。
とても痛快でしたね。
こういう作品は案外今でも少ないんじゃないでしょうか。
また、作品の規模が大きくなることにより、ランスシリーズにおける世界がようやくその全貌を現しました。
ここにきてファンタジー作品らしい世界設定もしっかりと形成されだし、1作品としての完成度も飛躍的に上がったかと思います。
そもそも、当時の思い入れや美化したイメージを取り払えば、80年代のRPGに、しっかりとしたストーリーの作品はあまりなかったと言えるでしょう。
物語重視の作品が出てきたのは、PCゲーでは『エメラルドドラゴン』のあった89年頃から、アダルトゲーでは『闘神都市』のあった90年頃から、家庭用ゲーム機も同じく90年頃からですかね。
90年のFF3なんかは完全にシステム重視の作品ですし、91年の段階ではストーリー重視のRPGも出始めたという程度であり、まだそれ程ストーリー重視の作品はなかったのかなと思ったりも。
とはいえ、ストーリー重視作品で珍しいというだけでは、必ずしも高い評価には繋がりません。
そもそも、この頃のストーリー重視のRPGは、根本的な世界観や設定が似たようなのが多かったんですよね。
歴史は繰り返すというか、今も昔もあまり変わらないなって思うんですけどね。
アダルトゲームのノベルでは一時期、小説や漫画から引っ張ってきたような、どこかで見たようなループものが流行りました。
その後も、近年では推理小説から叙述トリックを引っ張ってきたような作品が、異常にもてはやされてます。
こんなの考え付かないとか絶賛の意見を見るたび、小説読めよって思う次第でして。
それらと同じことが、昔にはなかったとは言い切れないのでしょう。
つまり当時の重厚な中世ヨーロッパ風のファンタジーRPGのほとんどは、正直ハヤカワFTを読んだ方が早くね?ってのが多かったわけでして。
まぁ、私は中世ヨーロッパ風の商業ファンタジーも好きだから、何だかんだで一杯手を出してきましたけどね。
でも、だからこそ逆に、似てるだけの作品には高い評価は出来ないんですよね。
したがって私は、この頃のRPGのストーリーには、主観的には好きでもあまり高い評価をしてないのが多いです。
FF4なんかにしても、面白いし技術力がある分、他社のより評価できるけど、どこかで見たような展開だよなって感じでしたし。
そんな中に出現したのが、『ランス3』でした。
これは衝撃的でしたね~
FFやドラクエよりも、はるかに面白いと断言できる作品でした。
この当時、ここまで独創的でユーモアもたっぷりなファンタジー作品って、小説を見ても、そうはなかったですからね。
もちろん小説の中にも、破天荒でユーモアのあるファンタジー作品もありましたが、まだ国内のラノベが未発達な時期でしたので、ファンタジー小説もハヤカワ系の翻訳物が中心になります。
そして、それらの翻訳ものの中にはコメディ系の作品も幾つかあるのですが、翻訳されたファンタジーは原作は外国の方が書いてますからね。
ユーモアのセンスとか日本人と異なりますし、訳の出来云々もさることながら、それ以前の問題であまり楽しめないのですよ。
真面目で本格的なファンタジーは、どうしてもハヤカワFTをはじめとする本格FT小説が優れていて、ゲームでは見劣りもしました。
でもハチャメチャではあっても、ここまで個性の強いコメディ要素のある作品は、そういった本格的なファンタジー小説を探してもないのです。
それ故に、私の本作に対する評価は、かなり高くなっちゃうのです。
あれから10年以上が経ちました。
今ではRPGの物語にも、いろんなジャンルの作品が出ています。
小説(主にラノベ)やアニメでも独創的なもの、笑えるもの、個性的なものと、一杯増えました。
逆に今では、シリアスな作品の方が少なくて懐かしいくらいです。
国産のコメディ要素のあるファンタジー作品が充実してきた今日、今やった人が本作の魅力をどれだけ感じ取れるのか、私には判りません。
このシリーズの本来的な役割は、もう終わったのだとも思いますしね。
ただ、ゲーム機のRPGのストーリーに対し、ことごとく文句を言っていた人が、ランスシリーズは楽しめたと言ったケースもあるわけで、本作の当時における価値は計り知れないものがあったと思うのです。
<評価>
本作はランスシリーズの転機となった作品であり、ある意味、シリーズ最高傑作と言っても過言ではないでしょう。
厳密にいうと、『鬼畜王ランス』と『ランス10』には、本作以上の点をつけています。
とはいえ、『鬼畜王ランス』は世界観を示すための外伝ですし、『ランス10』は完結編であることから、本作を含めたこれまでの思い入れがすべて乗っかった特殊な立ち位置の作品です。
そのため、単独の作品で、最高傑作としてパッと思い浮かぶのは本作となるのです。
私はランスシリーズが好きだから、絶賛されることは本来は喜ばしいことのはずなんですけどね。
各年代の代表作みたいなのを挙げる企画で、89年の欄に初代ランスを挙げるのを見たことがあります。
確かにランスシリーズはアダルトゲーム屈指の作品ですから、その初代も「今の視点」からは有名なのですが、89年で初代の名を挙げる人は、その時代の他の作品を何も知らないんだろうなと思ってしまうわけでして。
ランスシリーズは最初から優れていたわけではなく、もちろん直接的には後の鬼畜王ランスの存在が大きいのですが、もう少し遡るならば、本作があったからこそ、後のシリーズに繋がったと言えるのでしょう。
その点でも重要な意義を有する作品であり、古い作品ではありますが、ランスファンなら少なくとも3はやってもらいたいものですね。
ランク:AA(傑作)
Last Updated on 2024-09-15 by katan
コメント
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そういや3のランス君が一番「かっこよかった」ですね。EDが特に。最終話近くなってどこでセーブするのかわからなくなって泣けました。FFのチョコボの乗り方もわからなかったし、間抜けです。
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>>やまねさん
最近のランスは変に丸くなったり尖った部分とかも無くなってきてますしね。
一番らしさがあって魅力的だったのは3かもしれませんね。