『黒の剣 Blade of The Darkness』は1995年にPC98用として、フォスターから発売されたRPGです。
フォスターはフォレストと実質的に同じみたいで、アダルトゲームメーカーが作った一般作となります。
<概要>
ゲームジャンルはRPGになります。
あらすじ・・・
人々はその邪悪なる漆黒の竜を、魔によってうち滅ぼそうとした・・・ ・・・
そして、一振の剣が作られたのである。
旅の剣士カイエスと黒髪の少女シノブの二人は、何者かに操られたように出会い、共に旅をすることになる。
この時カイエスはまだ、自分が全世界の命運を左右するほどの苛烈な運命の荊に絡まれていようとは、思いもしなかった・・・。
<感想>
凄く面白いマイナーな作品として有名という、知名度があるんだかないんだかよく分からない、一体どっちなんだよってな作品が、この『黒の剣』でした。
本作はゲームジャンルとしてはRPGなのですが、RPGは何だかんだで戦闘をしている時間が大半なわけでして。
だから他が良くても、戦闘部分が致命的に駄目なら、どうしても楽しみきれないと思います。
その戦闘部分ですが、楽しみ方もいろいろあるかと思います。
その中の1つに、派手な技や魔法が画面中に飛び交い、爽快感や迫力を感じるってのもあるでしょう。
もちろんグラフィックなんぞ関係ねぇよって人もいるでしょうが、個人的にはやっぱり大迫力の戦闘シーンの方が楽しめるんですよね。
少なくとも同じシステムなら派手な方が楽しいですし、90年代中頃のRPGは似たような戦闘システムの作品ばかりでしたからね、
そうなると、戦闘における演出の差ってのは意外と大きいように思います。
そしてその大迫力の戦闘シーンというと、SFCではやっぱりFFが優れていました。
なお、グラフィック・演出と言ってもいろいろあるわけで、イベントシーンなんかはPCエンジンのムービーを多用したゲームや、PC98のファルコムとかの作品の方がFFよりも優れていました。
ただ、これらの多くは、戦闘シーンの演出は大したことがなかったんですね。
そうなると、やっぱりFFは良いよなって思ったりもするわけです。
そもそも、ドット絵による大迫力の戦闘シーンのあるRPGって、考えてみると意外と少ないんですよ。
FF6が発売されたのは94年でしたが、その翌年に発売されたのが本作です。
全く期待してないのもありましたが、とにかく大迫力の戦闘シーンには驚かされましたね。
これはFF6以上じゃんって、興奮してプレイしたものです。
周知のように、その後はドット絵のRPGは減っていきます。
それも踏まえると、本作の戦闘シーンは、ドット絵のRPGの中でも最高峰に位置するのかなと思ったりも。
そもそも、アダルトゲームメーカーの作るRPGで、本作以上に見応えのある戦闘のRPGに、未だに出会っていないように思います。
本作が発売されてからも軽く10年以上が経ち、その後のエロゲRPGも一杯プレイしてきたのだけれど、インパクトは本作が一番なんですよね。
また、本作は見た目だけでなくゲームとしてのやり応えも十分でした。
制作したのはアダルトゲームメーカーですが、当時のアダルトゲームメーカーが作ったRPGの中では、ゲーム性に関して言えばこれが1番じゃないかなとも思うわけでして。
こうして見てみると、単純に面白いだけでなく、いろんな資料的価値もあるんじゃないかなって思える作品でしたね。
<ストーリー>
というわけで戦闘シーンが優れていたのは確かなのですが、本作が高く評価されているのは、戦闘とならんでストーリー・世界観の秀逸さがあったからなのでしょう。
他のRPGとは明らかに毛色の異なる、とにかくダークな世界観でしたね。
95年って、暗かったり変わっていたりする世界観の作品が多かった気もしますが、95年って一体何だったんでしょうね。
さて、ストーリーはかなり暗めであることから、若干人を選ぶ可能性はあるかもしれません。
でも、王道物や明るい冒険譚はもう飽きたよって人ならば、結構いけるように思います。
そもそもダーク系と言っても、徒に暗くしているわけではありません。
黒竜の復活によりあっけなく崩壊する町に死んでいく人々、生き延びるために何でもしようとする貴族。
本当の脅威に直面した場合に人はどう動くのか。
醜くはあっても人として自然とりうる行動や、容赦がなくともあるべき展開が描かれているので、逆にリアリティがあるのです。
他のRPGにおいて、世界の危機と言いながらどこか間の抜けた展開や、お花畑でも咲きそうな雰囲気に慣れるときつく感じますが、本当はこっちの方があるべき姿なのでしょう。
だから余計にも、ドラマに重みが増してくるのです。
シリアスな展開はとても重みがありますし、その中で真摯に立ち振るまう主人公のカイエスの姿は、とても格好良かったです。
そういや、ヘタレ主人公が流行りだしてからは、人として格好良い主人公ってあまり見かけなくなりましたよね。
そういう意味では、今となっては珍しいのかもですね。
ストーリー全体が良いのはもちろんのこと、カイエスの男の生き様を堪能できるというのが、もう一つの魅力なのでしょう。
<評価>
かようにストーリー・キャラは基本的にとてもよかったのですが、ラストがちょっとぼかされていたわけでして。
個人的にはその部分がちょっと不満でもあったわけで、絶賛しきれない面もあるんですよね。
ここだけは本当に勿体無かったです。
このままでも十分に名作と言える内容なのですが、ラストをもう少ししっかりしていれば、間違いなく1ランク高く評価していたでしょう。
ランクという観点からは、本作が一般作なのも残念でした。
せっかく綺麗なCGなのですから、この絵で普通にアダルトゲームだったならば、更に高く評価できたでしょう。
18禁で作ってラストもしっかり纏めていてくれれば、おそらく傑作扱いだったでしょうに。
そういう意味では、実に勿体無い作品でした。
何で一般作なんかで出しちゃったんでしょうね、全く・・・
ちなみに、本作はPS版も出ています。
長い間、結構高値が付いていましたっけ。
イベントシーンには声が付いており、結構声優陣が豪華だったりして、その点からはとても満足できる内容でした。
ただ、肝心のグラフィックがね、
どうにもオリジナルの98版よりも劣化しているのです。
本作の一番の魅力はグラフィックですから、その最大のセールスポイントが失われてしまったので、その点では残念な結果に終わってしまいましたね。
まぁ、いずれにせよマイナーな名作の代名詞みたいなゲームですからね、そういうのが好きな人ならぜひやってみてもらいたい1本でしょうね。
ランク:A(名作)
追記
拍手コメント、ありがとうございます。
返答欄でミスって上手く書けなかったので、追記という形で補足させてもらいます。
1.『黒の剣』は藤木隻さんの作品ですね。
ファンでなくても楽しめますが、ファンならより一層楽しめるかと思います。
2.本文記事内でも書きましたが、PS版の絵はあまりよくありません。
ドット絵とは言ってもPCのディスプレイ上での表示とTVのブラウン管での表示は違うもので、PCだと映えるのですがPS版はそこがイマイチなんですね。
PC98版だと凄いな~と感心した私ですらPS版は古臭く感じたので、単純にブラウン管向けの移植が、あまり上手くいかなかったと考えるべきでしょう。
とはいえ、98版にはない音声という魅力がありますからね。
絵の魅力が半減した分、音声でカバーしたと考えれば、どっちでも楽しさに関してはあまり変わらないのかもしれませんね。
3.なお、このゲームはwindows版も出ています。
たまに訪れる一斉処分時にwindows版も手放してしまったので、私は現在XP以降に対応しているのか確認できません。
Last Updated on 2024-10-28 by katan
コメント
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まずは、移転お疲れ様です。
ブログリンクも新しくくわえました。
そして、とあるクイズゲームでこのゲームのヒロインの名を名乗ってます。
ラストシーンですね、もしかしたら、当時は続きの計画もあったかもしれません。(藤木隻氏が当時はあの後どうなるか決まっていたということを言ったという噂あり)
ただ、やはり売り上げもいまいち(PS版2万本前後)におわったことで、立ち消えになったのか…。
この鬼気迫る間のあるストーリーに演出はRPG屈指のお気に入りであります。
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> まずは、移転お疲れ様です。
> ブログリンクも新しくくわえました。
ありがとうございます。
本当はこちらから挨拶に伺うべきだったのですが、首を痛めてしまいPCをいじる状態になかったものですから。
すみませんでした。
> ラストシーンですね、もしかしたら、当時は続きの計画もあったかもしれません。(藤木隻氏が当時はあの後どうなるか決まっていたということを言ったという噂あり)
ラストはどうなのでしょうね。
ぼかされたのがあまり好きでないというのは、あくまでも私の好みの問題でもありますから。
中にはこの曖昧さが余韻を生んで良いのだと感じる人もいるでしょうし。
結末は決まっていたけれど、分かりきったことを描くのは野暮だろってことで、あえて描かなかったということも考えられますしね。
セールス的には、とにかく時期が悪かったですね。
オリジナル版は一般ゲーでしたが、95年・96年辺りの一般PCゲーは非常に良質なものが多かったものの、どれもマイナーになってしまいました。
アダルトゲーマーばかりになってしまったので、埋もれやすかったんですよね。
PS版はポリゴンがもてはやされる時代になってしまったので、地味に見えて注目されにくかったのでしょうし。
出来が良いだけに、不遇っぷりが残念な作品でしたね。
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剣士に切れぬ物はない
あのセリフを今も覚えてますね。
主人公が己の生き様に全くぶれないホント硬派なゲームでした。
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> 主人公が己の生き様に全くぶれないホント硬派なゲームでした。
主人公が本当に魅力的でした。
見所の多い作品ではありますが、一番の中心である主人公に一本筋が通っているからこそ、
作品全体がまとまったとも言えるでしょうね。