『プリズムコート』は1998年にPS用として、富士通パソコンシステムズから発売されました。
濃くマニアックなネタの数々だけでなく、演出の上手さで育成SLGの可能性を見出した作品でしたね。
<感想>
91年に『プリンセスメーカー』が発売された後、90年代においては毎年のように育成SLGの名作が発売されていました。
もっとも、90年代も半ばになる頃には、システム的にはほとんど出尽くした感もありました。
そのためゲームの良し悪しは次第に、システム以外の他の部分で決まっていくようになりました。
98年に発売された『プリズムコート』もまた、そんな作品の一つだったと言えるでしょうね。
本作は、バレーボール部の顧問となって、全国制覇を狙う育成SLGです。
『ときめきメモリアル』以降、プレイヤーが自分を育てるようなゲームが増えた中で、ヒロインを育てるという点で初期の育成SLGである『プリンセスメーカー』や『卒業』の方に近いと言えるでしょう。
システム的には、実はそんなに際立ったものはありません。
ただ、それを上手くテレビの画面上で表現できていました。
つまり、育てることによって選手のパワーやスピードが上昇するところ、そのパラメーターの上昇がバレーボールの試合に如実に表れ出たのです。
最初の頃は、試合とかでもノロノロとしか動いてくれません。
それが育てた具合で段々と変化してくるわけです。
動きがはやくなったり、高く飛べるようになったり。
この育てた「結果」が見た目でハッキリわかるってのは、とても良かったですね。
SLGというのは、数値の変動が要ではあるけれど、数値変動だけだと、どれも同じに見えてきてしまいます。
そんな中で、ゲームがバレーボールを扱っており、なおかつ育てた過程がハッキリ見た目で分かることを示した本作は、実に良く出来ていたのではないでしょうか。
純粋なゲームのシステム自体はそれ程進化していないのかもだけど、その見せ方という点も含めて大きく進化したと言えるでしょう。
ただ、一つ物足りなかったとすれば、メンバーがギリギリなんですよね。
補欠とかチーム編成の楽しみがもっとあれば、システム的にも傑作たりえたんでしょうけど・・・
そこは、ちょっともったいなかったですね。
まぁここら辺は、ストーリーとの兼ね合いもあって難しかったのでしょう。
このゲームはギャルゲーの側面もあって、キャラ一人一人にストーリーが用意されていましたから。
人数を増やすとそれだけ労力も増えていきますし。
さて、このゲームのある意味最大の特徴は、そのストーリーにあります。
何ていうかね、目茶苦茶濃いのですよ。
これ全部分かる人はいるのか?ってくらい、パロディのオンパレードなわけでして。
このゲーム自体結構ボリュームがありますからね、パロディの量も半端じゃありません。
正直、私には半分も分かってない気もします。
そういうわけで、細かいパロディの内訳は他のレビューサイトさんに譲るとしましょうw
調べれば調べるほど驚かされますよ、きっと。
パロディもここまで徹底すれば一つの個性。
そう思って自分は高く評価しています。
パロディ好きなら、尚のこと唯一無二の傑作となりうるでしょう。
ただそういう性質なので、パロディはちょっとなぁ~って人にはあまり向いてないかもですね。
ちなみに、私も当時は個性として評価しましたけれど、最近はノベルゲームでもそういうのが非常に増えましたので、そうなってくるとどれも同じに見えてうんざりしてしまいます。
勘違いしてほしくないのは、パロディだから評価したのではなく、あくまでも他とは異なることを濃くやったから評価したということですね。
パロディ作品の少なかった時代に徹底したパロディを見せつけてきたから評価に値するのであり、猫も杓子もパロディだらけになった状況で同じことをやっても、何番煎じだよって話ですので、そうなると評価できないでしょって話しです。
<評価>
濃い内容に、優れた演出と、総合でも十分名作といえるでしょう。
とにかく個性が強すぎて、人を選ぶのも確かです。
でも、刺さる人には凄く刺さってくる、それくらい極めてマニアックな作品でしたね。
ランク:A(名作)
Last Updated on 2024-12-26 by katan
コメント
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これも大好きでした。
感想や評価はもうほとんどkatanさんのおっしゃる通りです。
普通、SLGというと数字(パラメータ)との格闘、調整がメインになるわけで、それが「地味」のもとなんですね。
私なんかはけっこうそういうのは好きでしたけど、でもどのSLGも結局同じじゃんと思っていた時期もありました。
でも、これですよ、これ。
これは違ってましたねえ。
数字じゃなくて画と演出で選手たちの進歩を見せてくれる。それが嬉しかったですね。
ある意味、育成もののひとつの到達点を示してくれたと思いますし、他のゲームはこれをスタート台にして欲しい作品でした。
部員数に関しては、私はあれでよかったと思います。
思い入れが強かったせいもありますが、レギュラーを指名して補欠を選ばねばならないというのはかなりつらいだろうと思います。
私はこれと対極に考えているのが「どきプリ」ですね。
あれは野球がテーマで補欠もいました。ただでさえ9人と参加人数の多い球技なのに、補欠も4名もいまして、合計13名のキャラがいました。
豪華と言えば豪華なんででしょうが、各キャラを掘り下げるところまではとてもいきませんでした。
その点プリズムコートは6人ですから、それぞれのエピソードを作ってあげられた。
私はこっちの方がよかったと思っています。
それにしてもこれも評判の割りには品薄だったんだそうですね。
なんかえらいプレミアがついてるんだそうで。
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>他のゲームはこれをスタート台にして欲しい作品でした
これは本当にそう思いますね。
もう育成SLGは行き詰ったのかと思っていたところに、そこに新しい方向性を切り開いたのですから、もう少し発展させて欲しかったです。
部員数は難しいところですね。
育成SLGとしてのゲーム部分だけを見るなら人数を増やした方が良いのでしょうが、
この人数だったからこそ、このゲームならではの「濃さ」が出せたのでしょうからね。
レッスルエンジェルス方式だったら理想だったのかも。
人数ギリギリで濃いキャラクターの続編も作り、ある程度キャラの数が揃ったところで、レッスル3みたいな自由度重視の育成SLGの続編を出して好きにチームを組ませると。
>なんかえらいプレミアがついてるんだそうで。
今は落ち着いたようですが、一時期は欲しくても物自体が見つからない状況でしたね。
良い作品なのだけど、やっぱりマイナーなのでしょうね・・・