『Portrait (ポートレイト)』は2000年にWIN用として、TESLAから発売されました。
『Blow』を制作した、ぶるべら&ココノツコンビの新作であり、純愛と鬼畜路線を両立させた作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
主人公の通う恵聖学園は神学系で全寮制、厳しさの中にも暖かみのある校風である。
彼の所属する美術部は他に顧問と女性部員が3人と小さかったが、それぞれが意欲的に作品作りに励んでいた。
ある日、徹夜で読んだ本をモチーフに作品を作ることにする。
すると、彼はその晩から奇妙な夢を見るように・・・。
それは、様々な場面で、それぞれに美術部の女性が一人現れるのだ。
やがて彼はそれぞれの夢から彼女たちのトラウマや恐怖、不安や想いを知ることになる。
作品を作りながら彼女たちと現実にふれ合い、そして夜毎観る奇妙な夢の中でその心にふれ合っていく・・・。
彼女たちの心を抱くように大切に想い、その奥底にある物を癒すことが出来るのだろうか?
それとも彼女たちの心を無視するように振る舞い、自らの欲望で埋めてしまうのだろうか?
<感想>
ブランドこそ代わりましたが、『Blow』を制作したメンバーの作品になります。
というか、ここは何とも不遇でして、ゲーム1本ごとにブランドが代わってしまってましたからね。
ファンじゃないとわけが分からなくなりますよ。
さて、多少の粗はあったものの、強烈な印象をもたらした『Blow』。
その制作陣の新作ということで、発売前はかなり期待していた作品でした。
『Blow』でもハッピーエンドとバッドエンドの激しい落差が存在します。
ゲームならではの醍醐味ですよね。
そして本作は、この部分を更に強化した作品でした。
ハッピーエンドとバッドエンドの両方がある作品と言ってもいろいろあって、どちらかに比重が置かれた作品も多いです。
それはそれで比重の置かれた方が優れていれば楽しめるのだけれど、逆から言えば恋愛ルートがメインだと凌辱ルートはオマケに過ぎず、凌辱メインだと恋愛ルートは取ってつけたような感じになりがちなのです。
でも理想としては、恋愛ルート単独でも1本のゲームとして成り立つ完成度を有し、凌辱ルート単独でも1本のゲームとして成り立ちうるゲームなのだと私は思います。
そういうゲームって本当に少なく、極稀に例外があるだけです。
そして、その例外の1本が本作なんですね。
『Portrait』はいわゆる学園物であり、具体的には4人のヒロインに対して恋愛と陵辱の2本ずつ、計8本のストーリーが用意されています。
恋愛ルートも陵辱ルートもどちらもよく出来ていましたから、個々のシナリオだけでも十分に満足できるでしょう。
それに加え、両方が同じ水準で優れているからこそ、その両者の落差もまた激しくなってきます。
そして落差が激しくなればなるほど、そのギャップを楽しむという魅力が増してくるのです。
これはシナリオ重視と言ってる人にはやってもらいたいですね。
ストーリーや構成の面からは、間違いなく名作クラスの出来でしょう。
恋愛物でストーリーのしっかりした作品は多いです。
しかし、凌辱物でストーリーのしっかりした作品は少ないです。
凌辱物にだってストーリーの優れた作品はあるわけで、そういうのに出会っていない人にこそやってもらいたいなと思うのです。
かように長所の持つインパクトだけなら、名作相当と言えるでしょう。
ただ、総合としては良作止まりかなって感じでした。
まぁ、2000年はノベル系の名作が多いために相対的に下がったので、実質的には限りなく名作に近い良作なんですけどね。
良作にした理由は3点あります。
1つは、キャラデザがおかしくなってしまったこと。
キャラの頭が大きくなってしまったので、頭身のバランスがおかしくなったのです。
シナリオ重視の人なら気にならないかもしれませんが、私はどうしても気になってしまいました。
恋愛はまだしも、凌辱系では絵が無視できないですからね。
2つ目は、いまいちテキストに集中できなかったことです。
前作の『Blow』の時も、ストーリーは抜群だけれどテキストはそれ程でもないって感じでした。
それでもサスペンスの緊張感もあってか、先が知りたいって気持ちの方が先立って楽しめました。
本作もストーリーは良いのですが、テキストがそんなに上手くはないんですよね。
加えて前作のようなサスペンス物でもないので、次はどうなるんだって緊迫感もありません。
そのため、前作以上にテキストが目立ってしまい、どうにもストーリーに集中できなかったのです。
最後は秀逸でも途中のメリハリが少し欠けていたのかなとも思いますが、ここら辺の受け取り方は個人差で結構分かれると思います。
実際、かなり褒めている人も多いですから、あまり気にしなくて良い部分かとも思いますけれど。
3つ目は、かなり感覚的なものになってしまうんですけどね。
この作品、かなり完成度が高いです。
高いのですが、鬱や狂気染みた要素までが、きっちりと纏まりすぎたんですね。
『Blow』の時の方が、構造的にも怪しいような、微妙で危ういギリギリのラインで進んでいる感じです。
常人との境界線上の狂気みたいな。
当初はライターがココノツさんだけだと思っていたので、ここら辺の整理が自分の中でも纏まっていませんでした。
何かちょっと雰囲気が変わったけれど、少し丸くなったのかな~くらいに思っていましたっけ。
しかし、本作のメインの企画がココノツさんで、『Blow』のメインが佐村忌さんなら、それも分かるような気がします。
<評価>
上記のとおり、総合では良作としますが、今回の私の評価は少し辛めかもしれませんね。
発売が一年早ければ、間違いなく名作扱いにしたでしょうから。
だからストーリーを重視する人でテキストが合う人ならば、きっと凄い名作と感じられるのではないでしょうか。
特に純愛と鬼畜を両立させつつ、両方のストーリーが良いというのは、ゼロ年代以降は絶滅に近くなってしまいました。
それだけに、本作の魅力も色褪せることなく通じるように思うのです。
最後に、keyの作品を知っている人ならこの例えで理解してもらえるでしょうが、本作は久弥さん中心だった『kanon』であり、『Blow』は麻枝さん中心だった『AIR』みたいな感じなのです。
『kanon』の方がすっきり上手く纏まっているけれど、私は『AIR』の持つ尖った部分の方が好きだったわけでして。
『Blow』より本作の方が良いって人はココノツさんに惹かれたのだろうし、『Blow』の方が良いって人は佐村忌さんに惹かれたってことなんでしょう。
そして私は、後者に属するってことなのかなと。
『CODA』以降は楽しめなくなっちゃいましたが、結局私が求めていたのは、佐村忌さんの持つ方向性にあったのかもしれません。
その影を追って、知らずにずっとココノツさんを追いかけていたんでしょうね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2025-01-20 by katan
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