PIANOSTRAIN (ピアノストレイン)

2002

『PIANOSTRAIN(ピアノストレイン)』は2002年にWIN用として、FALSTAFF with FWから発売されました。

『プライムガール』の制作陣による、館モノでした。

<感想>

プライムガール等の制作陣による作品ということで、幾つかの特徴は継承しています。
まずはグラフィックの良さでしょうね。
原画が可愛いとか塗りが良いというのは当然として、キッチリと目パチ口パクも備えていました。
また、口パクと音声のタイミングも揃えていますし、とても自然な感じでプレイできることができました。
ここまでできているエロゲは非常に少ないだけに、余計にも好印象といえるでしょう。

ここ数年は、また動きにもこだわるところが増えてきていますが、ノベルゲームが流行りだした90年代末からゼロ年代前半にかけては、ストーリー重視だの、1枚絵に全てをかけると言えば聞こえは良いのですが、ぶっちゃけ手抜きみたいに絵が動かなくなったわけで、そういう意味では過去より退化した時期でもありました。
そんな中で地味だけどきっちり手抜きせず作りこむ姿勢には、非常に好感が持てましたね。
こういうのがもっと流行っていたら、ノベルゲームのシステム的進化はもっと促進されていたでしょうに。
そう思うとつくづく残念です。

継承した特徴という点では、Uh-Huhシステムも挙げられます。
これは、会話文中に色の異なる言葉があるのですが、それをクリックする=その部分に関心があるとの意思表示であり、相手に同意することでその言葉を中心とした内容に、会話が微妙に変化するというものでした。
これによって、より自然な会話が楽しめるわけです。

でもこのシステムって、かなり労力がかかりそうなわりには、見た目というか、受ける印象が地味なんですよね。
だから絶賛もされにくいですし、あまり報われないように思うのですが、それでも手を抜かず作りこんできた点にはとても好感が抱けました。

このブランドは一貫してそうなのですが、ちょっとしたことに本当に手間をかけているのです。
料理人で言えば誰でもすぐに気付く盛り付けにこだわるのではなく、ダシなどの見えにくい部分にこだわっているんですね。
だから少数でも根強いファンを生むのだろうけど、パッと見で左右される多数派を占める初心者には支持を得にくいのです。

さてPIANOSTRAINには、当然これまでとの違いもあります。
過去の作品は大人を対象とした現代の恋愛モノが多かったですが、今回はヨーロッパを舞台にした館モノとなっており、雰囲気はガラっと変わってきているのです。

ストーリー的には、悪霊に満ちた館に閉じ込められた主人公が、その悪霊を除霊しつつ、無事に脱出するのが目的となります。
その過程でいろんな館にまつわるエピソードに触れるわけで、基本的なEDは1つなのですが、プレイ次第でストーリーが幾つも出てきますので、マルチストーリーのADVではありました。

ストーリーだけで名作扱いできる程ではなかったですが、生き様ADVと題されただけのものはありましたし、館モノとしては良くできていたように思います。
ゼロ年代以降は館モノが減ったので比較対象も少ないのですが、その館モノの中では筆頭クラスの出来でしょう。

システム的にはその館内を移動するタイプのADVで、夜には除霊のため戦闘に行くこともできます。
この戦闘は戦術SLGタイプでしたので、厳密にはADV+戦術SLGとなるのでしょうか。
必要なところに必要なシステムを導入したという観点からは、とても好ましいように思います。

ただ、戦術SLG部分自体は特に面白いものでもなかったので、あくまでもゲームに緩急をつけるアクセントみたいなものですね。
ですので、おそらくいないとは思いますが、戦闘目当てでプレイするのは危険かもしれません。

<評価>

総じて、高品質なゲームだと思います。
ただ、良い点はプライムガールからの引継ぎですし、新要素の戦闘部分自体は可もなく不可もなくって感じですし、加えて無駄に難易度が高かったりすることもあり(脱出というクリアだけなら簡単なのですが、様々なエピソードを全部見ようとするとかなり難しかったんです)、本作ならではといえる突き抜けた要素は乏しかったのかなと。
そういうわけで、総合でも良作としておきます。

作品に対する感想はそんなところなのですが、このブランドの地味だけど丁寧で労力を惜しまない姿勢は、とても好きだったわけでして。
確かに、周りにはもっとストーリーの良い作品も、もっと萌えるキャラのいるゲームもありますし、そういうところに惹かれやすいのも仕方ないかもしれません。
私にしたってそういう部分は大きいですしね。
しかしADVの発展の観点からは、こういうブランドにこそ頑張ってもらいたかったし、もっと支持されても良いように思うんですよね。
その点では、非常に心残りな作品でしたね。

ランク:B(良作)

Win98-XP CDソフト PIANO STRAIN(ピアノストレイン)

Last Updated on 2025-03-07 by katan

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