『傾城』は1998年にWIN用として、アンジェから発売されました。
当時まだ珍しかった遊郭を舞台にした作品であり、雰囲気がとても良かったですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
春の宵、満開の桜。疲れた足を引き摺って訪れた奉公先の遊郭、紅藍楼。
何もかもが珍しく、物悲しいまるで一夜の夢のような世界。
そこには安息など無く、夜毎繰り返される遊女と客との秘め事、哀歓、そして陵辱。
傷口を更に抉るような数々の出来事。それが主人公良介の日常。
遊郭紅藍楼を舞台に繰り広げられる遊女たちとの純愛物語。
<総論>
アンジェの代表作といえば、ヒロインごとの個別エンド初めてを導入した『KISS』が挙げられますが、他にも90年代中盤のPC98後期の頃には、ゲームデザイン面で様々な試みをした作品がいくつもありました。
そのため、アンジェは何かしらゲームシステムに工夫を加えるという印象を持った時期もありましたが、本作は時代の流れに沿ってか、普通のノベルゲームでした。
舞台が舞台なだけに、陵辱や寝取られなどもあるのですが、全体的にはエロの頻度は必ずしも多いわけではなく、むしろじっくりとストーリーを読ませるタイプの作品になります。
また、陵辱されたヒロインがレイプ目になるなど、鬼畜な場面は多数あるものの、全体としてはヒロインとの純愛を描いた作品でした。
イメージ的には、例えば同じ98年には『デアボリカ』がありますよね。
『デアボリカ』も暴力シーンが多数存在しつつも、究極的にはヒロインとの純愛を描いた作品であり、本作と同系統の作品といえるように思います。
そもそも、恋愛ゲーはエロゲでは95年からブームを迎えますが、当初はナンパゲーの面影も残していたこともあり、ヒロインが多数存在する作品が多かったです。
そうした恋愛作品に対して、多数のヒロインの中から選ぶのではなく、1人か2人といった少人数のヒロインとの深い愛を描いた作品、即ち純愛ゲーと呼ばれる作品が増え始めたのが、98年の一つの特徴だったように思うわけでして。
そういう意味で本作は98年らしい先端の作品であり、97年以前ではあまり出て来ないタイプの作品といえるように思います。
なお、少し余談になりますが、この時期の作品はCDを用いつつも、ハードディスクにインストールしないタイプの作品も結構あり、本作もそのタイプの作品でした。
もう一度確認しようと思い、WIN8.1のPCに入れてみたところ、無事プレイすることができました。
こういうのは良いですね。インストール作業不要で、今のOSでも遊べてしまうレトロゲーは非常にありがたいです。
ゼロ年代後半の作品でも、もう既に動かない物もあるだけに、本当にありがたいものです。
<感想>
さて、上記のように本作は、遊郭を舞台にした作品になります。
必ずしも日本史に沿ったわけではありませんが、世界観としては幕末の開国直前の日本となるでしょうか。
主人公は借金のために遊郭「紅藍楼」に奉公することになり、そこで遊女として初めて客を迎えようとする、幼馴染のヒロインと再会します。
主人公との仲を疑われたヒロインは主人公の前で犯されてしまいます。
したがって、その意味では寝取られゲーでもあるのでしょう。
また、遊郭が舞台であることから、主人公が出会った女性の大半は、陵辱されたり酷い目にあいます。
こう書くと、抜きゲーかと勘違いしてしまう人も出てきそうですが、基本的にはストーリーを読ませる類の作品であり、最終的にはヒロインとの純愛を描いた作品なのです。
遊郭を舞台にした退廃的な雰囲気といい、ラストでのカタルシスといい、それらをつなぐ展開の自然さといい、とても上手く出来ていたと思います。
遊郭を舞台にした作品は今では何本かありますが、こと遊郭という舞台を活かしたストーリーの良さという観点からは、男性向けエロゲの中では今でも最高の出来ではないでしょうか。
ゲームシステムは上記のようにノベルゲームであり、特に変わったところはありません。
アンジェにしては捻りがないことから、少し残念ではあるのですが、選択肢に応じて純愛にも鬼畜にもなるということで、個人的には非常に好きなタイプの作品ですね。
最近は純愛と鬼畜の両方を混ぜると嫌がる人もいますけれど、自分の行動でどうにでもなるというのが、ゲームの良いところだと私は思います。
本作は非常に雰囲気の良い作品であるところ、それを支えていたのはサウンドなのだと思います。
サウンドについてどうこう言う機会は少ない私ですが、本作はとても良くあっていたと思いますね。
その一方で、本作で弱い部分があるとすれば、それはグラフィックになるのでしょう。
パッケージの絵はとても良い感じで好きなのですが、実際の画面がね・・・なんか妙にくどくって。
演出も弱いですし、この時期の他作品よりも見劣りしてしまいます。
<評価>
本作は、遊郭を舞台としたストーリーゲーとしては最上級であり、長所だけならば名作級の作品といえるでしょう。
ただ、グラフィックが致命的に弱いこと、全体のボリュームも少なめであることなどから、総合では良作としておきます。
もしストーリー・シナリオを重視する人であれば、名作という人がいても何ら不思議でない優れた作品でしたね。
まぁ、何でこれ埋もれているんだって気もしますが、あの頃は既にシナリオゲーという名の萌えゲーの時代になっていたので、抜きゲーでなく、かつ全く萌えない本作は、どうしても埋もれやすかったのでしょうね。
そう言う私自身も、当初はスルーしていて、最近になってようやくプレイしたくらいですし。
でも、ずっと気になっていた作品でしたし、実際、スルーしないで良かったですね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-12-30 by katan
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