『逆転裁判』は2001年にGBA用として、カプコンから発売されました。
ゲーム機初の法廷ADVということで、話題になった作品でしたね。
<感想>
ゲームは、前半の探偵パートと、後半の法廷パートから成ります。
前半の探偵パートはコマンド選択式のADVで、他の推理物のADVにも多く見られる形式でした。
この部分はいたって普通でしたので、本作の特徴は後半の法廷パートにあると言えるでしょう。
この法廷パートに関しては、たぶん馴染みのない人も多かったかと思います。
法廷モノって、かなり数が少ないですから。
グラフィック、サウンド、ゲーム性、ストーリー、キャラ、ボリューム・・・
ゲームを構成する要素は幾つもありますが、本作に致命的な欠点はまずないと言って良いかと思います。
致命的欠点を引いていく減点法で考える人ならば、本作は高得点になりうると思いますし、万人向けですので幅広い層が楽しめるでしょう。
ただ、私は欠点よりも長所を重視しつつ全機種との比較で考える方なので、どうしてもまた違った見方になってしまうのです。
まず、グラフィックやサウンド面ですが、GBAとしては及第点でしょう。
でも、PCのADVとかと比べると決して長所にはなりえないですし、むしろ物足りなくすら感じます。
これはもうGBAの性能故に仕方ないかもしれないですけどね。
次に探偵パートですが、これは平凡すぎですよね。
逆転裁判においては、法廷パートへ続く前座に過ぎません。
まぁ、それならそれでも構わないのですが、もっと後半へ繋がる形式も取りえたはずです。
同じ法廷ADVの『殺意の証明』(1996)なんかは、前座の情報収集の場面でも細かく分岐したうえ、その時の収集内容が後半に大きく影響してきます。
本作はコマンド選択式の名作と並ぶほどに完成されてるわけでもなく、かといって後半に上手く影響するわけでもない。
となると、どうしても中途半端に感じるのです。
そして、肝心の法廷パートです。
これは、率直な意見としては普通には楽しめました。
ただ、法廷モノ自体は既にありましたので、
決して今までにないとか斬新とかいうことはありません。
新鮮さがなくとも完成度が高ければ、それはそれで評価するのですが、例えば逆裁の前で新しめの法廷モノとなると前述の『殺意の証明』がありますが、事件を自分で組み立てていく感覚や、組み立て次第で劇的に流れが変化する感覚など、完成度でも『殺意の証明』の方が圧倒的に上でした。
となると、楽しくはあるけれど、あまり大きな長所にもならないんですよね。
それと曖昧さや融通の利かなさもあり、ADV全体としての作りはまだまだ甘かったように思います。
ストーリーはやや安易な気はするのですが、ユーザーの多くが子供である携帯ゲーム機ということをふまえれば、これはこれで良いのでしょうね。
致命的なマイナスではないものの、やや不満が残ったのは操作性でしょうか。
メッセージスピードが変更できなかったり、若干快適性に欠けていましたから。
まぁ、例えば上記の『殺意の証明』は、ゲームの出来は良いですが、ボリュームが少ない作品でした。
また実写ゲーだったので、それで好き嫌いも分かれうるでしょうし、つまりは万人向けではなかったのです。
そういう意味では若干癖のある作品でしたし、ゲーム部分も初心者には難しいかと思います。
他方で本作は、ボリュームもそれなりにあるし、初心者でもクリアできる内容で誰でも安心して楽しめます。
より多くの人に無難にオススメできるとしたら、本作の方が適しているんですよね。
<評価>
正直なところ、作品の内容だけでいえば凡作相当の作品だったと思います。
ただ、一般の、PCゲーとかまだプレイできないような学生ユーザー等に法廷ADVの魅力を普及させた点は功績といえるでしょうし、その点を考慮して佳作とします。
特に携帯ゲーム機はプレイする年齢層が低かったですからね。
そういう低年齢層向けの入門作という意味では、良く出来た作品といえるのでしょう。
カプコンという会社は、基本的に非常に目の付け所が良い会社だと思います。
PCでは海外のゲームも移植したりしていますし、ボードゲームの「カタンの開拓者たち」を日本向けにアレンジしたのも、カプコンでした(但し、それ以前にも日本語版はありましたが)。
国内だけでなく、世界中から情報を得る術に長けているんでしょうかね。
そして、得た情報を売れる形でアレンジするのも上手い会社だと思います。
『バイオハザード』だって、『アローン・イン・ザ・ダーク』という先例がある以上、決して画期的だったわけではありません。
国内ですら先に『チームイノセント』とかありますし。
でも、メジャー機種で万人に幅広く支持されるように、上手くアレンジして大成功をおさめました。
本作もバイオほどの完成度はないかもしれませんが、それでもマニアックで日の当たらなかった法廷モノを、万人が幅広く楽しめるようアレンジでき、それが売上にも繋がったって点では、十分成功したと思います。
画期的なものを作るわけではないけれど、幅広い層に支持を受けるよう上手くアレンジする。
それって日本人が得意な分野であり、とても日本っぽく感じるんですよね。
アイデアが尽きて駄目になっていくメーカーも多いですが、この姿勢を続けられる限りカプコンだけは大丈夫な気もしてきます。
最後はゲームと関係ない話でしたが、本作をみると何となくそんな風に感じるのです。
ランク:C-(佳作)

Last Updated on 2025-02-17 by katan
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