『幻想魔境奇譚』は2014年にWIN用として、かつみ屋から発売されました。
濃密な伝奇のように、読み応えのある作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
選択肢もなく、一本道になります。
あらすじ・・・199X年、大西洋――
新婚旅行中に悲劇の事故に見舞われた”わたし”は、妻とともに嵐の夜の海へと”稲妻型の痣”のある腕によって突き落とされてしまう。
目覚めるとそこは、天国さながらの無人島であった。
ここでふたり、新たな生活を迎えようという矢先に、最愛の妻が病死してしまう。
楽園の終焉を悟り、島をあとにどことも知れぬ海へと漕ぎだしたわたしを救ったのは、一艘の船と謎の考古学調査隊であった。
そこにあの”稲妻型の痣”をもつ人物を見つけたわたしは、”人魚”を求めてやってきたという彼らとともに、わずかな原住民が暮らす未開の島「ヤム・ラ・カヌ」へと向かう。
そこでわたしを待ち受けていたものは、あまりに数奇な運命だった。
<感想>
本作は、妻を亡くすきっかけを作った者へ復讐を誓うという、いわゆるサスペンスものであり、同時に大西洋の島を舞台にした、ホラー・伝奇ものでもあります。
もっとも、主となるのは伝奇であり、伝奇が好きな人に、より向いた作品といえるのでしょう。
ところで、ノベルゲームの大半はエロゲですが、エロゲにおける伝奇作品という場合、そのほぼ全てがラノベ感覚の伝奇になります。
・・・いや、こういうと、少し語弊があるでしょうか。
PC88やPC98時代の伝奇作品は違うぞと言われると、そうですねと答えることになりますから。
しかし、その作中において、「あらゆる萌え要素が詰められている」と評された『痕』以降は、エロゲの伝奇作品とは、ラノベ路線の内容であり、その点に異論のある人はいないと思います。
本作はノベルゲーであり、伝奇作品ではあるのですが、ラノベ路線の作品ではありません。
一般小説の伝奇作品を読んでいるのと同じ感覚であり、その意味において、近年の他の伝奇ノベルゲーと、完全に一線を画しているのです。
そのため、本作を楽しめるか否かは、伝奇が好きか否かというだけではなく、もっと限定して一般小説の伝奇が読みたいのかと、そういった観点が重要なように思うのです。
すなわち、ラノベ伝奇が大好きで、それを模したラノベ伝奇風エロゲが好きな人だと、本作は地味で良いと思えない可能性も十分にあるでしょう。
逆に、一般小説の伝奇は好きだけど、ラノベは合わないという人の場合だと、キャラ重視な伝奇エロゲの大半は楽しめないのでしょうが、本作は楽しめる可能性が非常に高いです。
いずれにしろ、本作は、一般小説を含めれば、ジャンルとして特に珍しいものではないかもしれませんが、近年のゲームとして限った場合には、非常に珍しい内容ということですね。
したがって、ある意味ではオンリーワンなのですが、他方で、どうしても比較対象が一般小説となってしまい、その意味ではハードルが高くなってしまうのです。
もちろん、本作は、十分に面白い作品です。
体験版で楽しめる序盤こそ、ややゆっくりな展開が続きますが、章が進むにつれ、次第に盛り上がっていきますし、読み応えはありますからね。
「私はシナリオ重視です」っていう人はよく見かけますが、本当にシナリオ重視であり、かつ伝奇が好きならば、本作を迷わずやれよと言いたくなるレベルでもあります。
ただ、一般小説の中の面白い伝奇と比べ、なおかつそれを凌駕する面白さがあるかとなると、題材的にやや王道っぽくもある本作には、そこまでの突き抜けたものはなかったのかなと。
もちろん、本作は小説ではなくゲームです。
したがって、小説にないプラスアルファがあるか、そこが大事になってくるのでしょう。
とはいえ、本作にゲーム性はないですし、音声もないことから、グラフィックの占める割合が他よりも高くなってきます。
そのグラフィックなのですが、本作は二次元の絵もあるものの、背景とかで実写を多用しています。
この実写を含めたグラフィクについて、確かに下手な二次絵よりはセンスが良いとも思えますし、演出も凝っている部分はあるのですが・・・
全体的にテキストから浮いているようにも見えるわけでして。
いや、テキストが自己完結しすぎているのかな・・・
いずれにしろ、絵やテキスト等全体でというよりは、とにかくテキストを読んでいるという印象が強く、演出が凝っているわりには、それほど相乗効果は感じられなかったですかね。
<総合>
総合では良作としておきます。
全体として考えると、相乗効果が少ないこともありますし、また、もう一つ突き抜けたものがないのかなと。
他方で、ストーリー・テキストだけならば、相対的に十分名作級の作品だと思いますので、その点だけを重視する人には、ぜひやるべきといえるオススメの作品だと思いますね。
ランク:B(良作)

Last Updated on 2024-10-22 by katan


コメント
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個人的に大好きな作品でした。
このサークルの新作が出たら買いたいくらい密かにファンです。
ノベルゲームがやりたいけど、萌え要素の無いものがやりたいと思う人には是非やって欲しいです。
シナリオ重視の作品が無いと嘆いている人は、本作のような一般向けや同人のマイナー作品を漁るなり、それこそ目先を変えて一般小説の面白い作品を探すなりすれば、何かしら良い作品に出会えると思いますね。
本作は良くも悪くもシナリオ重視で一般小説寄りの作品なので、ストーリー・テキストは優れていても、グラフィック・サウンドを含めた総合力では他の名作に及ばないという弱点はありますね。
しかし、ジャンル名に「ノベル」と冠している他の作品に比べて、テキストがグラフィックの邪魔をしているという事は無いので、その点が気になっている人は心配ないと思いますね。
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シナリオ重視だと言っている人は、
何でこの作品をプレイしないのだろうかと、
個人的には疑問に思ってしまいますね。
まぁ、細かいシステム面とかは、
やっぱり同人だなって感じの作品なので、
UIとかに煩くて商業作品しか嫌って人であれば、
この作品をプレイしなくても分かりますけどね。
昔のシナリオ重視な人とかだと、
例えば月姫やひぐらしなんかを盛り上げてきた層とか、
あまり細かいシステムとか気にしなかったのですが、
時代が変わったんですかね。
他とは被らないサークルだけに、
新作が出れば、私もプレイしたいですね。