JONASON  「傀儡の舞」

1994

『JONASON 「傀儡の舞」』は1994年にPC98用として、Xyzから発売されました。

序盤のOP後から開始数十分という範囲に限定するならば、PC98時代、いや全アダルトゲームの中でも最高の作品かもしれません。

<概要>

ゲームジャンルはポイント&クリック式ADVになります。

主人公は亡き父の跡を継ぎ盗賊になった亜里沙と、その父の相棒でもあった鴎のコンビであり、二人は怪盗ジョナサンと呼ばれています。
本作で二人は、古代の財宝の在処を知るという令嬢の身辺警護を依頼されます。

手に汗握るカーバトルから始まりますが、全体としては学園を舞台にしたサスペンスものとなるでしょうか。

<感想>

エクシーズは、主にPC98時代の後期に活躍したブランドでした。
『緊縛の館』(1995)は名作としても有名だったし、かなり話題にもなったと思いますが、それまでは特別有名というほどではなかったのかな。
本作こそP&C式ですが、過去作や前身であるSWAT時代のADVを見ると、比較的ノベルゲーを作っていた印象が強いわけでして。
96年のビジュアルノベルが最初と思い込んでいるような、PC98時代のノベルゲー自体ろくに知らない人も結構いるので、それだけこのブランドの作品もマイナーとなるのでしょう。
でも、デビュー作から普通の作品はなく、何かしら工夫がなされていたことから、プレイすると得るものがあるブランドであり、今では好きなブランドですね。
もう解散したブランドに対し、今ではというのも変な話ですが、『緊縛の館』こそ『SEEK』つながりでプレイしていたものの、それ以外の作品は何故か手つかずだったのです。
もう完全にWINDOWSの時代になってから、そういや他の作品はどうだったんだろうと、前身であるSWAT時代の作品も含めて手を出してみたところ、こんなゲームがあったのかと驚かされた作品が幾つもあったと。
それで、好きになったというわけですね。

したがって、本作もプレイしたのは発売から数年以上経ってからですし、その時には勝手にPC98時代の作品は結構分っているつもりだったので、普通なら大抵の作品に驚かないはずなんですけどね。
本作をプレイして、序盤でいきなり驚かされたわけでして。

それが冒頭の感想にもつながるのであり、ゲーム開始後数十分に限定するならば、PC98時代のADVの中でも最高峰の作品かもしれません。
それどころか、アダルトゲーム全体でもと言えるかもしれませんね。
PC98時代のADVは事件などが最初に起きるので掴みが早かったのですが、WINDOWSの時代に入ってからは、序盤は平凡な日常だったりしますので、開始後数十分が非常に面白いってケースは皆無ですから。
まぁ、少し言い過ぎかもしれませんが、それくらい驚かされたのも事実です。

その本作の序盤なのですが、本作は上記のようにP&C式ADVですので、つまりは画面をクリックしながら進めるわけですね。
本作はOPイベントの後、主人公らが車に乗っているシーンから始まるのですが、そこでは細かなカットインが加わりつつ、そのカットインの画面をクリックしながら進めることになります。

しかも物語的にはカーバトルに突入し、画面クリックも時間制限ありのリアルタイムでの操作が要求されますので、のんびりしていられません。
細かなカットインにより演出が良い中での画面クリックという、開始直後の状況でさえも、すげぇ~面白いって驚いていたのに、そこからカーバトルに突入し、連動して時間制限ありの緊張感ある展開ですからね。
これはもう、本当に興奮したものです。
ちなみに、選択肢に時間制限がついただけで騒がれた、サクラ大戦(1996)や学園ソドム(1995)よりも本作の方が先で、しかも格段に複雑で凝っていますからね。
それだけ凄いってことです。

こういう本作の様な組み合わせは、他にはどうなんだろうな~
本作より古い作品では見たことがないし、以後の作品でも見かけた記憶がないように思います。
この時、この瞬間の面白さは今でも唯一無二かもしれませんね。

なお、XyzにはWIN用の『女神の雫 ~Jonason95~』という作品があるようで、そちらは続編になるのかな。
冒頭のグラフィックの一部が使い回しだったので、一瞬リメイクかと思ってしまったけれど、話が違いますからね。
続編の方は普通のコマンド選択式になってしまったし、非常に簡略化された導入部だったので、CGの一部を使い回していても、面白さは比べものになりません。
シリーズもののお約束として、導入部分を共通にしたのかもしれませんが、だったら簡略化せずに1作目のシステムもきちんと踏襲して欲しかったものです。

さて、ここまでの印象なら、PC98時代の他の名作ADVも軽く超えますし、主人公二人も個性的で非常に良い感じなので、この調子で進めば文句なしに名作・傑作だったんですけどね。
序盤が終わって、学園に潜入することになると、ごくごく普通のADVになるわけでして。
キャラは良いので、主な問題点はむしろそのシステム部分でしょうか。
P&C式のADVは好きな作品も多いけれど、決して万能ではないですからね。
いつも言っているように、作品によってベストのシステムは異なるのです。
本作のように学校内という同じ場所を何度もうろつくような場合、もう少しぬるめにした方が良かったように思います。
結構クリックを要しフラグが厳しいにもかかわらず、基本が学校内の徘徊ということで、やや単調に感じてしまったものですから。

<評価>

以上のとおり、何とも判断の難しい作品でもあり、学園潜入後はC(佳作)もありえるのだけれど、序盤のインパクトはAA以上の傑作級でもあるわけでして。
私にとっては、あの掴みの部分だけでずっと忘れられない作品になりましたし。
とりあえず総合では良作としておきますが、瞬間最大風速だけは別格の、非常にインパクトのある作品ではありました。

ランク:B(良作)


JONASON「傀儡の舞」

Last Updated on 2024-10-08 by katan

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