麻呂の患者はガテン系3 完結編

2015

『麻呂の患者はガテン系3 完結編』は2015年にWIN用として、エルフから発売されました。

シリーズ3作目にして完結編であり、また同時にエルフの最後を連想させる作品となりました。

<概要>

『麻呂の患者は~』シリーズの3作目になります。
いきなり3作目をプレイする人もいないと思いますが、このシリーズはストーリーが直接つながっていますので、過去作をプレイしないと全く意味が分かりません。
したがって、過去作が未プレイの場合には、まず先に過去作からプレイしてください。

過去作をプレイした人の場合、最初はこのシリーズが4作発売されると思っていただろうし、実際に制作中のアナウンスでも4という表記があったのですが、途中で変更され、結果的にはこの3が完結編となります。
過去2作品が低価格商品だったのに対して今作はミドルプライス、ないしは実質的なフルプライス作品であることからすると、本作は3と4を合わせた作品と言えるのでしょう。
まぁ後述する内容的な面を除いて数字面だけで語るならば、今作は2作品分の容量になりますしね。

<感想>

問題は、その内容でして。
メインヒロインである咲美は以前より軽い印象になってしまい、キャラそのものが変わったようにすら見えてしまいます。
そこはまぁ気にしすぎだとして問題ないとしても、過去2作で描かれてきた咲美・麻呂・マーくんの三角関係も、何だか放り投げたような適当な感じで終わってしまいます。
本来なら今作で深く描かれると思われた、もう一人のヒロインである雪菜も、いろいろバッサリカットされたようで、結果としてはいなくても良かったのではと思わされてしまいます。
それでいて余計な新キャラばかり増えて、グチャグチャにかき乱して終わりですからね。
今作が単体として駄目なだけでなく、過去作まで汚されたようで、何とも残念な内容でした。

確かにエロシーンはアニメーションで動きますし、これも前2作ほどではないにしても、他所の動かないヌキゲーよりはずっと良いと言えるでしょう。
個々のシーンであるとか、掘り下げれば魅力の出てきそうな新キャラとか、部分的に見れば面白くなりそうではあるのです。
ラストも一応は、それっぽくまとまっていますしね。
だから当初の予定通りにしっかり作り込むことができていたら、おそらく面白い作品になったのでしょうね。
しかし無理やり完結させるために、それでダイジェストのような薄い内容になってしまったと。
離脱問題などで大変だったとは思いますし、作品として無事に世に出て来られただけでも良かったのも確かですが、大規模な作品が無理なら無理で構わないから、コンパクトに必要な部分だけでもしっかり纏めてくれれば、それだけでもファンは納得したと思うのですが、何でこんな中途半端にいろいろ混ぜようとしたんでしょうね。

まぁストーリーに関しては、ある程度は割り切ることもできます。
エルフ作品と言えども、常にストーリーが良いわけでもないですから。
過去にだって良くなかった作品も幾つもありますしね。
それに深く勘ぐるならば、あちこちにエルフ作品のパロが混ざっているようでもあり、そうした異なる観点からの楽しみ方もできますので、何だかんでそれなりには楽しめるのでしょう。

むしろ納得いかなかったのは違う部分であり、そもそも昔のエルフというのは、単にストーリーが楽しめるだけのブランドではなかったはずです。
ADVに斬新なシステムを導入させたり、既存のシステムであっても更に洗練させたり、何より作品に合ったシステムを導入するというように、ゲームデザインが優れていたのが他所との違いだったわけです。
だからこそ、本作後半に登場する、何の必要性も感じられないコマンド戦闘にはガッカリさせられ、これは未完成なストーリー以上にショックが大きかったかもしれません。

そもそも昔の私はアリスファンという認識の方が強く、もちろんエルフ作品も好きな物が多かったのですが、それほど特別視していたわけでもなかったと思います。
それがゲームについての文章を書くようになったり、ADVの歴史とか変遷を考えるようになったことで、エルフって凄かったよなと思うようになったわけでして。
ADVの構造面で変革をもたらしてきたブランドの最後が、こんな意味不明なゲームデザインなのかと思うと、それがストーリーの破綻以上に悲しくなってくるのです。

まぁ私は蛭田さんと土天さんと別人だと思っているし、実際に近年のエルフ作品で優れたデザインの作品などないし、今更期待するなよって話ではありますけどね。
でも優れたゲームデザインは無理でも、せめて普通に仕上げて意味不明な構造を避けることはできたはずで、それでどうしても残念に思ってしまうのです。

<評価>

面倒臭いことや御託はいいんだよ、抜けるのか抜けないのかエロだけが大事なのだというならば、
まぁそれなりに楽しめる作品だと思います。
完全に割り切って陵辱ゲーとかって思えるならばね。

他方で前2作のファンであるとか、期待が大きい人ほど、どうしてもガッカリしてしまうでしょうね。

ところで、ここまでにも最後とか、或いは最後を連想させるという言葉を用いていましたが、本作のエンドロールでは歴代のelf作品が発売日順に表示され、「Thank you for the last 27 year」とのメッセージが出てきます。
これを見せられてしまうと、普通に考えればエルフは終わったのかと、もうこれが最後なのかと考えざるをえないのでしょう。

青春時代をエルフの黄金時代と共に過ごした人も多いでしょうし、長年プレイしてきた人ほど、このエンドロールは堪えると思います。
仮に本作の内容自体に価値はなくとも、このエンドロールだけでも価値があるのだ・・・と、本当ならそう締めくくりたいものですが、個人的にはここでモヤモヤしてしまいまして。
このエンドロールでは、シルキーズ作品が表記されていません。
PC98の一時期は本家エルフよりもシルキーズの方で意欲作が登場し、そちらに思い入れのある人も多いでしょうから、何とも残念に思えてしまいます。
いやいや、あくまでもエルフの話なのだから、シルキーズは関係ないだろという意見も当然あるでしょう。
しかし、それを言うならば『河原崎家の一族』も『野々村病院の人々』も、元々はシルキーズから発売された作品です。
後にエルフ名義で移植版が発売されていますが、だったら『ビ・ヨンド』や『愛姉妹』だって含めて良いだろと思うわけで、その基準の一貫性のなさに消化不良な気分にさせられてしまいます。
まぁ本作のグダグダ感がエンドロールにまで反映されてしまったと考えれば、それまでの話ではあるのですが・・・
ちょうど今読んでいた小説に出てきた比喩を引用するならば、大好きなアーティストのベストアルバムに、自分の一番好きな曲が入ってなかったなかったみたいな、今はそんな気分なのですよ。

本作の内容自体は、何だかんだで土天さんのテキストは楽しめる、もし全くのオリジナルなら及第点と感じたかもしれない、しかし続編としてあえてやる必要はないということで、トータルでは凡作なのでしょう。
もっともエンドロール次第では感慨も生まれ、佳作としたかもしれません。
しかし上記のようにエンドロールで興醒めしたことから、総合でも凡作のままってところでしょうか。

だからまぁ、このエンドロールを見るために、エルフファンはやってくれと言う心境にもなりにくいのですけどね。
後ろ向きに終わらせるのも嫌なので、前向きに終わらせるとしましょう。

グッバイ、エルフ。ありがとうエルフと。

ランク:D(凡作)


Last Updated on 2024-09-23 by katan

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