『山村美紗サスペンス 京都鞍馬山荘殺人事件』は、1994年に3DO用として、パック・イン・ビデオから発売されました。
小川範子さんが主人公を務め、全編実写動画で作られた、3DOの長所を存分に活かした作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
もっとも、本作はフルムービーで進行する作品でもありますし、当時の表現によれば、インタラクティブムービーの方がしっくりくるでしょうか。
新しいゲーム機を買う理由は何か?
多くの人は、面白そうなゲームがあるからでしょう。
ただ、面白そうなゲームが旧世代のゲーム機で作れるのならば、別にあえて次世代機で出す必要はないわけでして。
買う方としても、似たような面白さが旧世代のゲーム機で楽しめるならば、旧世代のゲーム機だけでも事は足りますしね。
そのため、ハードが普及し終わってから発売されるゲームとは異なり、ハード初期に発売される作品には、この機種だからこそなしえたという、本体の購入にも繋がる独自の観点も必要になってくるかと思います。
さて、このハードの特徴というものも、最近では分かりづらくなってきているんですよね。
据え置き機が売れ難くなって携帯機が良く売れるのも、そうした点が少なからず影響しているかと思いますし。
そういう意味では、94年の次世代機の頃は分かりやすかったですよね。
ポリゴンによる3Dを求めるならPS、アニメーションを求めるならPC-FXってな感じで。
もちろん、そういった特徴は3DOにもあったわけでして。
3DOの魅力と言えば、それはやっぱり動画再生能力の高さとなるのでしょう。
その魅力を活かした、象徴たる作品が、本作や『悪逆の季節』なわけでして。
これらをプレイするだけでも、3DOを買ってよかったなと悦に入れたものです。
もちろん、これまでにも実写を用いた作品は既にありました。
しかし画質は悪いは画面は小さいはで、どうしてもTVドラマとかより見劣りしましたからね。
ここに来てようやく、画質の悪さが気にならないレベルの綺麗な実写のゲームを遊べるようになったわけです。
火サスや土曜ワイドのようなミステリーをゲームで遊びたいと思っていた自分には、本作の登場は、まさにADVの黄金期の到来かと期待したくなるような、そんな出来事だったのです。
<グラフィック>
さて、肝心の中身なのですが、まずは一番の長所であるグラフィックは綺麗でしたね。
上記のように、ここにきてようやく見劣りのしない画質になりましたから。
当然実写なわけですが、全編動きまくりのしゃべりまくりです。
実写ゲーはやっぱりこうでなくてはね。
1枚絵の静止画の実写ゲーなんて、興醒めしてしまいますし。
ちなみに、本作の主人公は、小川範子さんが務めています。
ADVファンなら当然知っているであろう『No・Ri・Ko』でも主役でしたし、こういうマルチメディア系作品の節目節目に出てきている印象を受けます。
制作側が狙ってやったのか、それとも偶然なのかは知りませんが、何とも不思議な縁ですよね。
<ストーリー>
そういうわけで明確な長所も有しているのですが、むしろ問題は中枢を担う部分でしょうね。
ストーリーのおおまかなあらすじ的には、日本舞踊の名門である桜木流の山荘で家元の誕生パーティが開かれ、フリーライターの主人公もその誕生パーティに招待されます。
しかし主人公が着く前に家元が殺害されてしまうことから、日本舞踊の世界を舞台とした事件の解決に挑むというものになります。
ストーリーは山村美紗さん原作だそうですし、いかにもな雰囲気があって問題なく楽しめます。
もっとも、ボリュームがあまりないゲームでもあり、長所とまでは言えないように思います。
良くも悪くもTVの2時間ドラマの延長上なんですよ。
<感想>
ゲームジャンルはコマンド選択式のADVで、基本システムはごく普通のものでした。
もっとも3Dの館を探索するなど、次世代機らしさもありましたし、部分的にはプラスに見られる箇所もありました。
しかし、それ以上に動作の鈍さが目立ってしまい、トータルではマイナスの印象が強かったように思います。
<評価>
演出関連のプラス分と、ボリュームや操作性のマイナス分が相殺しあう感じで、総合としては良作ってところでしょうか。
94年からの次世代機のこの手のゲームの中でも、本作は先駆けとなる作品でした。
その辺を重視すれば、名作扱いもありえたのでしょう。
でも、どうなんだろうなって悩んでいる間に、同じ年に『悪逆の季節』とかも出ましたからね。
94年の名作として悪逆を残したこともあって、個人的には良作にとどめました。
まぁ、ある意味本作も悪逆もセットのようなものであり、この2本だけでも3DOを買って良かったなと満足できました。
評価とかは2の次なのであって、こういうゲームがあるんだと、本作が存在したこと、プレイできたことに1番の意義があるように思います。
もし3DOで遊ぶ環境が用意できるのであれば、本作と悪逆の2本はぜひやってもらいたいものですね。
最後に、本作はPSPにも移植されていますが、実写ムービーではなくシルエットに変更されています。
忠告しておきますが、本作はゲーム自体が実写ムービーであることを前提に作られており、
実写ムービーをゲームシステム上において最大限に活かして作られた作品なわけです。
その1番の長所を削る行為は、作品全体の根幹を揺るがすのであり、私には全く理解できないわけでして。
一番の柱がなくなってしまっては、それはもう別物でしょうに。
したがって、もし購入を検討される方は、PSP版と3DO版は別物と捉えるべきかと思いますね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-07-12 by katan
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