恭子のいぢわる!! ~ハチャメチャ大進撃~

1994

『恭子のいぢわる!! ~ハチャメチャ大進撃~』は1994年にPC98用として、ポニーテールソフトから発売されました。

この時期の同ブランドの作品にしては珍しくADVであり、 恭子の圧倒的な存在感と演出の光る作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

主人公の徳川恭子は莫大な資産を有する家のお嬢様であり、しかも超タカビー娘です。
ある時、風邪をひいた兄を不治の病と勘違いしたことから、自らが通う学園で、治療薬の材料である「乙女の白髪のちぢれっ毛」を探すことになります。

<感想>

「乙女の白髪のちぢれっ毛」を持っている女性を探すべく、恭子は同級生から教師まで関係なしに襲っていき、当然ながら行く先々で問題と騒動を起こしていきます。

恭子は凄いお嬢様でタカビーな性格でもありますが、それ以上に、お馬鹿なキャラでもありまして。
そのため、全体としては馬鹿ゲーの雰囲気が強く出ています。
ポニーテールソフトには代表作『ポッキー』がありますし、そのドタバタした馬鹿ゲーを今回は女主人公でやったという感じですね。
したがって、過去作のファンであるならば、まず本作も楽しめると言えるでしょう。

『ポッキー』シリーズと言っても1作目は80年代ですし、そんなの知らないよって人もいるでしょうが、超お嬢様だけど手段を選ばず突飛でもない行動を採るということで、「うる星やつら」の面堂了子を主人公にしたような作品と言えば分かりやすいでしょうか。
まぁ、「うる星やつら」の方も80年代の作品で古いですから、あまり分かりやすくないかもですがw

馬鹿ゲーなので、ノリが合うか否かで印象がガラリと変わりやすいですが、恭子という圧倒的な存在のおかげもあり、個人的には非常に楽しかったですね。

<グラフィック>

こうしたテンションの高いドタバタコメディを楽しめるかについては、グラフィックも大事になってくると思いますし、実際に本作はグラフィックの力も大きかったのでしょう。

ポニーテールソフトは元々美麗なグラフィック、一枚絵の良さに定評のあるブランドでしたが、本作ではカットインや画面内での細かな動きも豊富であり、その演出の良さがドタバタした楽しさを更に増していたように思います。

カットインとかは最近はまた増えてきたけれど、一時期、90年代後半からゼロ年代前半のWIN初期には失われていました。
シナリオしか興味のない人なら気にならないのかもしれませんが、私はやっぱり細かく動いて見た目でも楽しめる方が良いです。

<ゲームデザイン>

ここまでは非常に好印象なのですが、欠点があるとするならば、ゲーム部分になるのでしょう。
上記のように本作はコマンド選択式ADVになります。
コマンド選択式にも優れたものから出来の悪いものまで、いろいろあるわけでして。
あまり経験がない人とか、知らないのに知ったかぶりをする人は、どれも同列に語りたがるのですが、一概にこうだと決め付けられるものではありません。

PC98時代からデビューしたブランドとかだと、コマンド数を減らして、その代わりに全部読ませる、つまりはコマンド総当たりを前提とした構造の作品も結構多いです。
ユーザーの大半が子供のため、クリアさせることを念頭に作った、80年代のゲーム機のADVなんかもそうですね。

それに対してPC88時代のADVとかだと、難解なコマンド入力式時代の流れを受けていますので、コマンド選択でも結構工夫やアレンジがなされていたものです。
その一つが、コマンドの総当たりを防ぐというものがあります。
コマンドを総当たりすれば良いというのはゲーム機であるとか、90年代以降のPCのADVの発想であり、80年代のPCのADVは総当たりを何とか阻止しようとしたものが多く、発想が逆なんですよね。

本作は内容面でも80年代の『ポッキー』の方向性を受け継いでいますが、実はゲームの構造面でも『ポッキー』の方向性を受け継いでおり、つまりは80年代的なのです。
そのため本作のゲームデザインも、コマンド総当たりを防ぐ的な発想になっています。
総当たりを防ぐとだけ言えば聞こえは良さそうですが、そのためにアレンジを加えるからこそ、出来不出来に差が出てしまうわけですね。
アタリもハズレもないのが90年代的なら、アタリハズレの大きいのが80年代的とも言えるでしょうか。

問題は肝心の『ポッキー』なのですが、あるコマンドを選ばないでも先に進めるのに、そのコマンドを選んでいないと途中から先に進めず詰んでしまたり、そうしたコマンドの成否が大分後に分ったりする理不尽な構造でして。
いわゆる遅延BADENDのようなものですね。
確かに、これでも総当たりは防げるし、ゲームの難易度も高くなるのですが、かかる構造は個人的にはあまり出来の良くない選択式と考えます。
本作もその流れを受けていますので、あるコマンドを選んでいないと詰んでしまうおそれがあるし、その成否が大分後で分るタイプだったのです。
この当時は既にノベルゲーや、ノベルゲーに近い構造のコマンド選択式が増えていましたので、本作のような80年代的発想の、しかも出来の良くない方向での構造となると、どうしても好き嫌いは分かれやすかったと思います。

<評価>

今ですと、ADV(ノベルゲー)では評判が良くても、ちょっとゲーム性を加えた作品を作ろうとすると失敗するブランドも多いです。
それを考えると、ポニーテールソフトはレアケースなのでしょう。
後期のポニーテールソフトの作品はオススメという人も結構いるように、ADV以外を作るようになってからの後期作品を好む人は多く、それだけ出来の良い作品も多かったのです。
その一方で、ADVの方がゲーム部分に難点があるケースが多かったのかなと。

まぁ、難点はあるし、その説明に分量を割かざるをえないので、否定的な部分が無駄に長くなってしまいましたが、ハチャメチャなストーリーや恭子の抜群の存在感や、優れた演出などは非常に良かったですからね。
長所だけなら間違いなく名作級の作品でした。
これと似たアダルトゲームというのも、今はもうないんじゃないかな。
ゲーム部分のマイナスもありますので、総合では良作としますが、主観的には好きな作品でしたね。

ランク:B(良作)

Last Updated on 2024-10-08 by katan

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