『Room No.9』は2016年にWIN用として、parade.から発売されました。
アンチBLゲーとでもいうのでしょうか、メタ的な観点からの風刺の効いた作品でした。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・目覚めると、見覚えのない部屋にいた。
親友と二人、夏休みを利用して10日間の沖縄旅行。
空港から送迎バスに乗り、二人で沖縄の風景を楽しんで──そのあとの記憶はない。
ここはホテル?バスの中で眠ってしまった……?
しかし部屋の扉は開かず、窓と思われたものは風景を映す液晶モニタ。
謎の密室の中、情報を求めて表示したディスプレイに映るのは無機質で無慈悲な文章。
「あなたたちは行動分析のための実験対象として選ばれました」
この部屋から出るためには、毎日複数提示される課題のうちの一つを選び、指定された内容の通りに達成しなければならない。
最低でも10日間、10回の選択。選択肢は二つ。
自分の肉体を親友に傷つけさせるか、親友の肉体を弄び、その心を傷つけるか。
この残酷で過酷な選択に翻弄される二人が辿り着く結末は――
商品紹介・・・ずっと友達でいたかった。
クールお兄さん系のイケメン眼鏡男子が徹底的に凌辱され、開発されていく姿
大切な相手を助けるために傷つけなければいけないというジレンマ
ノンケの親友同士が性行為を強要され、苦悩しつつもお互いの身体に溺れていく背徳感
対象を一人に絞り、お互いの変化を濃厚に描く多数のHシーン
幼馴染の仲良し大学生2人が密室に監禁され、性行為を強要される暗めの凌辱系和姦。
謎解きや脱出等のストーリー性は廃し、Hシーンとキャラクターの関係性の変化を重視。
<感想>
本作は、密室に監禁された男性2人が何者かから指示され、相手を傷付けたり、性行為をすることを強要されます。
作品内の多くはエロシーンなので、表面的に見るならばエロ重視の作品となるのでしょう。
もちろん、その観点からも優れた作品ではあります。
しかし、後述するように本作は、極めてメッセージ性の高いストーリー重視の作品でもあるのです。
本作はミドルプライスの作品ということもあり、プレイ時間という意味でのボリュームは、それほどでもありません。
しかし、差分込みのCG枚数は2000枚を超えており、一般的なフルプライス作品を凌駕するほどです。
その中にはグロやスカもありますし、CGのインパクトもあります。
ちなみに、個人的には普通のグロやスカは平気なのですが、注射を打つシーンとか、現実的な描写のところは、なんか痛々しくて結構きましたね。
また、このブランドの作品は、システム周りも非常に充実しており、業界内でもトップクラスにあるといえます。
<ストーリー>
さて、本作で大事なのは、ここからでして。
腐女子にとって、美少年が二人揃うということは、BLへの期待や妄想につながりうることなのかもしれません。
しかしね、どれだけ仲の良い親友であっても、精神的に深くつながった信頼のできる友人であっても、普通であれば絶対に肉体関係にはつながらないのであり、いわゆるBLな関係にはならないのです。
無理やりBLな関係に持ち込もうとするのは、それは腐女子の願望でしかなく、BL本に出てくるBLを強いられた登場人物の、意思を代弁するのであれば、そして無理やり強いられた場合の気持ちを端的に表現するならば、それはまさしく「ずっと友達でいたかった。」に帰着するのでしょう。
本作に出てくる主人公たちは、その限られた言動からだけでも、お互いへの信頼が強くみてとれます。
その描写にはリアリティがあり、説得力もあります。
そして本作において、主人公らは望んでいることは、決してBLな関係になることではなく、ただ友人であり続けたいということなのです。
もちろん、マルチエンドのノベルゲーなので、どちらかの心が折れて、エロエロな方向に向かうENDもあります。
しかし、いわゆるトゥルーエンドは、親友として無事帰還するルートであり、肉体関係を強いられてそれに屈服するのではなく、最後まで普通の友人であり続けることこそが、主人公たちの主張に他なりません。
ところで、本作においては、例えば直接プレイヤーに話しかけるような、露骨で安直なメタ表現はありません。
しかし、作品全体を通してみると、本作は、すぐにBLな妄想をする腐女子に対する強烈な皮肉ないし風刺であり、一見するとエロ重視のBL作品なんだけれど、それでいて、ある意味アンチBLといえるような内容となっていることが、分かるかと思います。
この辺は、BL歴が短い人よりも、長く濃い人ほど刺さってくるのではないでしょうか。
後述する点も含めて、本作は、玄人受けする作品のように思います。
ところで、このメタ的な要素に関して、本作で上手いなと思ったところは幾つかあります。
一つは、本作の黒幕など謎解き要素をバッサリとカットしたことです。
この点については、謎が残ったままで終わることから、しっくりこない人もある程度はいるかもしれません。
昔のことになりますが、私がガンダムのF91の映画を最初に見た時、戦争がきっちり終わっていなかったことから、どうも腑に落ちない気分になったものでした。
しかし、シーブックとセシリーの物語としては、あの終わり方できっちり完結しているのであり、それ以外は蛇足なのだと、後で思えるようになりました。
本作においても、謎解き部分を入れて、真相を描写することも容易だったでしょう。
本作のライターであれば、それでもエンタメ作品として、一定以上の面白さにはなったはずです。
しかし、それではテーマが分散されてしまい、アンチBLとしての主張が弱くなってしまいます。
ページ数や時間枠などの制限がないノベルゲーにおいては、えてして何でも詰め込みがちであり、そうであるがゆえに、一番伝えたいことがぶれがちな傾向にあります。
そんな中で、本当に大事な部分だけを残し、それ以外のシナリオをバッサリとカットした本作の判断は、かなり勇気のいる行為だったと思いますし、よく実行できたものだと思います。
もう一つは、これは若干繰り返しになってしまいますが、本作では露骨なメタ表現はしていないんですよね。
だからまぁ、本作の訴えかけていることに、気付かない人は気付かないままということも十分あるでしょう。
ただね、メタ要素を入れたエロゲは、これまでにも幾つもありましたが、近年は安易かつ露骨に、直接プレイヤーに話しかける作品が多くって。
そんなチープな展開にしないとユーザーも反応できないのか、そんなチープで安っぽい展開の作品ほど、ネット上でユーザーがあれこれ主張していたりして、私にはその光景が滑稽なものにしか見えないのです。
メタな主張もありだと思いますが、その主張をストーリーの中に落とし込めず、安易にキャラに言わせて直接ユーザーに放り投げているだけでは、ゲームとしては失格なわけで、きちんとストーリーの中に落とし込むのが、シナリオライターの仕事なのだと思います。
私が近年のメタゲーに辛めになりがちなのは、そういう最低限の仕事がなされていない、極めて安直な作品ばかりだからなのです。
その点本作は、露骨な表現はないにもかかわらず、作品全体を通すと、ハッキリこちらに意図が伝わってくるわけで、プレイヤーに対する作り手の主張が、しっかりとストーリーの中に落とし込んであると言えるのでしょう。
だからこそ、上手いなと思えたわけです。
さらに加えるとすると、本作はメタ的な主張と、エロがきちんと両立しているんですね。
本作がエロゲであることをきちんと踏まえた上で、それでいてアンチエロゲみたいになっていると。
メタノベルゲーは幾つもありますが、エロとの両立を図る人は、かなり少ないでしょう。
男性向けでも、近年ではHAINさんくらいしかいないかもしれません。
ただ、HAINさんの場合は、主張が強すぎるうえに、それがエロと噛み合っていないものだから、エロだけを目的としてプレイした人には、余計なシナリオが抜きの邪魔になると指摘されることも多いように思います。
その点本作は、きっちりとストーリーに落とし込んでいるので、エロだけが目的だったとしても、エロの邪魔になるようなことはないといえ、その点もまた上手いと思えるわけです。
<評価>
本作は実のところ、あまり私の好きなタイプの作品ではありません。
ポイント制とかいろいろルールがあるのだから、それをプレイヤーに判断させるとか、もっとゲームらしくできる方法があったと思いますから。
内容に合わせてゲームデザインをすべきと考える私には、本来的には合わない作品なのです。
また、この辺をきちんとしてあれば、本作への評価がもっと高くなったことも事実でしょう。
ただ、エロ重視のいかにもなBL作品の皮を被りつつも、アンチBL作品として挑戦的な作品であること、メタ的な主張はこうやって作るのだよと、子供騙しでチープなメタゲーがもてはやされている男性向けメタノベルゲーに対するアンチ作品という要素もあり、これはこれで稀有な存在なのかなと。
また、監禁状態に置かれたキャラを描いたノベルゲーは、今までにも幾つもあります。
しかし、一般向けだと、性描写の突っ込んだところは描けません。
また、男性向けの場合だと、嫌いではない男女が一緒になって、窮地に臨みつつなわけですから、肉体関係を強いられても、そこまで拒絶反応は生まれにくいでしょう。
百合ゲーならば本作のような内容は作れるでしょうが、BLゲーよりも歴史が浅いですし、挑戦的な作品を作って受け入れてもらえるだけの土台が、まだできていないように思います。
そういう意味では、本作は、BLゲーだからこそ、そして成熟したBLゲー市場という土台もあったからこそ、作品として出せたように思うのです。
他にもCG枚数とかシステム周りとかも充実していますしね、それらをひっくるめると、自分の好みはともかくとして、作品としては名作と言わざるをえないように思います。
こういう挑戦的な作品がまだあること、それに出会えることは、ユーザーとしては喜ばしいことでしょうね。
最後に余談となりますが、本作はBLゲーの中でも、わりと濃い方だと思います。
本作に興味を持ったとしても、全くBLゲーに耐性のない人は、ちょっときついと思いますので、まずは男の娘系のライトなのから入った方が良いでしょう。
いきなり本作をやって、変なトラウマができても、こちらも責任は負いかねますしね。
あと、本作の主人公たちが閉じ込められた部屋がRoom No.9なのですが、個人的には『Room No.8』がプレイしたいですねw
家族間で入り乱れって方が、個人的には興奮できそうですから。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-09-08 by katan



コメント
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このゲームは先日クリアしました。
こういう設定の場合、普通の作品だと、黒幕の正体は?目的は?などの部分の説明が入りますが、バッサリとカットしてますね。
だから人によっては、何だこのゲームは?って思うかもしれませんが、その部分は決してこの作品のメインではないですよね。
メインの二人の関係性こそが、この作品の肝であって、必要な事を必要なだけ描いた、尖った名作だと思います。
フルプライスであれこれ詰め込まず、必要十分なミドルプライスを勝負の場に選んだのは正解でしたね。
トゥルーエンドはまさに納得のいく終わり方でした。
katanさんのおっしゃる通り、これはある程度以上BLゲーの経験がある人向けですね。
場数を踏んだユーザーほどハッとさせられる衝撃的な作品でした。
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> 必要な事を必要なだけ描いた、尖った名作だと思います。
そうですよね。
最近は尖った作品が少ないという人がいますが、そういう人こそ、この作品をプレイすべきだと思います。
まぁ、ただ、良く切れる名刀は切られたことにも気付かないなんて例えもありますが、この作品も、尖りすぎて逆に尖っていることに気付かれないタイプの作品ではあるので、そこが難しいところではありますけどねw
> 場数を踏んだユーザーほどハッとさせられる衝撃的な作品でした。
私は、好みでいうと、この作品は好きではないのです。
本文中にも書いたように、ゲームデザインを凝った方が好きですし、エンタメでも良いから壮大な全部盛りの作品の方がゲームシナリオとしては好きです。
そもそも、テーマへの主張に対する無駄のないストーリーだけを求めるのであれば、小説を読んだ方が絶対に良いわけでして。小説ではなくゲームに可能性を求めたのは、小説では駄目とされるような、いろんな要素を詰め込んだ全部盛りを求めたからってのもあるんですよね。
だから無駄のない本作は、私に向いていない作品なのです。
でも、他方で、シナリオが~とか、この作品のテーマは~とか、そういうことばかりをいう人もいるし、それもまた物に対する一つの考え方として、完全には否定できない部分もあるのでしょう。
もっとも、そういう観点から本当に優れた作品があるのかとなると、私はほとんどないと思っています。
本作は、上記観点から評価されるべき数少ない例外です。そして、一杯経験をして、なおかつシナリオにこだわる人ほど評価するだろうし、また評価されるべき作品なんだと思いますね。
まぁ、シナリオが~とかうるさい人はネット上には多いものの、本当にそこにこだわる男性ユーザーが、この作品に出合えるかが、ちょっと難しそうなんですけどねw
それだけに、まだこういう作品があるのだということで、出会えた人は幸運だったといえるでしょうね。