『恋ではなく -It’s not love, but so where near.』は、2011年にWIN用として、しゃんぐりらすまーとから発売されました。
着眼点は悪くなかったのですけどね・・・
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
『事実上複製が不可能な……世界にたった一つしか存在しない、特別な一本を撮らないか』
晩秋。日本海に面した古い街の片隅。
かれらはある少年のそんな言葉に導かれて、古びた8mmカメラをまわしはじめる。
『卒業までの半年で、あいつとの答えをださなきゃな』
瞬きする小さなファインダーの中にうつるのは、それぞれの思惑、愛憎、打算、そしてプライド。
『……これはもしかしたら、好きって感情とは違うのかもしれない。でも……』
やがて、レンズを通して明らかになっていくのは、必ずしも正しい気持ちではない……それぞれの、真実の望み。
共通の幼なじみ、阿藤扶の『卒業までに映画を一本撮りたい』という望みにこたえ、数年ぶりに互いに言葉をかわす主人公、槇島祐未と八坂典史。
映研、写真部、デジタルメディア同好会を巻き込み、やがて撮影隊は日本海の孤島、飛島ロケを敢行する。
皆で過ごすクリスマス、因縁のバレンタイン。
友情と恋愛、そしてライバル心に翻弄されながらも、かれらは時には映画を、時には写真を撮りつづける。
だが、卒業後の進路が異なる彼らに、残された時間はけっしてそう多くはなかった。
そして、クランクアップの時、彼らが選ぶ選択とは?
<感想>
何となく絵が気になった作品で、原画はトモセシュンサクさんですね。
どうもキャラの輪郭が気になってしまうのだけれど、過去作よりはマシだし、一枚絵とかグラフィック全体で考えれば良好なのでしょう。
問題があるのはストーリーの方ですね。
単なる恋愛ものではなく、そこに写真・映画を絡めているのですが、単に知識を並べただけでストーリーと上手く絡んでいません。
脳内知識だけで作られることの多い他のエロゲと比べれば、調べただけはマシなのかもしれませんが、知識・薀蓄を羅列すれば済むという問題でもないので、もう少し練り込んで欲しかったです。
もう少し練り込んであれば別だったかもしれませんが、ストーリーそのものも平凡かつ単調でして。
それでいて遊びもなく、シリアス一辺倒なものだから、読んでいて無駄に疲れてくるのです。
もう少し緩急というかアクセントを付けるべきだったのかなと。
本作はダブル主人公であり、最後で結びつくカップルは決まっています。
個別ルートというのは、その二人の間に入る、即ち三角関係を形成する第三者が異なるだけにすぎません。
かかる構造は恋愛ゲーでは珍しく、陵辱系でたまにあるパターンですね。
陵辱というかNTRゲーならば、かかる構造にも意味を感じられるのだけれど、本作にはNTRシーンもありませんし、結果として三角関係による緊張感も乏しくなります。
個別ルートの存在を活かしきれていませんし、アイデアを単純に形にしただけで、ゲームデザインに疑問を持ってしまいます。
似たような展開を何度も見せられる上に、最後のグランドルートでは個別否定をされてしますので、単調さに伴う疲労感も膨れるばかりでして。
これ、おもいきって単一ルートにして余計なものバッサリ切って、低価格商品で出せば、面白くもなったんじゃないかな。
企画内容に合わないのに無理にフルプライスで出そうとした、その保守的な作品作りが失敗を招いたのかなと。
シナリオも、個々のテキストは良いと思うのですけどね。
例えば文章力のあって読みやすい論文を書く人が、上手い小説を書けるとは限らないということと同じなのかなと。
部分的には良い文章に見えるのだけれど、どのキャラにもライターの思想・主張が反映されすぎていて、キャラの書き分けが上手くいっていないように感じたわけでして。
それで文章力はあるかもだけど、ライターとしては疑問符が付くような印象になってしまいました。
<評価>
普通の恋愛ゲーではなく変化を加えようとした点は良いと思うけれど、アイデアを短絡的に形にし過ぎた作品でしたね。
誰かしら全体を統括できる人がいれば、大きく変わる可能性もあったのかもしれませんが。
読み物は読み物で構わないとしても、ゲームとしての読み物という意味をもう少し考えて欲しかったなと。
ライターの文章さえあれば良いという人なら楽しめるかもしれませんが、作品としては粗が多く残念な作品でした。
ランク:D(凡作)
Last Updated on 2024-12-21 by katan