『シャドウ・オブ・ザ・コメット』は、1995年にPC98用として発売されました。
オリジナルの英語版は、1993年に『Shadow of the Comet』という名で発売されています。
本作は、それを国内に移植した作品になります。
<はじめに>
出だしから変なことを言うようですが、本質的に日本人はファンタジーを受け付けにくい人種だと思います。
おいおい、こんだけファンタジー作品が溢れかえってるのに、お前は正気かと思う方もおられるでしょう。
でもね、国内で溢れかえってるのは、いわゆる商業ファンタジーばっかでして。
ファンタジーの本質は如何に独創的な世界を作り上げるかであり、中世ヨーロッパ風みたいなSFC時代によくあった設定は、それだけでファンタジーとしては失格です。
本物のファンタジーが何かを知ってもらいたいが故に、日本ファンタジーノベル大賞なんてのも創設されて久しいですけどね。
ホラーと違ってサッパリ浸透していないでしょ。
元来保守的な日本人には、独創的かつ斬新なものは普及しないのです。
(余談ですが、日本ファンタジーノベル大賞の受賞作には、素晴らしい作品が多いです。
受賞作に含まれる当たり率はかなり高いでしょう。)
もっとも、新しいものを作ることだけが全てでないのも確か。
世界設定においても、流用することで磨かれていくケースもあります。
クトゥルー神話をご存知でしょうか。
これなんかは1人の作家が作った設定をもとに、多くの作家が手を加えることで充実していった成功例の、最たるものでしょう。
国内でも多くのクトゥルー作品がありますしね。
日本人は独創的なものを作るのは苦手だけれど、流用しそこに更に磨きをかけ1級品にするのは得意です。
しかし、そこに文化が絡むと難しい面もあるんですよね。
海外作品で忍者とか武士が出てくる作品って一杯あります。
でも日本人が見ると、違和感を感じる作品の方が多いですよね。
それは逆の場合にも当てはまるわけです。
中世ヨーロッパ風の日本人が好むファンタジー世界や、クトゥルー神話物とかは、あっちが本場なわけです。
私らはよく解らないから普通に楽しめるけれど、本場の人には違和感だらけだったりするのです。
まぁ、外人がどう感じようとね、俺らが楽しめればOKじゃんってのもあるでしょう。
所詮人は人、自分は自分ですからね。
とはいえ、たまには本物に触れてみたいじゃないですか。
自分の認識がずれてるならば、それを直してみるのも良いことですし。
このゲームの原題は『Shadow of the Comet』。
海外からの移植作品であります。
海外でも高評価を得た本作は、本物のクトゥルー神話を理解するうえで、数少ない非常に意味のあるゲームだったのではないでしょうか。
<感想>
製作したのはInfogrames社で、国内では『アローンインザダーク』で有名ですね。
そういうわけで、クトゥルー物は得意なわけです。
もっとも『アローンインザダーク(AITD)』は元祖3DアクションADVでした。
『バイオハザード』とかの先駆けですよね。
そのため、ストーリーよりも、ゲーム部分に比重が置かれていた感がありました。
一方の本作は、コマンド選択式のADVで、ストーリー重視といった感じでした。
とはいえ、国内のコマンド選択式とは違って謎解きも多いし、RPGみたいな3人称視点(3rd person perspective)なので、かなりプレイ感覚は違いますけどね。
どっちかと言うと、P&C(ポイント&クリック)の方が近いのかもしれません。
つまりは、P&Cとコマンド選択式の中間みたいな感じなんですよね。
そうですね、3Dではないけど『Grim Fandango』みたいな感じでしょうか。
まぁ、いずれにせよクトゥルー世界を満喫するという意味では、AITDよりもこっちが上でしょうね。
93年というのは、海外のADVが非常に豊富な年でした。
MYST、GabrielKnight、DOTT、SAM&MAX・・・ってな感じで。
そんな中にあって、本作はかなりの高評価を得ました。
それだけでも品質が保障できるというものでしょう。
評価というのは当然個人差がありますが、私の評価はかなり低い部類じゃないかなって思います。
凄く良く出来てるとは思うけれど、93年製の他の名作と比べるとどうしても際立った特徴がないのでね。
それ故に、私的には良作止まりです。
クトゥルー物がそれ程好きでもないってのも大きいですかね。
なので、クトゥルー物が好きな人とかには、もっと価値があるんじゃないかなと、そんな気もしますね。
とりあえず、こういう雰囲気のゲームを日本語で楽しめる機会は少ないです。
『THE DIG』にも言える事ですが、見つけたら即確保をしておくべきでしょうね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-10-29 by katan
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