自律機動戦車イヅナ

2006

『自律機動戦車イヅナ』は2006年にWIN用として、TEA-CROWNから発売されました。

いかにも隠れた名作と言われそうな雰囲気なんだけれど、男性も女性も楽しめる良質なSF作品でした。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
内容的にはSFものであり、具体的にはロボット系ですね。

あらすじ・・・両親を亡くし、歳の離れた兄と2人きりになった朝倉晶乃。
しかし、兄・総一郎は彼女を残し、単身アメリカへ。
残された晶乃は伯母夫婦に引き取られることになった。それから数年。晶乃は、アメリカから帰国し大手製薬会社「箱実」の研究員として働く兄と暮らすため、田舎町・津川にやってきた。
「箱実」が運営する学園に転入した彼女を待っていたのは幼なじみの杉田宗親・高柳肯との再会だった。
ある日、ふとした偶然から晶乃は彼らの開発する「自律機動戦車イヅナ」の存在を知ってしまい・・・。

<感想>

本作は、結論としては年齢・性別問わずに幅広い層が楽しめる作品だし、アニメ化とかされたら名作として人気が出る可能性も高い作品だと思っています。
もっとも、その懐の深さが逆に、PCゲーとしてはマイナー化する要因になったのかもしれません。

どういうことかと言いますと、本作は年齢制限のない一般PCゲーになります。
年齢制限がない方が本来は多くの人がプレイできるはずなのだけれど、PCゲーに関していうならば、実際には18禁の作品しかチェックしない人も多いので、本作の存在すら知らない人も多くなってしまうでしょう。

しかも本作の場合、一般PCゲーであるのに加え、乙女&ボーイズゲームと表記されています。
これが誤解を招いてしまった可能性は否定できないでしょうね。
男性でも百合ゲーが好きな人もいれば嫌いな人もいるわけで、全員が同じなわけではありません。
それは女性も同様であり、女性主人公が男性に恋をする乙女ゲームを好む人が、必ずしもBLゲーを好むわけではないのです。
逆にBLゲー好きが乙女ゲーを好むとも限らないですしね。
だから乙女&ボーイズと書かれてしまうと、自分の嫌いな属性の入った作品は購入しないという人なんかだと、それだけで敬遠されてしまいます。
それに、そもそも男性プレイヤーなんかだと、女性向けってだけで避ける人もいるでしょうし。

でもね、BLじゃなくてボーイズゲーなわけで、本作はBLゲーではないのです。
ここで本作の構造を説明しますと、まずは主人公・晶乃視点でゲームは始まります。
晶乃視点の物語では、男性との恋愛要素も少し含まれているので、これは乙女ゲームであるとは言えるのでしょう。

そして晶乃視点でのストーリーが終わると、今度は兄の総一郎視点で物語が始まります。
総一郎視点は、晶乃視点と同じ時間帯を別角度から見たものであり、つまりは同一時間軸上を多角的に捉えた、マルチサイトの構造になっているわけですね。

この総一郎視点では、他の男性キャラとの友情は深まりますが、恋愛になるわけではありません。
したがって、(晶乃視点で進行する)乙女ゲーム+(兄視点で進行する)ボーイズ(友情)ゲームとなるわけです。

また、乙女ゲームの要素はあると言っても、それは主要素ではなく、物語の中心はあくまでも、自律機動戦車イヅナを巡る物語であり、SF作品としての色合いの方が強いです。
だから幅広い層、特に骨太なSF作品がプレイしたい人だと、プレイしたら刺さると思うのですが、そもそも知るキッカケに乏しい作品となり、隠れてしまいやすいのだと思います。

さて、上記のように本作の中心部分はSFにあり、ロボットの自我とは何かとか、ロボットの死とは何を指すのかとか、考えだすと深くなるテーマも含まれているのですが、ここは誰にでも分かりやすい感じで、上手く伝えていたのかなと。
ノベルゲーでは無駄に複雑なシナリオが好まれる傾向もあるけれど、考察必須とか一読して理解できない作品はライターの力量が足りないのであって、本来は本作のようなシナリオこそが評価されるべきなのでしょう。

本作の雰囲気を単純に伝えるならば、良い意味でロボットアニメみたいな感じとなるでしょうか。
内容的な面もありますが、それに加え本作は章仕立てで進行し、全5話という構造になっています。
各話の終了時には次回予告が流れ、次の話が始まるとOPが流れますので、ますますロボットアニメを見ているような感じですね。

それでいて最後は、イヅナからの手紙を読んで、人によっては泣けてくることもあると思うので、泣きゲーの要素も含まれていると。

イヅナは自我があるかどうかも分らない、無機質な物体なのだけれど、晶乃に雪がかからないように翼をそっと広げたりとか、言葉ではない、さりげない行動に魅力が詰まっていまして。

男性向けの某作品でキャラの人気投票を行ったら蟲が一位でしたが、本作も人気投票でイヅナが一位だったんですよね。
主人公や攻略対象キャラではなくイヅナが一位を取ったという事実だけでも、人間以上に魅力的に描かれていることが、未プレイの人でも理解できるでしょう。

<評価>

シナリオを読んでいて感じたことですが、本作は、いわゆる男性向けノベルの文法からも、女性向けノベルの文法からも外れているのだと思います。
あぁ、まだこういう変に業界に染まっていない作品が残っていたんだなって、何かちょっとホッとしました。

もっとも、それ故に、例えば私は乙女ゲーがプレイしたいのだと、テンプレな王道な内容でも構わないから、恋愛の濃いのをプレイしたいというような人の期待には応えていません。
もちろん典型的なギャルゲーとも全然異なりますしね。
だから今の売れ筋が好きでたまらない人が本作をプレイしたら、地味に感じてあまり良さを理解できない可能性はあります。
でも、そんな定型染みた型にはまっていないからこそ、誰がやっても新鮮な感覚でプレイできると思うんですよね。

これはホント、知る人ぞ知る良質な作品って感じですね。
総合でも十分名作といえるでしょう。

派手さはないので、凄いストーリーとかって期待されると、少し違うのだろうけれど、じんわりと心にくる作品です。
もしノベルゲーの売れ筋商品に飽きてきたら、そしてストーリー・シナリオの良い作品を求めているのであれば、そんな人にこそ本作はオススメだし、プレイしてもらいたいですね。

ランク:A(名作)

自律機動戦車イヅナ [初回限定版]

Last Updated on 2026-02-22 by katan

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