晴れのちおおさわぎ!

1989

『晴れのちおおさわぎ!』は1989年にPC88用として、カクテルソフトから発売されました。

その後の美少女ゲームの原型を作ったと言っても過言ではない、素晴らしい作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。

PC98末期にアダルトゲームを始めた人には、よく『晴れのち胸さわぎ』の間違い?って勘違いされたりもしましたが、本作が『晴れのち~』シリーズの第1弾になります。
もっとも、シリーズと言っても直接なつながりはないですけどね。
設定や構造が似てるってだけでしたから。

本作は、PC88版の他にPC98版も発売されていて、PC98版にはOPが付いています。
そのOPが結構良い出来ですので、もし今からプレイするならば、98版の方が良いかもしれません。

<感想>

ストーリーは、校長から校内での幽霊騒ぎの調査を依頼された主人公が、ヒロインであるオカルト部部長と共に、事件の真相に挑むことになるというものです。
調査を進めるにつれ、実は痴漢の仕業と分かり、それで事件は一件落着かと思われたのですが、一向に幽霊騒ぎは解消しません。
また、調査を進めるうちに大昔の事件との共通点もあらわれ、時を超えた壮大なものに・・・って感じになります。

フラグ潰しに時間をかけさせるわけでもなく、ドタバタ系ラブコメ路線で終始プレイヤーを楽しませ、話も小さなものからだんだんスケールが大きくなっていき、それでいて最後はキッチリと纏め上げてくる。

これは、本当に良く出来ていましたね。
アダルトゲームというか、美少女ゲームはこう作るんだよっていう、本当に良いお手本のような作品でした。
特にアイデスはラブコメ系のADVを得意とするようになるのですが、その傾向がハッキリするのも、この作品からなのでしょう。

私は前年に発売された『リップスティックアドベンチャー』(LSA)も大好きなのですが、LSAと本作は、作品に対するアプローチが少し異なります。
というのも、LSAからは、アダルトゲームでもここまでやれるんだってことは伝わってきましたが、どちらかと言うと一般推理ゲームと同じベクトル上にあったかと思います。
つまり、一般もののADVの構造を維持しつつも、アダルトゲームとして再構成したのが、LSAということですね。

しかし、本作はそういう一般推理ADVとは違って、ストーリー性とキャラ・ヒロインらの両立という、美少女ゲームとしての新たな方向性を見出したイメージでした。
たとえるなら、RPGでいうところの、DQとFFの方向性の違いとでも言いましょうかね。
微妙なニュアンスの違いなので、上手く伝えられず申し訳ないのですけれど・・・

まぁ、面倒臭い説明を抜きに考えても、例えばPC98時代には、学園内で何か事件が起きたから、主人公がその解決に乗り出すってパターンの作品が非常に多く、一時期は数的には一番の多数派にもなっていたと思います。
以前にコラムを書いた時に数えたりもしたのですが、昔はミステリーものばかりプレイしていたような気がするにもかかわらず、PC98で純粋なミステリーものって、実は結構少ないわけでして。
じゃあ、私の勘違いかというと、必ずしもそうではなくて、学園を舞台にして何かの事件をきっかけとする作品が非常に多く、広い意味でのミステリーものが多かったということなんですね。
そういう一大人気ジャンルで古い物に何があるかを遡っていくと、本作辺りに辿り着くのかなと思うわけでして。

89年には、ストーリー・シナリオの優れた作品が多く、アダルトゲームがストーリー・シナリオ重視に傾いた年とも言えます。
だから本作以外にもストーリーの優れた作品はあるのですが、仮に後世への影響をも加味して考えるのであれば、完全に本作が抜き出てくるように思うのです。

<キャラ>

何と言ってもキャラが可愛かったですね。
人の好みはそれぞれですが、88年までのアダルトゲームのキャラって、どうにも可愛いと思えるのが少なかったんですよね。
もちろん、『悪女伝説2』のような例外もありますが、そんなのは本当に例外です。
89年になってようやく可愛いキャラのゲームが増えてきたように思えます。
本作もまた、そうした流れを象徴する中の1本といえるのでしょう。

<ゲームデザイン>

ゲームジャンルは、コマンド選択式ADVでした。
これだけだと何の特徴もないようですが、ようは使い方の問題ですね。
これまでのアダルトゲームはHシーンが到達点であり、そこに至るまでの時間潰しに、ひたすらフラグ潰しってゲームも多かったわけでして。

それに対して本作の場合、ストーリーを全面に押し出しており、余計なフラグ潰しがあまりなかったのが大きかったですね。
この発想は、今日のノベル系ADVにも繋がるものと言えるでしょう。

<評価>

本作は古い作品ですが、その後のアダルトゲームに通じる要素が一杯含まれています。
一方で、本作以前には、これだって言い切れる作品はないわけでして。

アダルトゲームの元祖が何であるかは、定義次第で変わってくるでしょう。
ただ、その内容において今日のアダルトゲームの原型となった、そしてアダルトゲームを発展させた歴史的な一作となると、おそらく本作なんじゃないかなって思います。
その意味で、本作の価値は永遠に損なわれることはないと思うんですよね。
そのため本作は、総合でも後の美少女ゲームを形作った文句なしの名作だといえるでしょう。

ちなみに、アイデス系の看板作品として、きゃんきゃんバニーシリーズがあり、その1作目も89年の発売です。
もっとも、初代きゃんバニはナンパゲーであり、80年代半ばから続くナンパゲー路線の発展形と言えるのでしょう。
すなわち、従来の人気路線の後継作としてきゃんバニがあり、従来と異なる新たな路線として本作があるということですね。

それにしても、このシリーズは他の作品も良作ばかりで、当時は結構ファンがいたんですよね。
続編を期待している人も少なからずいたと思うのですが、もう出ないんですかね?
そもそも作れる人が残っていないか・・・
「晴れのち~」シリーズの熱狂的ファンというわけでもないのですが、伝統のあるシリーズだけに、またいつか出してもらいたいものですね。

ランク:AA-(傑作)


Last Updated on 2025-05-17 by katan

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