Behind the Frame ~とっておきの景色を~

2021

『Behind the Frame ~とっておきの景色を~』は、2021年にPC用として、Silver Lining Studioから発売されました。
非常に完成度の高い、素晴らしい作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはP&C式ADVになります。

概要・・・夢を目指す画家となり、直接筆を取って絵を完成させていく謎解き型ゲームです。
時には無愛想な隣人や気ままな猫に振り回され、時には仕掛けを解いて必要な色を揃えて。
色とりどりの思い出たちはやがて画布の上で一つに繋がり、キャンバスの向こうにある、あの頃の懐かしい記憶を呼び覚まします。

<感想>

ジブリのようなアニメ絵のゲームがある、ちょっと面白そうかな、プレイしたきっかけは、その程度だったように思います。

本作は、セル画風の2Dで描かれており、要所要所で高品質なアニメーションが流れます。
これだけであれば、日本のノベルゲーでも見かけることはありますので、特に目立たないのかもしれません。
しかし、本作は、P&C式のADVであり、画面内のあちこちを、マウスでクリックすることになります。
そして、その画面は、360度ぐるりと見渡すことができるのです。
360度ぐるりと見渡せるADV自体は、97年から存在します。
しかし、本作のような2Dのアニメ系の作品では、360度ぐるりと見渡せる作品はほとんどなかったのではないでしょうか。
少なくとも、そうした作品で、かつ、きちんと内容を伴った作品は今までに出会ったことがありませんでした。
そのため、私の中でも、いつか満足できる作品に出会いたいという想いが、小骨が喉に刺さったかのように、ずっと残り続けておりました。
そんな私ですから、本作をプレイして、この画像でぐるりと見渡せること自体に、まず驚きましたし、それでいて要所要所で効果的なアニメーションもあることから、このグラフィックだけでも非常に満足できました。

本作の主人公は画家であり、作中で筆をとって絵を塗っていきます。
ADVなので、謎解きがあるのですが、その謎解き部分の多くが、簡単に言ってしまうと塗り絵パズルなのです。
この謎解き部分については、その質自体を単独で考えると、特に秀でているものでもないのでしょうし、MYST系のADVに慣れているような人には、難易度も低めに感じることでしょう。
したがって、塗り絵型のパズルというジャンル自体は、まだまだ発展の余地が残っていると思います。

しかし、ADVの謎解きって、それだけではないはずです。
私は、ストーリーに則したゲーム性を入れることが重要であると、普段から言っていますし、そういう作品は評価されるべきなのでしょう。
本作の場合、主人公が画家なわけですから、キャンバスに絵を描くという塗り絵型パズルを導入することは、作品の内容的にも極めて自然なのです。
この作品にパズルを導入するのであれば、この形態がベストという点で、ストーリーとゲーム性の一体性がありますし、非常に好印象です。

次に、本作は、ナラティブゲーと紹介されることが多いです。
ナラティブという概念が注目されだした時期とも関連するかなと思いますが、ナラティブなADVで良さそうな作品を探すと、一時期、ウォーキングシミュレーターばかり出てきまして。
ウォーキングシミュレーターというジャンル自体、私はパズルのないMYST系のような、炭酸の抜けたコーラみたいに感じて、あまり好きではありませんでした。
まぁ、私の好みは置いておくとしても、ウォーキングシミュレーターばかりという状況はどうなのと思ったわけでして。
ウォーキングシミュレーター以外にナラティブは成立しないのか、ADVの他のジャンルでも成立するところを見たいと思っていたところ、本作が見事にナラティブな作品を実現したことから、これだよこれと、非常に満足することができたのです。

ストーリーという観点からは、もう一点あります。
国内のノベルゲーとかですと、伏線の凄い作品は、それだけで過剰なまでに高く評価される傾向があります。
しかしそもそも、伏線は作品を盛り上げるための一つの要素でしかなく、伏線が良ければそれだけで高く評価されるような昨今の風潮には、個人的には凄く疑問を抱かざるを得ません。
その点は置いておくとしても、私が気になっていたのは、ノベルゲーで絶賛される伏線の多くが、単に事実を伏せているだけの、いわば単なる後出しじゃんけんってことなのです。
そんなの伏線でも何でもないと思いますし、そうした作品は、世間はどうあれ、私は低く評価してきました(まぁ、CSは小中学生もプレイするので、普段小説を読まない人が、ゲームで出会ってビックリしたというのは理解できなくはないのですが、作品としては評価すべきではないのでしょう。)。
伏線の素晴らしいADVとして紹介できる近年の作品がなかなかなく、これまた小骨が喉に刺さったような状態が何年も続いていました。

その点、本作は、普通にプレイしていても、違和感なく最後までプレイできるでしょう。
ただ、じっくりプレイしていたり、或いは2週目をプレイしたりすると、一見すると些細に思える出来事にも、実はこういう意味があったのかと、ハッと気付かされることが幾つもでてきます。
したがって、本作は、伏線の素晴らしいADV、考察のしがいのあるADVとしても優秀なのだと思います。

<評価>

本作自体は小粒な作品であり、決して大作ではありません。
しかし、本作は、私がADVにおいて近年注目している点をきちんと押さえた作品であり、ケチのつけようのない素晴らしい作品でした。
小粒な作品ではありますが、これは傑作と言って良いのではないでしょうか。

私が自分でゲームを作ったら、或いは作ろうとしたら、おそらくこういう方向性の作品だろうなと思ったわけでして。
本作に出会えて、本当に良かったと思いますし、できればこのサイトを訪れてくれている方にも、ぜひとも本作をプレイしてもらいたいですね。

ランク:AA-(傑作)

Last Updated on 2024-04-28 by katan

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