『Forget me not -パレット-』は、2001年にPS用として、エンターブレインから発売されました。
第4回アスキーエンタテインメントソフトウェアコンテスト(Aコン)の、グランプリ受賞作品をPS用に移植した作品でした。
<概要>
元々は『パレット』という題名で、RPGツクール95で制作されたフリーゲームでしたが、上記のグランプリを受賞し、そのあまりの評判の高さから、2001年にPS用として移植されました。
PS用はシステム部分やストーリーの根幹には変更ないのですが、オリジナル版のグラフィックを強化しイベントを若干増加、OPムービーや部分的に音声を追加してあります。
商品説明によるあらすじは以下の通り。
「ある風の強い夜、精神科医シアンは1人の女性の訪問を受けます。
しかし、その女性は部屋のなかに入ろうとせず、ドア越しに銃を付きつけ、ある少女の記憶を取り戻すよう、強要するのでした。
「あたしたちには時間がない!」突然、深夜の事務所に鳴り響く電話のベル。
受話器の向こうからは少女のか細い、そして不安げな声が聞こえてきます。
「赤い、赤い色しか思い出せないです」。
シアンは決意し、受話器越しに語りかけます。「深くイメージするんだ」……と。
<感想>
記憶を失った少女の精神世界が主な舞台となり、少女の記憶を取り戻していく過程で真実が分かっていくという内容の、サスペンスADVになります。
少しずつ真相が分かっていく作品ですが、事案が結構複雑なので、入り組んだ話が好きな人向けなのでしょう。
ゲームシステムは移動式のADVで、つまりはRPGみたいにマップ内を直接移動させるわけですね。
特徴的なのは、画面内に白丸や白枠だけが表示され、それに触れると人物や物体が表示され、その人物や物体に関することを思い出します。
順次触れていくことで、ゲームが進行するわけですね。
これはむしろ演出面の話であり、ゲーム性そのものではないのですが、少しずつ思い出していく記憶をシナリオ面だけでなく視覚的にも表現したものであり、アイデアは非常に良かったと思います。
ゲームとしては、本作ではライフが存在します。
これは移動したり障害物と接触することで減少し、ゼロになると開始ポイントからの再出発になります。
これによりパズルゲーム的な効率の良い行動が求められ、ゲーム性の向上に貢献していると言えるでしょう。
もっとも、個人的にはボリューム不足を補うための時間稼ぎに思え、あまり楽しいとは思えませんでいした。
<グラフィック>
白丸から触れた瞬間に物体が表示される感覚は新鮮で、演出的には良かったと思います。
赤だけが強調された色使いも独特で雰囲気作りに貢献していましたし。
もっとも、グラフィックは、画質こそオリジナルより綺麗になっているのですが、元がRPGツクール95で作られていることもあってか、SFCレベルのグラフィックしかありません。
時代はPS2になっているだけに、この移植では手抜きに思われても仕方ないでしょう。
また、オリジナルより綺麗になったと言っても、むしろシンプルな魅力が削がれたとも言えますし、全体的に中途半端になってしまった印象でした。
<サウンド>
オリジナルは、効果音などの使い方が絶妙なのも魅力の1つでした。
本作は一部では音声もついていますし、表面上はグレードアップしているはずなのですが、個人的にはむしろアレンジにより魅力が削がれた感じでした。
<評価>
オリジナルの持つアイデアやセンスは抜群であり、グランプリ受賞及び各所での高評価も頷ける内容だと思います。
フリー版でも構わないので、一度は触れてみる価値のある作品でしょう。
フリーゲームという枠でなら、文句なしに傑作ですし。
しかし商業作品として対価を払う場合、グラフィックやボリューム面での不満から、この価格で出すのは高いと思えてしまいますし手抜きにも見えてしまいます。
そのため、総合では良作とします。
元のアイデアが良かっただけに、できればきちんとした作品として発売して欲しかったなと、その点が非常に残念でしたね。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2025-02-24 by katan
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