カミカゼ☆エクスプローラー!

2011

『カミカゼ☆エクスプローラー!』は2011年にWIN用として、Clochetteから発売されました。

ワイド画面を用いた萌えエロ系の代表作として話題になった作品でしたね。

<感想>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

ストーリーは、良くも悪くもこの時期の流行路線を最大公約数的に纏めたみたいな感じの作品になります。
学園を舞台にし、超能力バトルがあり、ヒロインとのいちゃラブがありと、良く言えば現在の主流のユーザーの需要にきちんと応えたとなるし、悪く言えばいかにもテンプレなゲームとなるのでしょう。

増えつつある萌えエロ系を代表する作品とも言えるものの、何か新しいものを得ることができるというものでもないので、個人的には物足りなかったのですけどね。
他方で、今のエロゲがどういうものかを掴みやすい作品ですし、不快になる要素も少ないので、入門作としては非常に良いのだと思います。

またそういう類の作品ですから、最近どういうのが人気なのか分らないという、ちょっとエロゲ離れした人が本作発売時の状況を把握する上でも、ちょうど良い作品なのかもしれません。

<グラフィック>

主流の傾向という意味は、ストーリー以外にも妥当します。
その最たるものがグラフィックなのでしょう。

原画そのものについては、黒目が大きすぎるのが気になってしまい、私自身は特に良いとも思わないのですが、世間では評判が良いわけですから、これが今のエロゲにおける人気路線なのでしょうね。
ただ、漫画やギャルゲーなど他の二次元ジャンルの流行の絵と比べると、それらとも傾向が異なるわけでして。
何となくエロゲのガラパゴス化を感じたものでした。

そういう違和感は他にもありまして。
例えば、本作は立ち絵の数も豊富ですし、一度の会話の中でも頻繁に変わります。
立ち絵に関する良し悪しを数の多さや動きの頻度で図るならば、本作は立ち絵の優れた作品となるのでしょう。
また、立ち絵の優れた作品をグラフィックや演出の優れた作品とするならば、本作はグラフィックも演出も優れた作品となるのでしょう。
実際、そういう風に評する見解も見かけますし、立ち絵を増やすことが良いとされる現状では、本作は「良い作品」とされやすいのだと思います。

しかし、私にはあまりにも頻繁に変化させる立ち絵に、かえって違和感を覚えてしまいました。
普通の人間の会話だって、そんなに派手に動きませんよ。
まぁ挙動不審の人なら別かもしれませんが。
立ち絵をパタパタと人形劇みたいに動かすごとに、かえって作り物としてのチープさを感じてしまいます。
ゲーム機のゲームのキャラは、よりリアルで自然な動きを追求しています。
アダルトゲームにしても自然な動きを求めた時期もあったのですが、現状では自然な動きからはかけ離れ、
小手先の派手さを求めるように向かっているように感じられ、それは大手のギャルゲーの求める方向性とも異なっています。
本作のようにひたすら立ち絵をパタパタ動かす方向を追求するのも、確かに一つの方向性ではあるのでしょう。
だから一概には否定しないのですが、私の求める方向性や現実と異なることはもちろんのこと、ゲーム機の作品ともかけ離れていくわけで、この点でもエロゲってどんどんガラパゴス化しているなと思ったものでした。

グラフィックという項目と少しずれますが、本作に関しては萌えエロ系の代表として語られることもあります。
この年における萌えエロ系の代表格という意味では、異論はありません。
しかし、その意味合いに関しては、いろいろ条件が付くのでしょう。
萌えエロという方向性は、例えば『フローラリア』(2002)のように、本作より大分前から見かけることができます。
(まぁそもそも萌えとエロは排斥しあうものでもないし、90年代の萌えゲーにはエロの濃いものも普通にあったので、萌えエロという言葉自体がナンセンスだったのでしょう。
しかしゼロ年代に入る辺りからエロはいらないという論調も増え、それに対する存在として萌えエロという言葉を使う必要性が出てきたと。)
もっとも、当時は必ずしも主流になったとは言えず、単発の作品が時々でてくるって程度だったのでしょう。
とはいえ、ゼロ年代後半には増え始めてきましたから、本作から始まったとは言えず、少しずつ拡大してきた路線に上手くはまったというところでしょうか。

これだけだと特に意義は見いだせないようにも思いますが、本作が従前の作品と異なっていたのは、ワイド画面を十分に活かしたことであり、エロゲにおけるCGの構図に変革をもたらしたと考えることもできます。
ただし、仮にカミカゼの構図が優れていることを認めるにしても、やっぱり若干の限定解釈はなされるべきなのかもしれません。
というのも、エロゲのCGはwindoowsになってからは、640X480から800X600というように解像度は年によって上がりつつも、アスペクト比はずっと4:3でした。
TVのブラウン管も昔はずっと4:3でしたよね。
ところで、PC98までのPCゲーの場合、解像度は640X400なのです。
解像度の数値だけを見ると、ワイド画面っぽくなっているんですね。
もっとも、今のディスプレイと異なり、昔のディスプレイは丸くなってましたから。
640X400が、4:3のディスプレイに表示されていたのです。
そのため、解像度の数値をもって98時代のCGがワイドとは言えません。
ただ、PC98時代はCGとテキスト欄を分離した作品も多数ありましたので、そういう作品はワイド画面のような横長の構図で表示されていたんですね。
まぁ、中には4:3で描かれたものの下をぶった切っただけの、ワイドを意識していない構図の作品もありましたが、逆にきちんと意識した作品もありましたし。
今だってワイド画面の作品は増えたものの、必ずしもきちんと意識したとは思えない作品だってありますから。
だからその辺は作品間の個体差がどうしても出てしまうのですが、何れにしろワイド画面を意識したCGが最近になって出てきたとは言えないのです。

じゃあ、カミカゼには何の意味もなかったのかというと、必ずしもそうでもないわけでして。
4:3の画面上部の三分の二を利用したワイド画面のCGだと、どうしても画像が小さくなってしまいます。
PCのディスプレイも4:3の14インチくらいが主流だったりしましたから、実際に見るサイズも小さいですよね。
同じ画像を見るにしても大画面で見ると感じられるものはまた違うわけで、ワイド画面全体を活かしたエロCGってのは、それだけで迫力が異なってくるのです。

したがって、萌えエロゲーとして~とか、ワイド画面を活かした~とかって、広く捉えると本作より前にいろいろあるよねとなってしまうのですが、萌えエロゲーで大画面でワイドを活かしたとか狭く限定をするなら、本作はやっぱり新しいとも言えるのでしょう。
そんな限定に何の意味があるのかとも思えますが、本作の方向というのはその後の主流路線と重なるわけですから、カミカゼ前とカミカゼ後という一つの区切りをすることも、決して不可能ではないのかもしれません。

<評価>

何をごちゃごちゃと書いているんだと思われそうですが、エロゲー初心者ならば何も考えず特攻してもまず楽しめると思います。
もしそういう人がいましたら、迷わず買って楽しんでください。

他方で、おっさんプレイヤーにはどうなんだろうって場合に、こんなこと考えながらプレイしていましたと、一つの例として捉えてもらえればなと思います。
何でそんな意味のなさそうなことを考えてるんだと思われるかもしれませんが、例えばノベルゲーの中で効果音を意識し活かした初のノベルとして、「サウンドノベル」があるわけでして。
ノベルゲー自体はそれ以前にもあったのだから、ノベルであることに深い意義があるのではなく、実は前半の「サウンド」の部分にこそ深い意義があったわけです。
古いゲームサイトなんかでは、ユーザーもその辺をきちんと理解していて、「効果音を意識した初のノベル」って感じの表現になっています。
気になった方は、今度注目して読んでみてください。
更新も途絶えたような古くからのゲームサイトで、しっかりした記事を書いている所などは、きちんと表現を使い分けていますから。
しかし後の世代になると、勝手に切り取って曲解してしまい、つまり「初のノベル」って部分だけを切り取って捉えてしまっているんですよね。
今はカミカゼが出てからそれ程経っていないので、変な誤解をする人はいないかもしれません。
でも、きちんと把握しないと、数年後には変な本を買って、カミカゼは初の萌えエロゲーだとか、初のワイド画面ゲーだとか、そんな勘違いをする人が「絶対に」出てきます。
だからまぁ、中にはこういうことを書く人がいても良いのではないかなと。

いろいろと書いてきましたが、これはこれで一つの進化の方向性なのでしょう。
ただ、その方向性って変な方に向かってないかな?
その是非はともかくとして、エロゲもどんどんガラパゴス化してないかなって、若いオタクがエロゲに興味を示さないという話とあわせて、そんなことをふと疑問に思った作品でもありました。

まぁ、いろいろ思うところはあるものの、普通には楽しめたのでしょう。
ただシナリオ等に特に思い入れも生まれず、グラフィックも、立ち絵の豊富さを一応評価するにしても、他方で一枚絵が多くないことなども考慮しますと、トータルではあまりプラスにもならないでしょう。
そのため、総合では佳作としておきます。

ランク:C(佳作)


カミカゼ☆エクスプローラー!
DVDソフトカミカゼ☆エクスプローラー

Last Updated on 2024-12-18 by katan

コメント

タイトルとURLをコピーしました