グリザイアの果実

2011

『グリザイアの果実』は2011年にWIN用として、FrontWingから発売されました。

3部作の1本目となる作品であり、現在は続編も発売されていますね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
選択肢はプレイ時間に比してかなり少なめです。
数時間やって、それでようやく1つって感じですから。
個人的には下手に分岐の複雑な作品よりは好ましいのですが、気になる人は注意が必要でしょう。

あらすじ・・・
──その学園は、少女達の果樹園だった。
外敵から隔離された学園にやってきたのは、生きる目的をなくした一人の少年。
守るべき物を見失い、後悔と贖罪のみに費やされる人生の中で、その少年に残されたのは首に繋がれた太い鎖と、野良犬にも劣る安い命。
そして少年は、その学園で少女達と出会い、新たな希望を見つけ出す。
──その少女は、生まれてきたことが既に間違いだった
逆らった罪──
──生きながらの死
誰も守ってなんかくれない──
──そして生き残った罰。
そこは、少女達の果樹園。
彼女達は、後悔の樹に実った懺悔の果実。そんな少女達に、俺に一体なにが出来る…?
それは、一人の少年が夢見た永遠の希望──

<感想>

内容的には、近年では珍しく何でもありって感じですね。
共通ルートは学園ものになりますが、全校生徒6名で、主人公以外は全部女性です。
私は女性同士の掛け合いが好きなので、キャラたちの掛け合い自体は結構楽しかったのですが、ハーレムに近い設定は食傷気味に感じる人もいるかもしれません。

個別ルートは一転してシリアスになっていきます。
熱いバトル路線に、萌えゲーのテンプレっぽいのに、狂気を扱った内容と、いかにも好かれそうな内容が程よく詰まっています。
キャラもクーデレやらメイドやら阿呆の子などと、人気のありそうな属性は結構備えてきています。
最近は偏ったゲームも多いだけに、1本にいろいろ詰め込んできたのは、案外久しぶりなのかもしれません。

こういう多岐に渡る構成は本来好みとするところなのですが、個別ルートに既視感が強いというか、別のゲームで見かけたような話ばかりなわけでして。
個々のストーリーは決して悪くはないのですが、いたって普通なんですね。
毒にもならないけど薬にもならないってのが、個人的な印象でした。

それでもまだマキナルートと天音ルートは良かったのですが、他は若干見劣りします。
複数ライターの弊害からか、ストーリー間の差もありますし、主人公の性格も若干異なってきます。
統一感という観点からは、完成度は決して優れているとは思えません。

ちなみに、グロやらカニバリズムやらもありますが、その手が好きな人には全然物足りません。
いろんな要素が詰め込まれているけれど、どれも温いのです。

本作は結局のところ、良い意味でも悪い意味でも、初心者向けの作品なんだと思います。
何が好みかも分からない初心者が、とりあえず手をだしてみる。
すると好きな要素も出てくるでしょうし、中には合わない要素も出てくるかもしれません。
いずれにしろ、こういう路線や属性があるんだねって知ることができますし、初心者なら既視感もないから素直に楽しめると思うのです。
逆に、一杯やっている人ほど楽しめる要素が減ってきます。
知っている人ほど楽しめないわけで、初心者向けとしては認めるものの、個人的には点がつけにくい作品でした。

それでも、序盤の掛け合いが楽しいと感じられている勢いで、そのまま最後まで突っ走ってくれたのなら、また違った印象も抱けたのかもしれません。
本作を語る上で外せないことの1つに、ボリュームの存在があります。
10時間を越えると言われるほど、共通ルートは長いです。
最初は楽しかったのですが、これでは次第に飽きてしまいます。
メインキャラが主人公の他は皆女性ということもあり、展開の幅も限られてきますしね。
普通の学園で魅力的な男性キャラが何人かいれば、このボリュームでも耐えられたでしょう。
しかしこのメンバーだけでやるにはちょっと多すぎで、面白いネタを厳選して短くしてくれた方がずっと良かったと思います。

共通ルートも長いですが、個別ルートもそれなりに長いです。
つまり数値上のボリュームはかなりある作品なのです。
これが1本の作品を終えた満足度につながれば良かったのですが、実は完全には終わったとは言えなかったりします。
万能な主人公の過去やその周辺はもっと補足されるべきで、そうでないと御都合主義っぽく感じられてしまいます。
また、要所要所でキーとなってきそうな主人公の姉の一姫。
彼女のルートがあって全てが説明されて、それでようやく1本の作品としてのまとまりがでてくると思うのですが、本作にはそれがありません。
誰が見てもあるべきなわけで、ファンディスクか続編かでやるつもりなのかもしれませんが、それでは印象も良くないですし1本の作品としても評価できません。
無駄にボリュームだけ多い未完成の作品と言われても仕方ないでしょう。
共通ルートを半分に削ってその分を一姫ルートに分けていたら、作品の完成度は飛躍的に上がっていたでしょうに。
10周年記念作品なのだったら、商売っ気抜きに完成させて欲しかったです。

また、グラフィック面は枚数は平均以上あるでしょうし、カットインとかもあって、数値上は問題ないと思います。
しかし、プレイ時間はそれ以上に多いわけで、1時間における見た目での満足度はあまり高くないように思います。
それと、原画も複数いるのですが、違いがハッキリしているわけでして。
同じ人でも立ち絵と一枚絵に違いがありますし、個々の絵を見ればわりと好みなのですが、全体では統一感がなく完成度は低いように思いました。

<評価>

総合的にみますと、ボリュームは多いけど完成度は低いの一言に尽きるのかなと。
グラフィックやテキストの統一感のなさに全体の構成の過不足など、改良の余地が至るところにあるように思います。
まぁ、私は普段あまり完成度を重視しないので、それ以上の個性があればそれで全く問題はなかったりします。
完成度云々で話を進めざるを得ないほど個性が薄いことが、実は一番の問題なのかもしれませんね。

もっとも、無駄に長い部分を削ってギュッと密度を濃くしつつ、本来あるはずのものをきちんと加えていれば、基本的に好みの路線ということもあり、或いは名作クラスに感じられたかもしれません。
可能性は秘めていただけに、勿体無く思いました。

そういうわけで、初心者向けとしての網羅性は評価するも、個性に乏しく完成度も低いということから、佳作というのもありえたかもしれません。

ただ、個人的に蒔菜がかなりツボだったわけでして。
ストーリーとしても蒔菜ルートは作品内で1・2を争うくらい良かったし、これだけで元は取れちゃったように思います。
そういうわけで、キャラ分のポイントで良作としておきたいと思います。

まぁ、私の感想はそんなところですが、蒔菜に対する萌え分という主観的な好みが非常に強いわけです。
そのため、キャラに思い入れのないベテランユーザーは、あまり得られるものはないかもしれません。
反面、最近はこういういろいろ混ざった路線は珍しいですから、初心者には強くおすすめできると思います。
何の属性でも濃いものほど評価されがちですが、初心者にいきなり濃いものを勧めるのは得策とは言えません。
そうなると本作くらいの適度な刺激と温さがちょうど良いわけで、自分はこれが好きなんだと決め付けて殻を作る前に、本作のような作品で視野を広げてみることは良いことだと思います。
NTRのような、強く好き嫌いの分かれる要素はないですから、初心者が十分満足できる内容を含みつつ、そこから次のエロゲに進むためのきっかけを与えてくれるという意味では、本当に本作は良い作品だと思いますね。

ランク:B-(良作)


ソフトグリザイアの果実 ソフマップLIMITED EDITION
DL版
グリザイアの果実 DMM

Last Updated on 2024-12-12 by katan

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