フェアリーテイル・レクイエム

2015

『フェアリーテイル・レクイエム』は2015年にWIN用として、ライアーソフトから発売されました。

ライアーでは久しぶりの、童話をモチーフにした作品でしたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・舞台は、
「お伽話症候群(フェアリーテイル・シンドローム)」の治療に特化した隔離病棟。通称「楽園」。「フェアリーテイル・シンドローム」とは、自らを童話の登場人物だと思い込む人格障害の一種であり、入院患者たちは一様に「聖書」である童話絵本を抱え、その教えに従って生活している。
アリスは見えない兎を追いかけ、ラプンツェルは長い髪を窓から垂らし、グレーテルは襤褸を着て兄を探す。
オデットは夜にのみ水辺に降り立ち、ゲルダはカイを探しにいくために脱走を試みる。
それは、童話から抜け出たというよりも、自らを役割の中に押し込めるような、どこか窮屈で痛々しい光景だった。
主人公はそんな童話少女たちの楽園に、不意に紛れ込んでしまった記憶喪失の少年。
何故この場所にいるのか、自分はどんな人物で何を成すべきだったのか、大事なことほどわからない。
かりそめの役割を得ている少女たちがうらやましく思えるほどに、寄る辺ない。そんな折、彼の部屋で発見したスケッチブックには、乱れた筆跡でこんなことが書かれていた。
──少女たちの中にひとり、つみびとがいる。

<感想>

特定の何かの作品と比べるのは普段は避けるようにしているのですが、本作に関しては誰しも連想してしまうでしょうから、ある程度は仕方ないでしょうか。
ライアーソフトの作品で童話を題材に扱っており、しかも原画が大石竜子さんとなると、どうしても『Forest』(2004)が連想されると思います。

もっとも、『Forest』が知識を事前に有していないと楽しみきれないのに対し、本作は作品内できちんと必要な情報がフォローされていますので、知らない童話があっても楽しみきれる内容になっています。
また、『Forest』が曖昧さを残した作りだったのに対し、本作はきちんと伏線を回収し説明しているわけでして。
つまり前者が雰囲気ゲーだとすれば、後者はシナリオゲーであり、扱う題材は似ているものの、作品としての方向性は全然異なるといえ、内容的には本来は比較対象にすらならないはずの作品と言えるのでしょう。
根本的な作品の方向性が異なるのですから、一概にどちらが優れているというものでもありません。
とりあえず『Forest』と同じ路線を求めると本作は物足りないでしょうが、逆に『Forest』がつまらなくても本作を楽しめる可能性はあると言えます。

ただ、広い意味での「知らない方が楽しめた」という部分、即ち弱点に関しては、両者は共通しているのかもしれません。
というのも、『Forest』の場合は童話等の知識は要求されるものの、あれを楽しめるのはADVの知識に疎かった人だと思っています。
主に演出方法で好評を得たようですが、一般PCゲーでは既に用いられており、エロゲしかやらない人にはうけたけれど、ADV全般を好んでやっていると大して驚かないというものでした。
だからエロゲ以外のADVを知らない方が、楽しめた作品と言えたのです。

他方で本作なのですが、グラフィックにしても、童話を題材に扱う点にしても、現在の男性向けエロゲでは非常に珍しいタイプです。
もし私が男性向けエロゲしかプレイしていないタイプであれば、その珍しさを個性として評価し本作を好意的に捉えていたのでしょう。

好意的に捉える理由として本作の良い点を書いてしまいますと、上記の点の他にも、終盤で息切れする作品が多い中にあって、きちんと伏線を回収しつつ纏め上げた点が挙げられます。
またゼロ年代以降はシナリオゲー(純愛もの)には鬼畜要素がなく、陵辱ゲーではまともなストーリーがないという傾向が顕著になりました。
しかしシナリオによってはダークな展開が無い方が不自然な場合もあり、純愛中心のシナリオゲーであっても、展開次第では鬼畜・陵辱要素があって然るべきです。
特にアダルトゲームの場合、一般ゲーよりもその頻度は高くなるのでしょう。
本作は乙女チックな純愛ゲーのように見えつつも、展開の必要性に応じて陵辱要素も盛り込んできています。
その点が今のライトユーザーにうけるかは知りませんが、少なくとも一つの作品として、しっかり作られていると言えるのでしょう。

だから基本的には、決して悪い作品ではないのですけどね。
今の男性向けエロゲとしては珍しいと思える要素、即ちグラフィックの方向性にしろ童話をモチーフにする点にしろ、全体的な雰囲気や方向性が女性向けのゲーム、特に乙女ゲームと似ていまして。
そのため乙女ゲームを普段からプレイしている人ならば、少なくとも本作から新鮮という印象は抱かないと思うのです。
だから本作の場合も、乙女ゲーを知らない方が楽しめた作品と言えるのです。

もちろん似た方向性の作品というのは、当該ジャンルを好む人には喜ばれる可能性が高いわけで、似た方向性の中においてプラスアルファとなる事情があれば、当該ジャンルの中で名作として扱われることになるのでしょう。

そこで肝心の本作の内容なのですが、童話を題材として扱い再構成・新解釈をする作品というのは、乙女ゲーなどの女性向け作品だけでなく、HOGなどの洋ゲーでも今は熱い分野でもあります。
「今の男性向けエロゲ」では珍しいというだけにすぎず、ADV全体では割とホットな分野だということです。
これまでにも何作も記事で扱っていますし、また記事で書いていない物も含めれば、個人的にはかなりプレイしています。
様々な作品が様々なアプローチをしており、なるほどな~そういう切り口で来たかと感心させられることも、しばしばあります。
もちろん作品数が増えると、それだけ比較対象が増えてしまいますから、適当な引用やアレンジでは次第に評価が厳しくなっていきます。
そして本作の場合は割とシンプルに捻りなく用いられており、そういう切り口があったのかという驚きはありませんでした。
そのため同系統の作品の中でも、どうしても一段低く見えてしまいます。

また本作はラストまでやらなければ駄目なタイプで、ラストできちんと広げた風呂敷がたたまれます。
しっかり纏めたという点は評価に値するし、それができていない多くの作品よりは優れているのでしょうが、個別ルートとか曖昧なままにしつつ最後でってタイプなので、こういうのを伏線の凄い作品と言うのには少し抵抗が残ります。

それと女性向け作品ではスキップ関係が充実した物も多いのですが、本作はシステム周りが弱く見劣りしてしまいます。
特に厄介なのはモッサリした動きですね。
ここもある意味男性向けエロゲの悪いところかもしれませんが、本作では頭の緩いヒロインばかりでして。
そのためかストーリーの進行もスローですし、そこにモッサリした動きが加わることで、余計にもプレイ中のストレスが溜まってしまうのです。

大石竜子さんのグラフィックなどは魅力的ではあるものの、乙女ゲーでは特に珍しい雰囲気とも言えませんしね。
この絵から直ちに長所とまでは言い切れないのでしょう。

<評価>

ユーザーに配慮しつつ以前より丁寧に作ったという点では好印象だし、その意味で『Forest』よりも個人的には好感の持てる作品ではありました。

ただ、企画が安直すぎたことや、ライアー自体システム周りは毎回弱いことなどから、同系統の作品よりここが上回るという部分もないわけで、相対的に沈んでしまった印象の強い作品でした。
絵にしてもストーリーに関しても特に珍しい内容でもないですし、総じてここが良いと言える部分のない印象の薄い作品でした。
きちんと纏めつつ絵に一応個性があることから、総合では佳作としておきますが、もし並の萌え絵だったら凡作扱いしていたでしょう。

他方で、相対的に沈む原因となる比較対象たる同系統の作品というのは、今の男性向けエロゲにはないわけでして。
だからもし私が男性向けエロゲしかしないタイプであれば、本作を珍しく感じ良作以上もありえただろうなとも思うわけで、つまりはそういう作品だということですね。
男性向けエロゲという枠組みでは個性的に見えるかもですが、広く見れば個性の乏しい作品でもあり、オンリーワンな作品の多いライアーらしからぬ作品とも言え、ある意味現在のライアーの厳しさを示すような作品と言えるのでしょうね。

ランク:C-(佳作)


フェアリーテイル・レクイエム
DL版
フェアリーテイル・レクイエム dl

Last Updated on 2024-09-21 by katan

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