『楽園へのアタナシア ~男の娘メイドと三人の姫君、淫靡なる快楽と倒錯の園~』は、2015年にWIN用として、男の娘ソフトから発売されました。
独特な魅力を持つ男の娘ソフトの、その中でも代表作ともなりうる作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・『バオト王国近郊、幽閉された城にて――三人の姫君と男の娘メイドの物語。
狂った楽園への運命は静かに回り始める……』
時代は中世ヨーロッパ。戦乱の世にあるバオト王国の三人の姫君と一人の青年の物語。
姫君達はとても優秀で美しかったが、思想や性癖は一般とはかけ離れた異常なものを持ち、いつも問題ばかり起こしていた。
権力を志向し、サディスティックな性癖の長女アレーティア。
愛のみを信じ、人が人を支配する国すらも否定する次女シオーネ。
この世界を悪と断じ、異常な快楽と芸術を追及する三女エンノイア。
ある日、ついに彼女達は王の逆鱗に触れ僻地の城に幽閉されてしまう。
もう二度と、死ぬまで出る事は出来ない……
幾日が過ぎたある日、占い師を名乗る美しい青年シュレが、誰も入れる筈のない城の彼女達の前に現れる。
不思議な力を持つ占い師に引き寄せられる様に、彼女達の運命は回り始める――
<ストーリー>
まずは「起」となる部分。
冒頭からインパクトがありましたね~
長女のアレーティアはドSなキャラであり、王位を狙っています。
そこで、邪魔な兄をレイプしてしまいます。
妹からの仕打ちに、肉体的にも精神的にも崩壊する兄。
残念ながら(?)、兄が登場するのはこのシーンだけなのだけれど、後に出てくる男の娘のHシーンも含め、男がやられるシーンが中心になりますので、そういう意味では本作はM向けゲームと言えるのでしょう。
最初からドS全開の長女に、王女でありつつ王政を否定する次女に、学問や芸術を追求し異端の考えを持つ三女。
方向性は異なれど、いずれも国にとっては危険な存在でしかありません。
ついに王の逆鱗に触れた彼女たちは、僻地の城に幽閉されます。
ということで、僻地の城内での様子が、「承」の部分となるのでしょう。
この城にいるのは、美しい3人の姉妹と、負けず劣らず美しい男の娘のシュレだけ。
美しい男の娘と3人の美女による倒錯した愛。
幻想的な雰囲気も醸し出し、この部分は本作の中でも特に素晴らしく、メインと言えるでしょう。
本作は、全体としてはストーリー重視の作品となるのでしょうが、よくあるシナリオゲーのように終盤にHシーンが集中ということはなく、むしろ前半とも言える、この城内でのシーンにHシーンが集中しています。
占い師でもあるシュレに、不吉な未来を予言される3人。
城での生活は長くは続かず、ある日、何者かに襲われます。
そして、ここでの選択により、3人の誰かのルートへと入っていきます。
したがって、個別ルートに入ってからが「転」に相当するといえ、それまでのHシーン中心の展開から、一気にシリアスなストーリー重視の展開になっていきます。
ゲーム内にある作者のコメントにもありますが、本作のテーマは「楽園」と「無」。
3人の各ルートは、一般的なノベルゲーでいうならば、どれもがバッドエンドに相当するのでしょう。
したがって、誰も決して幸せな結末にはならないのですが、その結末へ至る過程において、3人は程度の差はあれ、それぞれの「楽園」を見つけ、やがて「無」に帰していくのです。
本作はストーリー重視の作品ですし、ライターの思い入れも十分に伝わってくる内容ですが、最近のうけやすいシナリオゲーのように、何でもかんでも全て描写するという作品ではありません。
3人の生き様は描いた、それをどう受け止めるのかは、プレイしたユーザー次第。
「結」となる部分は、少しユーザーに委ねた展開でもありますので、その点で少し好き嫌いは分れるのかなと。
個人的な印象としては、今の若いユーザーにうける手法ではないけれど、一昔前のシナリオゲーを好んでいた人には好かれやすいのかなと思います。
<感想>
その他の部分としては、グラフィックは差分込みで200枚以上とありますが、それは差分が多いからであり、一枚絵自体は価格相当分しかありません。
差分が多い方が好きな人なら問題ないですが、差分込みの量よりも一枚絵の量を基準に考える人だと、あまり多いとは感じられないでしょう。
私は後者なので、事前情報のわりには少ないなと思ってしまいました。
また、本作には音声がありません。
最後までシナリオにこだわりたかったからのようですし、本作がストーリー重視作品と割り切れるならば、それでも問題はないのかもしれません。
ただ、せっかく過激なHシーンが幾つもあるだけに、これに音声が加われば、更に魅力は増しただろうにと思うわけでして。
仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないけれど、それでもやっぱり、ちょっと惜しく感じてしまいますね。
<評価>
私自身、男の娘に特別な思い入れがないということもあり、男の娘ソフトの作品も少ししかプレイしていません。
だからハッキリと断言はできないのだけれど、少ないプレイ作品の中から感じたことは、何を作りたいのかがハッキリと伝わってくるということです。
『女装幻想城』のように、独特な世界観の作品があり、作りたい物・伝えたいことは明確に存在しつつも、それをテキストで露骨に押し付けるのではなく、ストーリーやグラフィックを通してプレイヤー自身に感得させるのが、男の娘ソフトの作品なんだと思います。
そして本作は、その男の娘ソフトの代表作にもなりうる作品であり、それくらい良くできた作品でした。
まぁ、個人的な趣味でいうならば、ラストでもう一つ何か欲しかったかなと思いますが、下手に書いても蛇足と感じる人もいるだろうし、この辺は好みの問題でもあるのでしょう。
もうひと押し欲しいとか、音声がないとか、幾つかの理由により、総合では良作としておきます。
もっとも、先が気になって一気に読んでしまったくらいで、とても面白い作品だと思いますし、主観的には名作相当の作品だと思います。
・・・それにしても、何で本作はこんなに無名なんでしょう?
内容が内容だけに、決して万人受けする作品ではないのでしょうが、もう少し知名度はあって然るべき作品だと思うし、次の作品にも期待したくなる作品でした。
ランク:B(良作)
Last Updated on 2024-10-18 by katan
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