大帝国

2011

『大帝国』は2011年にWIN用として、アリスソフトから発売されました。

『大悪司』『大番長』に続く大シリーズの第3弾です。

<感想>

シリーズの3作目になりますが、大まかな方向性が似ているだけで、各作品につながりはありません。
このシリーズは、基本的に戦略SLG+ADVと表現されるのでしょう。
とは言うものの、大雑把な分類はともかく、細かい点では各作品とも傾向が異なるわけでして。
その辺りが今回は特に強かったのかなと。
その結果、人を選ぶ傾向が強い作品になったのかもしれませんね。

さて、大シリーズの魅力は何かと考えた場合、まずは怒涛の如く展開される多くのイベントが挙げられるかと思います。
ここが一般物の戦略SLGと大きく異なるわけですね。
この風潮は『鬼畜王ランス』からあるわけですが、本作もまたかかる風潮を受け継いでいます。

こういう楽しみの出来る作品は他にはあまり見かけないわけで、いわばアリスならではの強みってやつなのでしょう。
『戦国ランス』から4年以上経っていることもあってか、何か久しぶりに味わった感じで個人的には思った以上に楽しめました。
今回もキャラは非常に多いのですが、それでも個性は際立っていましたし、キャラは非常に良かったと思います。

もっとも、今回は少々癖があったのかもしれません。
舞台は基本的には宇宙なのですが、キャラや設定がWW2をベースにしているわけで、つまりはWW2のパロディっぽくあるわけですね。
もちろん、アリス風のアレンジが十分に加えられていますし、下手なパロの様に元ネタがわからなければ楽しめないことはありません。
質的には過去作と大して変わりはないでしょう。
そのため、アリスのノリが駄目な人は今回も駄目かもしれませんが、あのノリが好きって人ならば基本的には楽しめるかと思います。
しかし注意すべき点もあって、今回はWW2をベースにしている関係上、WW2とか政治観とかに深いこだわりがある人には、場合によっては抵抗が生じるのもやむを得ないのでしょうね。
最近は歴史上の人物を女性化したゲームとかも増えていますが、私も昔は歴史とか政治とかいろいろこだわりがあって、そういうののパロディ風の作品はあまり好きになれませんでした。
まぁ、若かったんですね。
でも、何か年をとるにつれ、細かいことが気にならなくなりました。
元ネタを知らなくても楽しめるくらいにアレンジできていれば、それはそれで良いじゃんって思うようになったわけですね。
だから、今回も基本的に楽しめたわけです。

でもここら辺はね、個人の主観面次第でどうにでも感じ方が変わるので、評価という観点からは過去作との違いはありません。
ただ、アリスの醍醐味って、自分の行動次第でハッピーから陵辱の混ざったバッドな展開まで、様々に変化する点にもあると思うのですよ。
今回は設定に縛られたのか、最初のルートからの陵辱はなくなりました。
別ルートで陵辱描写もあるのですが、ハッピーな展開と分離してしまったのです。
個人が楽しめた楽しめないの主観的な問題ではなく、客観的にこれまであった要素がなくなったわけですから、ここは魅力の一つが損なわれたと言われても仕方ないでしょうね。
本編とキングコア編のように分化するのではなく、1人の主人公で自分の選択次第で如何様にも変わるというのであれば、本当は良かったんですけどね。

魅力が損なわれたという観点からは、もう一つあります。
従来の大シリーズでは、ユニットがちびキャラとして動き回っていました。
最近は他所のゲームでは中々楽しめない要素にもなってきていますので、これがアリス作品の1つの魅力にもなっていたわけですね。
しかし、本作では戦艦で戦うという設定のために、このちびキャラによる動きを楽しめなくなりました。
この点もまた従来からの魅力が損なわれてしまった部分で、ちょっと寂しく感じてしまいましたね。

ユニット以外のグラフィックの部分、つまりは1枚絵とかはレベルも高く質は良かったのでしょう。
しかし出てくる間隔が結構ありますし(っていうか、クリアしても全然埋まらない…)、Hシーンも短いのが多いこともあって、本来の質ほどの良さは感じられにくいのかもしれません。

というわけで、ここまでのところでは、基本的には楽しかったけど、従来よりも上回る部分もなく、評価は過去作ほどには至らないってところでしょうか。
たぶん多くの人もここまでなら過去作と同等か、或いはちょっと下回る程度に感じるのではないでしょうか。

評価が大きく分かれるとすれば、やはりゲーム部分なのでしょうね。
評価はここをどう捉えるかで、かなり変わるように思います。
まず、基本的に難易度が結構高くなっています。
アダルトゲームユーザーは基本的にヌルゲーマーが多いですからね。
ゲーム性云々に本気でこだわるような人は、この時期はアリスでもエウでもなくNTWでもやっているでしょうよ。
私も昔と違って今はヘタレていますので、ちょっときつかったです。
プレイ層の多くを考えると、もう少し易しくても良かったように思います。
初心者お断りな作りになっているので、その意味ではどうしても人を選んでしまうでしょうね。
でも、きつかったのは確かですが、私が単にヘタレなだけであって、これは評価的には決してマイナスにはならないでしょう。
別に理不尽な難しさではないですし、生粋のSLGファンなら普通に楽しめるでしょうから。

戦略的な自由度は、普通ってところでしょうか。
元々大シリーズの過去作自体、戦略性は高くないですしね。
他に魅力があるから評価されたのであって、戦略的自由度は低かったと思います。
しかし本作は、同等かむしろ良くなったのではないでしょうか。
難易度とも関連する部分でもありますが、本作は移動も2マスと限られていますし、ユニットも計画的に開発造船をしていかなければ、一気に詰まってしまうおそれもあります。
これまでと異なり、より事前準備が大事ということも考えれば、少なくとも戦略面の占める比重はかなり大きくなったように思います。

この戦略面の比重を更に大きくしたのが、ランダム性のない戦闘パートになります。
つまり、戦う前の時点で勝負は決まっているってことですね。
本来の戦闘は、その前の時点でほぼ決まるものだとも思いますし、これはこれでありなんじゃないでしょうか。
戦闘次第で安易にひっくり返せてしまうというのは、逆から見れば戦略性があまり要らないということにもなりますしね。
戦略性を重視したゲーム作りとしては、ベクトル的には間違っていないと思います。
キャラの成長の意味合いが乏しい点についても、RPGではなくSLGなのですから、特に問題はないでしょう。
昔は成長要素のあるSLGは邪道だ、出揃ったコマで如何に計算するのかがSLGなんだって言う人がいましたが、そういう観点からも、本作はより純粋な戦略ゲー好き向けと言えるのでしょう。

そしてそのランダム性のない戦闘パートなのですが、通常の陣取りSLGは戦略パートと、個々の戦闘における戦術パートがあるわけです。
アリスの場合、実はこの戦術パートは昔からばっさりと簡略化されていて、RPGのコマンド戦闘みたいになっていました。
だから戦術性に期待する人には物足りなかったのでしょうが、RPGのような爽快な戦闘でテンポ良く楽しめることもあって、戦術性にこだわらない人であれば楽しめたわけですね。
つまりこれは、本来は戦略ゲームがどうのっていうのとは、論点がちょっと異なるのですよ。
RPG風のコマンド戦闘があって、それがランダム性を廃している。
そこをどう評価するかという問題なのです。

RPGでランダム性を廃したら、一般的には面白くなくなるでしょう。
でも、上手く作りこめば面白くなるのです。
それはアリス自身が、過去に『零式』で証明しています。
『零式』は詰めRPGと題されていましたが、詰め将棋のようなベクトルのゲームでした。
本作は大シリーズの延長上というよりも、むしろこの『零式』の思想を深く受け継いでいるように思います。
本質的には、大シリーズが好きな人よりも、『零式』が好きな人に向いているのでしょうね。

私は同じことを繰り返すゲームは評価に値しないと思っていますが、本作のプレイ感覚には少なくとも新鮮さはあり、その点は評価に値するのだと思います。
しかし、残念ながら詰めRPGとしての作りこみが、『零式』程には及びませんでした。
『零式』は小粒な作品でしたので、この詰めRPGの要素に、大シリーズの持つ豊富なイベントとボリュームが組み合わされば、或いは凄い作品にもなりえたように思うわけで、それだけに残念でもありましたね。

とは言うものの、これは大きなプラスになりえたものが、結果的にはならなかったというだけで、決してマイナスではありません。
一番の問題点として挙げられやすいのが索敵がないことですが、それは果たして大きな問題なのでしょうか。
いや、索敵があればプラスに評価しえたでしょうから、プラス評価を打ち消したという意味ではマイナスなのでしょう。
でも、索敵がなくても事前準備がしっかりしていれば、普通にプレイできちゃうわけでして。
負けたら即ゲームオーバーにしても、セーブ&ロードがPS時代みたいに面倒なら、どうしてもストレスを感じてしまいますけどね。
本作はすぐにできるわけですから、特に問題もないと思います。
結局のところ、索敵がないだの負けたら即ゲームオーバーだの、いろいろ不親切で叩かれそうな要素はありますが、どれも入念に事前準備のできる戦略物の上手い人であればあるほど、気にならなくなる要素ばかりなんですよ。

ストーリーでもシステムでも、私はその道に通じている人であればあるほど楽しめないものは、あまり評価に値するとは思いません。
逆に一見マイナスに思えそうな要素でも、分かる人ほど気にならないのであれば、それはマイナスにはならないと思うんですよね。
例えば私はアクション系が苦手でほとんど自力でクリアできませんが、クリアできないから駄目って低評価をすれば、お前が下手なだけだろって批判がくるでしょう。
本作は確かにきつかったですが、それは今の私がヘタレだからであり、昔の私ならあまり気にしなかったでしょう。
そして私より上手い人には、もっと支障がないようにも思います。
そういう意味では生粋のSLG好き向けでもあり、プラスにはならなくてもマイナスにもならないと思うのですよ。

<評価>

基本的には十分に楽しむことができました。
実のところそれ程大きな期待もしていなくて、前の作品と同じことをやっていたらもっと叩いていたと思います。
毛色を変えてきたことで、逆に楽しめたのでしょう。
もっとも、大きなプラスもなく逆にマイナスもないってことで、総合では良作ってところでしょうか。

大シリーズとしては過去作より評価は落ちてしまったのですが、単品としては楽しかったです。
って言うか、単純な面白さとしては、大番長並に楽しんだんですよね。
でも、いわゆるアリスゲーっぽさが薄れてより普通のSLGっぽくなって、比較対照がむしろ一般戦略SLGの方が近い状況になった上で、それらの名作と比較しても名作足りうるのかと聞かれると、ちょっとどうなのかなって思うだけで。
例えば同じ内容であっても、ちびキャラが存分に動きまわって、エロも大悪司並にあれば、私なんかは名作だよ~って言ってたでしょうね。

まぁ、初心者お断りとも取られかねない作りな上に、従来の大シリーズと同じ物を期待したファン向けでもないため、結果的には人を選んでしまうのでしょう。
また、上でSLG好き向けのような表現もしましたが、パズル性が強い作品でもありますからね。
大きな意味では戦略重視の作品ではあるものの、一般的なSLG好き向けのゲームとも若干異なるわけで、特にパズル性を重視したものが好みでない人にもあわないでしょう。
でも、アリスのノリが好きな人で、ちょっと毛色の異なるハードなSLGがやりたいのであれば、そしてパズル系のSLGやRPGも楽しめるような私みたいな人であれば、結構楽しめるのではないでしょうか。

※因みに、今は「アップデータ ver 1.02」が出ていまして、それを適用すると索敵もできるようです。
ただ、適用すると以前のデータが使えなくなるので、絶対にプレイ前に適用してください。
まぁ、私は今更言われても使えないよ~って感じなのですが、今からプレイする人は大分楽にプレイできるようになると思いますので、せひ当ててからプレイしてください。

ランク:B(良作)


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Last Updated on 2024-12-16 by katan

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