『カクテルソフト増刊号』は1991年にPC98用として、カクテルソフトから発売されました。
カクテルの5作品のCGを流用した、いうなればファンディスクみたいな作品ですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVであり、カクテルソフトのファンディスクのような作品になります。
販売はソフトベンダータケルのみであり、価格的にもミドルプライスの作品でした。
タケルは、知っている人には懐かしいでしょうが、知らない人も増えていると思うので一応補足しておきますと、主にPC98時代の頃、タケルという、ゲームを購入することのできる、ちょっと特殊な自販機があったのです。
具体的には、お金を入れるとゲームの入ったフロッピーディスクと、説明書を印刷した用紙が出てきました。
本作では『きゃんきゃんバニー』、『きゃんきゃんバニースペリオール』、『イルミナ!』、『晴れのちおおさわぎ!』、『世界でいちばん君がすき!』という、89年から90年に発売された中の5作品を扱っています。
基本的には上記5作品のファンディスクなのでしょうが、単なるファン向けに留まらず、システム的には面白いものもあり、興味深い作品でもありました。
<感想>
本作は形式的には、マルチストーリーマルチエンドのノベル系のADVとなるでしょうか。
このゲームには「日常サンプリングシステム」が搭載されていまして、これは質問に答えるだけで自動的に絵日記が作成されるというものでした。
具体的には、ナビゲーターとしても御馴染みの亜理子ちゃんが、朝は何があったの?、その後はどうしたの?って感じで、次々に4択の質問を投げかけてきます。
その質問の全てに答え終わったら、答えた内容がプレイヤーの1日の出来事として登録されます。
そしてその内容に応じて、カクテルソフトの上記の作品のグラフィックをアレンジして、絵日記という形で読むことができるわけです。
質問シーンは選択肢を選ぶだけですし、絵日記シーンは一番上の画像のような感じでコマンド等は一切なく、単純にクリックだけで進行します。
サクサクとテンポ良く進むのでストレスはたまりませんし、最初の選択次第でいろんな展開が気軽に楽しめますので、ちょっとした暇つぶしには良かったように思います。
昔のユーザーは、ハードなコマンド選択式を好む人も多かったです。
そのようなユーザーからすれば、こういうサクサク進むノベルゲーは味気なく感じたかもしれません。
でも逆に、今はコマンド選択式を嫌う人も多いし、むしろ過去のコマンド選択式の名作よりも、本作のようなノベルゲーの方がすんなりと楽しめるのかなと。
当時の視点で語るとしても、サウンドノベルなんてのも92年なわけでしょ。
ビジュアルノベルなんてのは96年ですし。
実際にはエロゲには80年代からノベルゲーはあるのだけれど、常に増加していったのではなくて、実は90年とか、本作の発売された91年頃は一時激減していたのです(そのような断絶やPC88からPC98への変化などがあるから、80年代のノベルゲーは認知度が低く埋もれやすいのでしょうね。)。
その狭間世代となる第一次衰退期に本作が発売されたわけで、選択肢を選んで次々に展開が変わっていく、それもカクテルソフトの可愛いキャラで楽しめるとなると、結構新鮮な感覚でプレイできたと思います。
<評価>
ファンディスクの形もいろいろあるでしょうが、こういうシステム的な遊び心を見せてくれるのも面白いなと思ったわけで、個人的にも、この試みは面白いなと思った作品でした。
とはいえ、如何せん小粒な作品ですので、総合ではギリギリ良作とします。
本作は、大作の合間の息抜きに楽しむものであり、これを名作と言う人は、まずいないかもしれません。
イロモノとか、ネタゲーと紙一重なところもありますし。
でも、イロモノやネタゲーがあったって良いじゃないですか。
私も一応は良作としてありますが、本作は小粒な中にも見所がある作品だったので、平凡な大作よりはずっと好きでしたね。
ランク:B-(良作)
Last Updated on 2024-08-21 by katan
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