『BITTERSWEET FOOLS』は2001年にWIN用として、minoriから発売されました。
minoriのデビュー作であり、この頃からブランドの方向性は出ていた感じですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・
芸術と歴史に彩られた街、フィレンツェ。
イタリア中部に位置するこの大都市で、3人は共同生活をしていた。
思慮深く物静かな青年パレルモ、無愛想な元警官の男エリチェ、そして面倒見がよく仕切り役でもある若い女性シエナ。
家族でも親戚でもない彼ら3人は、この街である仕事をして生計を立てていた。
その‘‘仕事’’とは、ある組織から依頼される諜報活動。
彼らは、組織のリーダーであるニコラという人物の下、危険を伴う任務に従事していた。
それぞれの名前も、イタリアの各都市から取った偽名である。
そんな3人の暮らしの中に、レーニエという4番目の同居人が加わったのは最近のことだ。
「自分の知らない、外の世界が見てみたい」そんな思いを抱き、ほんの暫くの間だけ、というつもりで、ある日故郷を飛び出した彼女。
しかし、世間知らずな女の子のこと。各地を転々と見て回るうち、すぐに精魂尽きてフィレンツェの教会で倒れてしまう。
そんなレーニエを偶然助けることになったのが、現在の同居人・パレルモであった。
これをきっかけとして、この4人での共同生活が始まったのである。
<感想>
本作の公式ジャンルには、「インタラクティブ・ノベル」と付けられています。
古くからのADVファンですと、インタラクティブムービーの派生版で、動きにこだわった作品なのかなと思ったかもしれません。
というか、実は私がそうでした。
また、その後のminori作品は、非常に演出に凝っていますので、新しい作品から遡ってきたファンも、同様に演出に凝った作品なのかなと思うかもしれません。
しかし、それは間違いのようで、ここでいうインタラクティブノベルとは、「主人公≒プレイヤー」というスタイルではなく、群像劇を見るというスタイルということになります。
80年代のADVは、主人公≒プレイヤーであり、主人公とはプレイヤーの分身のような存在でした。
しかし、次第にストーリー性が高まっていくなかで、主人公にも個性が付くようになり、主人公がプレイヤーの分身と言えない作品が増えていきました。
ノベルゲーなんかは、その傾向が強いですよね。
ADVとノベルは本来は別々のジャンルだと思いますし、ストーリー性やキャラ性を高めるにあたり、主人公≒プレイヤーの構図にこだわる必要はないでしょう。
中途半端にこだわっても、作品の質が落ちるだけです。
主人公をプレイヤーの分身とするのか、それともプレイヤーと分離するのか、その辺は最初にきちんと示すべきなのでしょうが、未だにその辺が曖昧な作品も結構多く、良い作品は逆にきちんと割り切っていることが多いです。
本作が発売されたのは2001年。
私なんかは既に、読ませる作品であるならば、主人公とプレイヤーは分離しろと思っていましたが、その発想が必ずしも当然ではない時代でした。
だからこそminoriは、インタラクティブノベルと銘打つことにより、これは見る作品なのだと、プレイヤーに注意を喚起したのでしょう。
この辺、時代背景を理解していないと、意味合いを把握しかねるかもしれません。
デビュー作からこうした姿勢を明確に打ち出すあたり、他所とは違うのだという意気込みが伝わってきますよね。
そして、上記の姿勢を打ち出すことにより、群像劇というアダルトゲームには珍しかった形態を導入できました。
フィレンツェを舞台とした群像劇は、今のエロゲ業界においても非常に珍しいものですし、そういう意味では今からプレイしても、特にストーリー重視の作品を求める場合には、楽しめるように思います。
かように、minoriの意気込みは伝わってきましたし、フィレンツェを舞台とし、魅力的なキャラから紡がれる物語は、読んでいて雰囲気が良いと感じられる作品でした。
ただ、デビュー作ということもあり、システム周りは結構弱かったように記憶しています。
また、まだやりたいことに技術が追い付いていなかったように思います。
つまり、後のminori作品と違って、演出は強くなかったのです。
画面に動きや変化はないし、ストーリーも起伏や目的意識に乏しいし、テキストも簡素な感じですので、ぶっちゃけ淡々として盛り上がりに欠けていました。
この作品に、『ef』以降の演出が加わっていれば、また違った印象になっていたのかもしれませんが、本作発売時には、どうにも地味な作品だなという印象でした。
他方、ストーリーや演出は地味な作品ではありましたが、イベントCGの、特に構図とかは良かったです。
アップの場面はアップで、引くべきところは引いた視点で、情景がきちんと描かれていました。
本作の持つ雰囲気の良さというのは、ここからくる割合が大きいように思います。
<感想>
制作陣のやりたかったことという観点からは、いろいろ粗削りで不完全な作品だったかもしれません。
とはいえ、上記の良い部分や本作の制作姿勢等も考慮し、総合では佳作とします。
上記のとおりの作品なので、今だと足りない部分もありますが、学園ものばかり飽きたという人は、今でも一見の価値があると思いますね。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2025-02-25 by katan
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