『AVキング ADULT VIDEO KING』は2006年にWIN用として、elf(エルフ)から発売されました。
御神楽少女探偵団の製作者による新作として話題になった作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルは映画制作のADV+SLGになります。
概要・・・平凡な学生「火祭清十郎」はある日転向してきた女の子「鈴原都」に一目惚れをする。
だがその都にはどこか暗い影が・・・。
数日学校を休んだ都の様子が気になり、家に行ってみると、部屋の前にはヤクザからのイヤガラセの張り紙が・・・。
実は彼女の父親の借金により、都はヤクザに売り飛ばされようとしていたのだ。
なんとか彼女を助けようと奔走する清十郎。そんな彼の前に一人の男が現れる。
怪しげな風体のその男はAV会社のバイバイロケッツの社長兼監督を名乗り、主人公にとんでもない話を持ちかけてきた。
その話とは、彼女と共にAV男優、女優としてこの業界へと飛び込み、そこでえた稼ぎによって借金を返済するというものだった。
かくして主人公とヒロインは、借金を返済する為にAV業界へと飛び込み様々な出会いと試練の中、奮闘するのだった。
<感想>
本作は、マップ上から移動先を選択し、様々なイベントをこなすADVパートと、AVを製作するSLGパートの2つから成り立ちます。
沿革というか歴史っぽい観点から入らせてもらいますが、先ほどのような説明方法ですと、PC-98時代からのユーザーはあの大傑作、『ようこそシネマハウスへ』を思い出すのではないでしょうか。
確かにマップ移動タイプのADVパート+映像製作SLGという大枠では、この2つは似ています。
でも、実際にはあまり似ていないわけでして。
シネマハウスは、実は映像製作部分はわりとあっさりしています。
あまり細かい設定は出来ないんですね。
そもそも、シネマハウスの中心はADVパートでの人々との触れ合いにあるわけで、映像製作の過程は従的なものでしかありませんでした。
どういう人材を集めてどういうものを作るかという意味での過程と、それによりどんな作品が出来たかという結果に焦点を当てていたわけで、映像製作の工程自体はテーマの本質からは外れるのです。
ゲームにはいろいろな要素がありますが、全てに同じように時間を割くことは、有効でないどころか場合によっては害にすらなります。
そのゲームの本質部分は徹底的に作りこむ必要がありますが、メインでない部分はあっさりと簡略化し、魅力部分だけをエッセンスとして出す程度の方が面白いゲームになります。
シネマハウスはその部分がしっかり区別できていたから、プレイした人に絶大な支持を得たわけです。
さて、そうは言っても、シネマハウスで簡略化された映像製作の部分をもっと楽しみたいという考えも当然あるでしょう。
そうして生まれたのが『映画監督物語』(1997)でした。
これはシネマハウスの制作陣による一般PCゲーで、映像製作面ではシネマハウスより数段細かい設定が出来ます。
じゃあ、相当面白い作品が出来上がったのかというと、決してそうではありません。
シネマハウスはADV(+SLG)というADVが主体のゲームでしたが、映画監督物語はSLG(+ADV)とSLGパートに比重の置いた作品になりました。
つまり、シネマハウスの有していた一番の魅力が、続編では失われてしまったわけですね。
もちろん、以前の魅力を捨てても、新たに力を入れた部分が面白いなら問題ないでしょう。
しかし映像製作は細かく設定できる分だけ時間がかかるようになりましたが、単純にかかる時間が増えただけで、それに見合った面白さが提供されませんでした。
そもそも映像製作に特化したSLGとしては、96年に『3Dムービーメーカー』が発売されており、より総合的な映画制作という点では、映画監督物語と同じ97年に『スティーブン・スピルバーグのディレクターズチェア 』が発売されています。
ディレクターズチェアなんかをやっていると、あまりゲームとしての面白さを追求していない感じがしますし、むしろ編集作業の教育用入門ソフトみたいな印象を受けます。
或いはオーサリングツールの延長版ですね。
しかし、それらがエンターテイメントとして面白いかは別として、映像を製作するという面に特化したのは間違いないのであり、その点を求めた人を納得させる内容は有していたように思います。
つまり、映画監督物語はADVパートでは前作より劣り、SLGパートでは特化したSLGより劣るという、中途半端なゲームとなってしまったわけです。
もちろん、中間的な立場での名作というのもあるでしょう。
映像製作に特化していない以上、細かさで劣るのは仕方ないでしょうが、例え簡略化したシステムでも、その面白さの醍醐味を伝えることは出来るはずですからね。
でも、映画監督物語ではそれが少しかけていたんですよね。
映像製作の過程を細かくすればするほど、かかる時間は増えていきます。
その時間を苦痛に感じさせないために、いかに面白さを残しつつ簡略化を図っていくのか。
その点が課題として残ってしまったわけです。
さて、前置きばかり長くなってしまい申し訳ないのですが、それを踏まえての本作になります。
本作は、AVという映像製作の内容をある程度自分で設定できるようになっています。
この方向性は、シネマハウスより映画監督物語に近いでしょう。
シネマハウスと比較するのはコンセプト的にずれているので適切ではなく、直接の比較対照としては映画監督物語の方が相応しいと思います。
(話はそれますが、資金を増やしていくという経営的側面を主にしたのが、h.m.pの『ザ・ハッスル』になるんでしょうね。)
そして映画監督物語と比べた場合、部分的には本作の方が上回っていますが、逆の場合もあり、どちらも一長一短があると思います。
ただ、いずれにも共通しているのは、映像製作特化のSLGより出来ることは格段に少ないのに、無駄に時間がかかってしまうことです。
つまり、10年近く前に提示された問題点に、何の解決の姿勢も見せないまま同じことを繰り返したことになるわけですね。
なお、ADVパートについてですが、これまた一長一短だと思います。
キャラの個性は本作の方が上ですが、映画監督物語では街を駆けずり回り、人材から揃えていく楽しみがありますからね。
本作をストーリー目的で買う人は少ないと思いますが、実際ストーリー単体でそれ程面白いものでもありません。
つまり、両者ともADVパートが弱い点も共通しているわけです。
まぁ、映画監督物語と本作でも違いは多いわけですが、有している問題点のベクトルという意味で一緒なんですよね。
この類のゲームは久しく出ていなかったので、その点では歓迎すべきなのでしょうが、奇しくもこの2006年には一般PCゲーで『ザ・ムービーズ』が出ています。
SLG部分はそっちの方がずっと良い出来なので、SLG部分を楽しみたいならそっちをプレイするかなと思ってしまいます。
<評価>
結局、昔の課題がそのままってことで、このゲームから得られるものは何もありませんでした。
そのため、個人的には佳作としておきます。
なお、私の評価はこの類の作品をいろいろ知っているからの評価であって、全く知らない人ならそれなりに楽しめると思いますので、もう少し良い印象を抱けるのではないでしょうか。
それにしても、久しぶりにゲーム性のあるADVということで、一見すると昔のエルフを髣髴させるようではあったのですが、見掛け倒しになっちゃいましたね。
昔のエルフも実はそんなに斬新なゲームばかりでもないのですが、むしろどこかが以前にやったことを、まるで別物みたいにグレードアップさせていた、その作り込みやアレンジの上手さこそが真骨頂だったのだと思います。
古いゲームの問題点をそのまま残すような真似は考えられなかったわけで、やっぱり良い時代のエルフらしさとはかけ離れて見えてしまいました。
たぶん多くの人がそれなりに楽しめるゲームだとは思いますが、個人的には残念な結果となってしまいましたね。
ランク:C(佳作)
Last Updated on 2024-04-19 by katan
コメント
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XPでしか起動しないのは論外ですね。
AVなのに男優が裸なのも論外かも。
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もう手元にないので確認できないのですが、
XPでしか起動できないんですか。
勝手な印象ですが、
90年代のゲームって結構今でも動くのだけれど、
2005年前後の作品とかの方が、
最新のOSで動かなかったりするケースが多いような。
AV男優の正装は・・・他のエロゲはどうなんですかね。
あまり意識したことがなかったもので。
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XPでしか起動できません。
vista、7、8、10では無理かと。
動かないのはエルフだけかと。
DLゲーにマルウェア仕込む会社だからね。
他のゲームだと殆どないですね。
実際だとブリーフが多いです。
トランクスだとハミ出るし。
女優メインのプレイは選べるのに、
男優メインのプレイは選べないのは不服ですね。
パンフェラ、ぶっかけとか。
複数には男優とか選べればいいのに。
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2006年だと、記憶にあるのはLamentoですかね。
対応版とかだと大丈夫なんでしょうが、
オリジナルだとWIN8とかで動かなくて。
他にも2005年頃の男性向け作品で、
動かなかった作品があったりで、
この時期の作品には不安を感じてしまいます。
> 女優メインのプレイは選べるのに、
> 男優メインのプレイは選べないのは不服ですね。
この辺はもう、男性向けに求めるのは絶望的でしょう。
不快に感じられるおそれのある要素をできるだけ廃し、
保守的に保守的にとなっている業界ですから。
出るとすれば女性向けか同人なのだろうけれど、
女性向けは勢いがなくなってるし、
同人は迷走しているして、しばらくは難しそうですね。
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男性メインとは、ぶっかけとか痴女ですね。
ある意味男性の方が主役になるジャンルですね。
当時、今のAVでも必要なプレイですし何故出来なかったのは謎ですね。
ブリーフに関していえば、そうすればモザイクがあまりかけなくて済むのにと思います。
男性、女性向けではなくてそれがないと、
AVとしてはNGってことですね。
ぶっかけってそんなに必要じゃないジャンルなのかなぁ?
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本当は専門知識を備えてから作品を作るべきなのでしょうが、
AVについて情熱と知識を持ち合わせている人、
事前に持っていなくともきちんと調べられる人が、
この業界には少ないのでしょうね。
この作品についても、製作者はエロゲ畑の人ではないし、
またすぐにエロゲから離れましたし、
エロゲ作りにこだわりがないのでしょう。