『アーク・ザ・ラッド2』は1996年にPS用として、SCEから発売されました。
リベンジしようという、何よりもまず制作陣の執念を感じた作品でした。
<総論>
もともと前年である1995年に、前作である『アーク・ザ・ラッド』が発売されました。
当時はRPGの人気が異常に高くて、RPGの弱い機種はそれだけで売れないって考えられていました。
そうなると次世代機であるPSにもRPGが必須となるわけでして。
そこでPSを牽引するべく次世代機のRPGとして発売されたのが、初代『アーク・ザ・ラッド』でした。
初代アークも、中身自体は凄く良かったと思います。
次世代機だけあってグラフィックは綺麗だし、キャラもたってたし、ちょっと変わった世界観も好きでした。
基本的に前作は、非常に良く出来ていたと思います。
しかし、実際には結構叩かれました。
理由は単純で、ストーリーが途中で終わる上に、ボリュームがなさすぎたからです。
確か、本編だけなら10時間もかからなかったはず。
オマケのやりこみ要素を含めても、15時間あれば全部終わっちゃいます。
SFCのRPGに慣れた人には、これは短く感じたでしょう。
ゲームに何を求めるかにもよりますし、私はバイキング料理よりも手の込んだ一品料理のような特徴のあるゲームを求めますので、コスパやボリュームは求めません。
だから1作目のボリュームも、あまり大きな問題ではありませんでした。
しかし、ユーザーの年齢層が低いほど、コスパやボリュームを求めがちです。
PCと違ってゲーム機のユーザー層は年齢も低めでしょうから、ボリュームが少ない作品が叩かれるのは目に見えています。
その批判の声が届いたのかどうかは知りませんが、続編である本作のボリュームは半端じゃなかったです。
とりあえず、私がクリアに要した時間は80時間ほどだったでしょうか。
それでもまだまだやり込める要素が残っていたので、100時間超えも十分ありえるでしょう。
その頃のRPGの相場を振り返りますと、SFCのRPGは30時間もあれば十分だったし、PC-Eとかだと20時間程度のも結構あったので、前作と足して2で割っても当時の平均的なRPGをはるかに凌駕します。
前作はボリューム不足って散々叩かれてましたからね、もうそんなことは絶対言わせないって執念が伝わってくるかのようでした。
また当然のことではありますが、前作から続いたストーリーは本作で完結するので、前作にあった未完で終わるなんて欠点もありません。
前作にあった多くの魅力を引き継ぎつつ、前作の致命的な欠点を払拭して発売された本作。
制作陣の執念を感じつつ、これは凄い作品だなと思ったものです。
<感想>
ゲーム的にはRPGとS・RPGの中間的な感じで、簡単に言えばタクティカルコンバットを採用したRPGになります。
ただ、普通はタクティカルコンバットを採用していても、動ける範囲は結構狭いんですよね。
でも『アーク・ザ・ラッド』の戦闘マップは結構広くて、戦闘の感覚的だけならむしろS・RPGに近いかもしれません。
普通のコマンド選択式のRPGには飽きていたこともあって、このシステムの採用は楽しめましたね。
また、この戦闘システムは1つの戦闘に時間がかかります。
場合によってはだれるおそれもあるのですが、常にキャラが音声つきでしゃべっている上に、そのバリエーションも多かったおかげで、だれずにテンポ良く遊べました。
なんかね、いまだにいろんなセリフが耳に残ってるんですよ。
かなり印象的でしたね。
他には、サブクエストや手配モンスターが豊富で、全部をこなそうとするとかなりの時間楽しむことが出来ました。
変わった特徴としては、前作からデータを引き継げることが挙げられるでしょうか。
メモリーカードが当たり前となった時代なら普通でしょうが、当時はSFCでは出来ないってことで目玉になっていましたね。
※逆に最近はメモリーカードの概念が廃れたので、また珍しくなっているかもですね。
個人的にはレベルが100を超えても成長するのにビックリでした。
PCでは他にもあったけれど、何か家庭用ゲーム機のRPGって、無意識のうちに勝手に上限100だと思い込んじゃってたものでね。
グラフィックが良かったのは前作同様ですが、本作では更にCGムービーが追加されていました。
その後間もなくしてFF7が発売されちゃって、それで影が薄くなっちゃった感が強いですけどね。
同時期のRPGとしては、他にこんなCGムービーを使ったのはなかったはず。
そう考えると、もっと評価されて良い気もしますね。
問題はストーリーでしょうか。
いや、私自身はかなり楽しんだんですけどね。
暗くて人が死にまくりなストーリーは、個人的には楽しめるけれど、一般的にはどうなのかなとも思ったり。
そして、それ以上にEDですね。
主人公とヒロインが身を挺して世界を救うEDは、結構受け付けない人もいたんじゃないかなって思うわけでして。
私も昔はハッピーエンド最高な人でしたが、その頃にプレイしてたら文句を言ってたかもしれませんしね。
ストーリー自体の出来としては良かったし、私を含め一部では根強いファンも生み出しています。
ただ、上記のような内容なので、どう考えても一般受けするとは思いません。
本作はPSを引っ張るRPGとして、より多くの人に遊んでもらうために作られたわけですよね。
そんな作品で、この内容にする必要はあったのでしょうか。
ライターが自分の信念を曲げてでも、ちょっとご都合主義っぽくした方が、世間一般ではもっと高い評価を得ていたかもしれませんね。
まぁそうなったら、私の評価は下がっていたかもしれませんけれど。
<評価>
総じて、全ての要素で高水準な、非常に優れた名作といえるでしょう。
ただ、ふと思うんですよね。
マイナーな名作ってのは、大抵は癖の強い作品だったりします。
癖の強い作品は、刺さる人には刺さるのだけれど、合わない人も出てくる可能性が高いです。
そういうのが一杯売れたら、当然合わない人も買って叩かれる率も高くなるのです。
例えば『タクティクスオウガ』だって、実際はあまり売れてないから傑作扱いされてる面があります。
100万人規模でプレイをさせたら、かなりの確率で一般人には叩かれるでしょう。
本作もSCEの命運を担って宣伝されましたが、基本的な作り自体は、個性の強いマイナーな名作路線だと思います。
個性が強いのは私の好みとは凄く合致するから個人としては高く評価しましたが、100万人規模を前提とした作品ではないよなとも思うわけです。
そういうわけで、個人的には凄く良かったのだけれど、セールス的な観点も考えると、ちょっと違和感のある作品でもありましたね。
ランク:AA(傑作)
Last Updated on 2024-11-17 by katan
コメント
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>実際はあまり売れてないから傑作扱いされてる面があります。
なるほどと思いました。
他の作品でなぜこれがネットで絶賛されてるのだろうと不思議なものが
何個かありますが、すっきりした気がします。
ありがとうございます。
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老若男女が触れられる環境で、たくさん売れると、
絶対合わないだろと事前に分かりそうな人まで買いますからね~