アルバイト ~二人の想い~

1995

『アルバイト ~二人の想い~』は1995年にPC98用として、
アンジェから発売されました。
マルチサイトのノベルゲーということで、
意欲的な作品ではありましたね。

<概要>

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじとゲームデザインが分けにくいので、一緒に説明します。
本作の主人公は男性と女性の二人です。
この二人の視点で物語が進むので、マルチサイトシステムを採用していることになります。

主人公の男女二人は、実は両想いなのですが、まだ告白ができていません。
そこで、アルバイトでお金をためてプレゼントを購入し、そのプレゼントをきっかけに告白しようと考えます。
以上のような理由から、主人公二人は、それぞれアルバイトを始めることになります。

したがって、ゲームの基本的な流れとしては、まずどちらかの主人公を選び、次にバイト先を選び、バイト先での会話はクリックですすめつつ、出てきた選択肢を選んでいくことになります。

<感想>

今のアダルトゲームで完全に定着している、ヒロインごとの個別エンド。
その構造を最初にアダルトゲームに持ち込んだのが、アンジェの『KISS』でした。
そのことからも象徴されるように、アンジェの作品は、小粒な作品が多かったものの、それでも作品ごとにゲームデザインが異なることが多く、実験的な作品が多かったのです。

本作では、マルチサイトシステムを採用しています。
マルチサイトシステム自体は既にあり、有名どころとしても1994年には、シーズウェアの『DESIRE』が発売されています。
そのため、このシステムを用いているというだけでは、必ずしも目新しいわけではないのですが、『DESIRE』はコマンド選択式ADVでしたからね。
ノベルゲーでマルチサイトとなると、この当時はまだなかったように思います。
そういう意味では、本作はノベルゲーであったことから、若干の目新しさはあったのかなと。

アンジェは様々なデザインのADVを製作していますが、その全てが成功しているわけではなく、上手くいった物もあれば、微妙な出来の物もありまして。
本作はどちらかというと、後者にあたるのでしょう。
マルチサイトではあるけれど、シーズウェアの剣乃作品には遠く及ばずといった感じでした。

具体的には、本作はマルチエンディングでもあり、マルチサイトのマルチエンディングとなると、剣乃作品にもない新しさはあります。
しかし、エンディングを見るには両主人公を見なければならず、全てのENDを見るのが面倒だったのです。
また、男主人公は、バイト先で他の女とHしても大丈夫なのに、女主人公は他の男とHすると告白できないので、今の時代だといろいろクレームがきそうな内容でもありました。

そして、もっと根本的なところの話として、これは他でも散々書いていますが、マルチサイトシステムというのは、主人公≒プレイヤーの構造があるコマンド選択式だからこそ有用なのであり、ノベルゲーでやっても意味がないのです。

<評価>

剣乃作品におけるマルチサイトやザッピングは有名ですが、決して最初に導入したから凄いってわけでもないんですよね。
マイナーな作品を漁っていると、他所のブランドも結構マルチサイト系の亜種を作っています。
それなのに、今日において知名度に雲泥の差が生まれているのは、結局のところ剣乃作品では、それらシステムを上手く活かすことができたということなのでしょう。

本作も表面上の目新しさはあると思うのですが、システムがどういう意味合いを持つのかを把握しきれておらず、アンジェの過去の代表作のようには、上手く機能させることができなかったということなのでしょうね。

ランク:D(凡作)


Last Updated on 2024-11-02 by katan

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