『蒼の彼方のフォーリズム』は2014年にWIN用として、spriteから発売されました。
演出の優れた、見ていて楽しい作品でしたね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
商品紹介・・・空を飛ぶことが、自転車に乗るぐらい簡単にできる世界。
そこで流行しているスポーツ『フライングサーカス』。
かつて、そのスポーツで将来を期待されていた主人公は、圧倒的な敗北による挫折と、ある理由からそこを離れていた。
だが、転校生である倉科明日香と出会い、空の飛び方を教えるうちに昔の熱が戻ってくる。
立場が変わっての『フライングサーカス』への出場。
明日香の手を握った主人公は、今度はどこまで高く飛べるのか。
『空を飛ぶ』ことを巡って出会ったふたりと、その仲間たちが贈る青春恋愛物語。
<感想>
基本的には王道スポ根路線の作品であり、良く言えば熱く盛り上がりつつ誰でも安心して楽しめる作品なのでしょう。
王道路線に関しては、私は否定的に語ることも多いのですが、否定的に語る場合というのは、何から何まで個性を感じられないことから、それでマンネリに感じるからなわけでして。
決して王道そのものを否定するわけではありませんし、自分だって好きな作品は幾つもあります。
だから物語自体はスポ根の王道で良いから、そこに何かしらのアクセントが欲しいわけですよ。
本作の場合は、そのアクセントとなるのがフライングサーカスという、架空のスポーツになります。
フライングサーカスについては、重箱の隅を楊枝でほじくるような、設定に細かくこだわるタイプの人ですと、あまり合わないかもしれません。
しかし個人的には、ただ単純に、フライングサーカスって面白そうだなって思えたので、それで十分なのでしょう。
何故面白そうって感じられたのか。
もちろんテキストの力もあるのでしょうが、一番はグラフィック・演出の力なのでしょうね。
空を飛び回って、画面全体を用いて表現するのを見ているだけで、熱く楽しくなってきましたから。
原画も好みということもありますが、それを抜きにしても優れたエフェクトに、ストーリーを盛り上げることに成功しているグラフィックは、十分な長所と言えるのでしょう。
問題は、主人公なのでしょうね。
何か軽いし、いまいち思考に共感できないし、何より結局復帰しないんかいということで、ぶっちゃけコイツ要らなくね?って感じです。
いっそのこと、女の子らだけで努力と根性で頑張る作品にしてくれれば、文句なしだったでしょうに。
これアニメ化するんでしょ。時代の流れ的にも、女の子らだけのスポ根ものの方が受けると思うのだけどな~
せっかくの長所も、主人公のマイナス分で相殺されてしまった感じで、ちょっと残念でした。
それと、何だろうな~
私だけかもだけど、小学生は最高だぜっな某ラノベを思い出しましたよ。
挫折しつつも指導者として教えるうちに、自分の選手としての復帰を目指す。
そのラノベの方は大人の事情で選手としての本格復帰までは描かれなかったので、そこに期待した自分はガッカリしたのですけどね。
でも、まだ動き出してはいたし、主人公の人格にも好感が持てたのだけれど、その作品と比べ、本作の主人公には好感が持てない上に、ヒロインがJSからJKになってしまったので、何か本作がその作品の劣化版のように見えてしまいました。
あとは、人によっては気になるかなという点を挙げると、エロは薄いので期待しない方が良いでしょう。
発売前にアニメ化も発表されましたが、あれは逆にイメージが悪いですよね。
エロ薄でアニメ化に向けていろいろ削ったような雰囲気の作品なので、あぁこれはアニメの有料体験版なのだなと思われかねないですし、だったら最初からアニメで良いだろと思われてしまいます。
何もアニメ化そのものが悪いのではなく、もし本作のエロが濃くて、ストーリーも激しくて、アニメでは得られないであろう魅力があるならば、事前にアニメ化と聞かされても不満も出なかったでしょう。
先にゲームをやって良かったなと思わせる何かが、この作品には欠落しているのであり、それが最大の欠点だったとも言えるかもしれません。
<評価>
見ている分には、楽しかったです。
主人公が気にならない人であれば、より楽しめるでしょう。
私も最初は良作止まりと思っていましたが、再評価して、総合では名作としておきます。
不満もいろいろあるし、特にアニメ進出が成功の証みたいになっちゃうと、エロゲってアニメの下位の存在だとなってしまいかねないです。
いつも疑問なのだけれど、アニメやラノベに進んだライターが多いことを、特定の時代が優れていることの理由に挙げる人がいるのだけれど、それってアニメやラノベがエロゲより上の最上位の舞台ってこと?
そう考える人って、エロゲはアニメ・ラノベより劣るものと思いながら、それでもプレイしているの?
だったら何であえてエロゲなんてプレイするのと思うわけで、表に進出したから~とか言い出す人を見ると、主張自体が解せません。
私はエロゲが好きだし、エロゲでしか表現できない魅力もあると思うし、だから私が高く評価するのもアニメでは表現できない物が多いですし、アニメ・ラノベに進む人が一概に優れているとは思いません。
それに、そもそもエロゲを去って今はアニメ・ラノベだけになった人って、大抵はエロゲを出していた時の売上も良くなかったわけですから、単にエロゲで通用しなかった負け犬でしょって思えちゃうのですけどね。
そう思われないよう、本作のライターたちには、できれば今後もエロゲを作って欲しいものです。
アニメ化自体は悪くないのですが、それでアニメ・ラノベへ進出した作品・ライターが凄いという風潮が生まれると、結局はエロゲ否定になるようで好ましくないのですけどね。
それでもフルプライスの商業アダルトゲームとしては、そして同年発売のいわゆるシナリオゲーと呼ばれる作品の中では、最上位クラスで楽しめた作品でした。
ランク:A-(名作)
Last Updated on 2024-10-20 by katan