『アマゾネスの秘宝』は1987年3月にPC88用として、スタジオライムから発売されました。
アダルトゲームでは珍しく、ゲーム性の練られたADVでしたね。
<概要>
ゲームジャンルはコマンド選択式ADVになります。
これは楽しかったですね~
アダルトゲームの名作は、80年代にも幾つもあります。
もっとも、名作だと判断する理由はゲームによって異なるわけでして。
ストーリーだったり、グラフィックだったり、キャラだったりするわけですね。
特に本作の出た87年は、分かりやすい年でした。
ストーリーでは『殺しのドレス』がありましたし、絵やキャラの可愛さでは『悪女伝説2』が別格でしたから。
ただ、ストーリーやグラフィックの優れた作品は毎年のように出てきますが、ADVの中でも「ゲーム」として楽しかったと思えるアダルトゲームは、80年代全体を見渡してもほとんどないように思います。
90年代には少し増えたものの、近年は読むことが中心のノベルゲーばっかりになっていますから、またサッパリですしね。
まぁ、そもそも、今はADVをゲームとして楽しむという発想が、ユーザーにもなくなっているように思いますので、需要の関係上仕方ないのかもしれませんが。
かようにADVの中で本当にゲームとして楽しめるものは少ないのですが、本作はその数少ない例外にあたると思うのです。
<ストーリー>
さて、内容に入っていきますと、本作の主人公は探検家であり、今回はアマゾネスの秘宝の謎を解き明かすために、アマゾンへの奥地へと旅立つことになります。
主人公は、アマゾネスらの本拠地に乗り込み、アマゾネスとあいまみえるわけですが、まずとにかくテンポが良かったですね。
冒険物としてのワクワク感を有しつつも、アダルトゲームとしての適度なエロさもありました。
テキストも軽くライトな感じで進みますし、プレイしていると、次どうなるんだろうって楽しくなってきます。
シリアスっぽさを装いながらもH要素やコメディ要素があったりで、誤解を覚悟で言えば『うる星やつら』っぽい印象も抱きました。
ライトな感覚の作品は、重厚でシリアスな作品より軽く見られる傾向があります。
当時のADVの有名どころにしても、本格推理ゲーとかが人気でしたからね。
本作の様な作品は、こういうジャンルというだけで低く見られることもあったでしょう。
しかし逆に、他の作品にはない独自性を有しているとも言えますので、私はむしろ評価すべきだと思います。
<ゲームデザイン・システム>
そしてこの楽しさを支えたのが、やっぱりゲーム要素なのでしょう。
本作は、基本的にはコマンド選択式のADVになります。
もっとも、最初にアイテムを装備し、そのアイテムを使ったり、途中でアイテムを拾ってまた使ったりを繰り返すことで進行します。
アイテムは全部で10個までしか持てませんので、それ以上は何かを捨てなければなりません。
こういうアイテムとインベントリーを駆使するスタイルのゲームは、日本のADVではそれほど多くありませんし、ましてやアダルトゲームでは今でも非常に珍しいですね。
ちなみに、選択できるコマンドは画面に表示されているものだけではなく、切り替えにより他にも登場しますので、その数は結構多いです。
PC88の、特に80年代半ばまでのADVには、コマンド数の多いコマンド選択式も少なからず存在しました。
そういう意味では本作も、この時期らしい構造の作品と言えるのでしょう。
他方、コンソールやPC98以降のコマンド選択式しか知らない人だと、その多さに驚くかもしれませんね。
そして、コンソールやPC98時代のコマンド選択式ADVの場合、全てのコマンドを何度も試すような、いわゆる総当たりで進む作品も結構ありました。
それが面倒で、コマンド選択式に苦手意識を持つ人も結構いるようですしね。
しかし、同じコマンド選択式であっても、多くのコンソールやPC98時代のコマンド選択式ADVとは異なり、本作では、そのような面倒なことをする必要はありません。
というのも、必要な行動をとれば、つまり正解のコマンドを選べればサクサク次に進めますので、同じコマンドを繰り返す総当りのような、無駄な行為を行う必要はないのです。
また、何が正解か分からないときは、「神の声」でヒントがもらえます。
この神様はお茶目な性格でサボり癖があるので、毎回ヒントがもらえるとは限りません。
でも、そんな場合は少し考えれば何が正解かが分かる場面がほとんどです。
昔のADVは総当りばっかりなどという頓珍漢なことを言い出す人は、こういう良質なゲームをやってこなかったのでしょうね。
上記のとおり、本作はコマンド数が非常に多いです。
そのため、このゲームを総当りでクリアするのは、かなり骨が折れますし、クリアのための手法としては迂遠です。
だからそんなことをするのは、はっきり言って間抜けです。
次に何をすれば良いかは、ちょっと考えれば良いわけですし、効率を考えれば結果的にはその方が早道になって良いですし、同じコマンドを何度も繰り返す必要もないのですからね。
ADVの本質って何かと聞いた場合、ノベルゲー世代だとまた違った解答になりそうですが、そもそものADVって、試行錯誤しながら考えて物語を楽しむジャンルだったはずです。
その「考えて」という部分が、コマンド選択式やノベルゲーでは、どんどん失われていく傾向にあります。
コマンド選択式でありつつも、きちんと「考えて」プレイすることを想定している本作は、ADVの本質に沿った作品なのでしょう。
加えて本作には迷路の探索などの要素もありますし、ストーリー自体はライト感覚のゲームですが、ADVとして実に上手く作ってあるなと思いました。
また、仮に同じコマンドを選択しても結構テキストが変わりますし、そういう辺りも良く出来ており、完成度の高い作品と言えるのでしょう。
<感想・評価>
本作は、もっと評価されても良いと思います。
これは時代的なものもあるかもしれません。
私がプレイしたのも大分後のことですが、リアルタイムでやっていたら、果たして魅力に気づけたものやら・・・
というのも、この当時は硬派なゲームが凄いって風潮もありましたし、何度もコマンドの繰り返しを要することさえ、それこそがADVなんだとも思っていたわけでして。
例えば、同じ年に発売された『マンハッタンレクイエム』なんかも名作として名高いですし、多くの人がコマンドの繰り返し行為に疑問を持っていなかったわけです。
まぁ、それを楽しめる人が主なユーザーだったわけで、むしろアッサリ進める方が、温くて駄目って感じる人もいたでしょうね。
そう考えると、ユーザーの価値観が現在とは逆になっているわけです。
私自身も、今でこそゲーム性を多角的に考えるようにしていますが、昔は歯応えのある物こそ最高と考える傾向がありましたので、だから当時本作をやっても、本作の持つ良さが分からないおそれもあったのです。
最初は一応名作って感じだったのですが、今になってこれは良くできていたよなと思うわけで、傑作として良いのではないでしょうか。
ランク:AA-(名作)
Last Updated on 2024-05-28 by katan
コメント
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この頃はエロゲにゲーム性をつけるというより、ゲーム性の高いゲームにエロをつけるというニュアンスの方が正しいんですかね?
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もともとゲームがあって、そのゲームにエロ要素を加えることで、エロゲとなったといえるのでしょう。
今のエロゲのように、エロゲにゲーム性をつけるという発想は、2000年以降の総ノベルゲー時代(総紙芝居時代)に入ってからの発想といえます。